78話 魂の打ち方
ふぃ
業務を終えたアンストガレンは工房奥の居住地で休んでいた
アンスが工房に戻り3日が経過していた
「はい師匠、今夜は肉三昧です」
テーブルに並べられる豪勢な肉料理
ガシ
アンスがフォークで肉を掴む
「では師匠口を開けてください!」
あっ
フォークはガレンの口へ運ばれる
もぐもぐ
「うん…実にうまい」
「よかったです!」
アンスは満面の笑み
「では私もいただこう!」
………
「なんでテメェもいるんだぁぁ!」
「ぶぎゃ!」
アンスはブライトの顔を殴る
ガタァ
床に倒れるブライト
「なっ……何を言っているんだ」
「ブライトじゃないぞアンス!」
「何がブライトだ」
「忘れてねぇよな?お前敵だったんだぞ敵!」
オドオドするブライト
「だっ……だがなアンス」
「ガレン殿にもいていいと許可をいただいたのだぞブライトは」
え……
ガレンを見るアンス
こくり
頷くガレン
「な……」
「なぜこのようなやつを工房に!」
アンスは少し怒り気味に詰め寄る
ガレン
「ブライト君が職を失ったと聞いてな」
「私の護衛兼お世話掛を依頼したら承諾してくれたというわけだ」
「明日からという話だったが……せっかくだ今夜飯でもどうかと誘った」
アンス
「師匠の世話は僕がやりますよ!」
「それに護衛だって僕が……」
「アンス!」
ビク!
「はい……なんですか師匠」
「あと2時間後、帝城西にある森からエリック達はアレスティアに戻るらしい」
はは
笑うアンス
「なんで今あいつらのこと言うんですか」
「関係ないでしょ……」
「アンス……お前帰ってきてから鍛冶のこと以外全部エリック達のこと喋るじゃないか」
「昔のお前はいつも打ち方やら鋳造の事ばかり…熱中するとその話題で会話が埋まる」
「……で今はどうだ?、エリックはどうだリリアちゃんがどうだヒヨルちゃんはどうだと……」
「もうお前の熱は上がり切って自分でも抑えられないんだろ?」
グッ
両手を握るアンス
「ダメです……それ以上は……」
「俺は別に……あいつらが無事帰れたらそれで…ただそれだけで十分なんです」
………
笑うアンス
「あいつらさえ帰ってくれればあとは師匠の世話と鍛冶屋に集中できるってことで」
「別に……熱もなんもないで……」
ふざけんじゃねぇ!
!!
突然の怒号にたじろぐアンス
ガシャ!
立ち上がるガレン
「いいかアンス、どれだけ貶されようと何を失おうがどれだけ辛かろうが」
「自分の熱に嘘はつくな」
「人生なんて短かい明日命があるかもわからない」
「突然全てが奪われるかも知れない、突然大事なものが消えるかも知れない」
「突然家族が消えちまうかもしれない」
ぽん
アンスの肩に腕を置く
「そんな残酷な世界で一つでも熱を持てる幸せをお前には大事にして欲しい」
「私が昔、家業を全て放り出し勇者と共に旅に出かけたあの日みたいに」
「もう十分教え子の成長は見れた、ここからはお前のアンス・ライト自身の姿を見せてくれ」
ふっ
優しく微笑むガレン
「長いこと……縛り付けて悪かったなアンス」
「もうお前は1人前だ」
ガシ!
抱きつくアンス
「師匠……俺は……俺は!」
「あの日拾ってくれた恩を返したい!」
泣きじゃくるアンス
「まだ俺はあんたになんも返せてないんだ」
「人の暖かさも、家族の大切さも全て……あなたが教えてくれたんだ!」
「その恩を返す……でも返し方が…俺には……俺の人生をかけても返せる気がしないんだ!」
「だから……せめて師匠が生きている今なら師匠の願いを全て叶える手伝いを……それが俺の1番の熱なんだ」
「これは誰が何を言おうとかわらねぇ……かえたくねぇんですよ師匠」
ポタ
「本当にお前は……その強情さは誰に似たんだ全く」
………
「私は………嬉しいよアンス」
声は震えている
「私の人生で1番打ちごたえがあったのは」
「お前の魂だよ」
「今までのどんな技術も技法も通用しない日々が鍛錬」
「赤ちゃんのお前を寝かすのにどんだけの鍛冶職人が音を上げたか」
ふふ
泣きながら笑うアンス
「本当に出来が良すぎて誰にも渡したくねぇくらいに立派に成長した」
「どんなに苦しい時でも、どんだけ辛い時でも息子の笑顔さえ見れれば十分だった」
「それがお前からもらった恩返し……いや親孝行ってやつかな」
「行ってこい息子よ」
「世界は広い、まだ見ぬ旅路は鍛冶に勝るとも劣らない修羅の連続」
「でもその鍛え上げられた魂ならどんな逆境にも冷めることなく進めるはずだ」
「私が言うんだ、お前の師匠が言うんだから間違いないさ」
アンスは一礼する
「今までありがとうございました」
……………
バッ
頭をあげる
「行ってきます!父さん!」
ガチャ
勢いよく工房の扉は開かれる
「あぁ、行ってらっしゃい」
涙を浮かべるガレン
「父さん……か」
「では食べようかブライト君」
床に寝ているブライト
「うぅ……最高だぜあんたらぁぁぁごぽごぽごぽごぽごぽごぽ」
涙で溺れているブライト
ははは
苦笑い
「君……感極まるとブライト忘れるんだね」




