77話 回帰
「そうか……」
ヴィットウェイは返事をする
「ここで俺たちを殺すか?勇者秩序の一角として」
ふっ
「まさか…恩人を殺しては騎士の名が廃る」
「それに我は勇者秩序に志願したわけではない」
「アトロスに仇をなす罪人を断罪する剣…それ以外の肩書きは願い下げだ」
「そうか…」
「じゃあなんでわざわざそれを聞くんだよ」
「いや別に……ただ」
「こんな動乱の国まで来て調べる意味を知りたいだけだ」
「アトロス帝国最高位騎士団の団長ではなく……この世界に生きる人間としてな」
「君も先ほどの議長みたくこの世界はまやかしだと思うかね?」
「あいつほど偏った思想じゃねぇけど」
………
「ただ俺は父ちゃんの死に様を知りたいってもがいてる奴を見捨てて生まれる平和を…」
「認めたくねぇだけだ」
「なるほど……」
考えるヴィットウェイ
「別に難しいことじゃねぇだろ」
「誰でも育ててくれた人の死に様くらい育てられた者として知るのは」
「至極当然で当たり前な事だと俺は思いたいんだよ」
「エリック……君にも思い当たることがあるのかな」
ふぅ
深く息を吐く
「過去の話だ…………」
コンコンコン
扉が鳴る
がた
ヴィットウェイは席を立つ
「さぁ行こう…」
ギィ
扉が開く
シャンザ
「議長が起きたよ」
「準備はいいかな?2人さん」
「「あぁ」」
ギィィィ
扉が開く
エリックは前へ出る
「やぁ議長、さっきは悪かったね」
「ついあんたの調子の乗り方が肌に合わなくてね」
ぐっ
顔を寄せるエリック
「まぁ…嘘ついたり無言だったら」
「指くらいはいいだろ?」
「ヒィ!」
怯えるティゲルス
後ろを振り返るエリック
「3人は出ていってくれないか?」
「一対一の方が情報が聞き出しやすい」
3人は頷き外へ出る
部屋の外
ヴィットウェイ
「シャンザさんはエリックについてどのくらいしっているのですか?」
う〜ん
考えるシャンザ
「すごい情報屋……かな」
「私達みたいな種類よりもっと深い裏側で有名くらいかな」
「でも最近では色んな依頼を受けていてアレスティアにも力を貸してるって聞いたぜ」
「なんでも王族にも頼られてるって話だ」
「なるほど…」
「ガレンさんはどうですか?」
‥‥‥
「そうだな…あまりよくわからないってのが本音だが」
「エリックという名前は昔……魔王征伐の時代に聞いたことがある」
「ガレンさんも知っているとなると結構有名なのか?」
「いや」
「私が知っているエリックとは同名の他人だと思っている」
「それはなぜですか?」
ふむ
「私が知っているエリックとは」
「勇者にも匹敵する力を持っていると言われていた」
「そうですか……」
「それに噂だが」
「やつが所属していた組織は壊滅したらしい」
「やつ自身も生きているかどうか……」
ガチャ
扉は開く
「お待たせしたかな?」
「もう…聞き出せたのか?」
エリックは紙を取り出す
「聞き出せたのはこの国への侵略を提案した者の名前、それと討究機関が危惧している世界の終末について」
「それと帝国内にいる内通者一覧」
「ほい」
紙をヴィットウェイに渡す
「あぁ……ありがとう」
「……で情報の信憑性はあるのか」
「信憑性は高いと俺は思うがそれは自分達で調べたほうがいい」
「この世で1番信頼できる情報源は己だけだからな」
エリックは部屋を後にする
3人は議長がいる部屋に再び入る
ガタガタガタガタガタガタ
震えている議長
「はははは早くなわを解いてくれぇ!」
シャンザ
「質問に答えてくれた………」
「ななななんでも答える!早く……早く!!」
言葉を遮る議長
目をヴィットウェイに向ける
「では…先程までの態度が一変しているのはなぜだ?」
ふぐ
息を詰まらせる議長
「早く…あいつを……エリックを殺さなければ」
「殺さなければ?」
「世界の終末が来てしまう!」
「終末!?」
3人は耳を疑う
「どういうことだティゲルス」
「エリックが世界の終末に何か関係しているのか?」
「彼は何かをしようとしているのか」
「はぐ………うぅ…」
冷や汗が止まらないティゲルス
「うぅ……ん…………それは」
言えない
「おかしなジジイだな!」
ドン
胸ぐらを掴むシャンザ
「さっきから……こっちはお前に協力してやろうって言ってんだ!」
「それを言えないだ!?」
「本来なら即刻死刑なんだよお前は!」
うぅ……
「なっ……」
泣き出すティゲルス
「す……すまない……」
「だが信じてくれ!私は悪事だと理解して行動をしていると!」
シャンザは手を離す
「私がしたこともこの国でやったことも人から見れば悪人のやること……」
「だが!無能な私ができることなんて限られているんだ!」
「世界を終わらせないためなら……喜んで道化でもやるさ」
「ひとつ聞かせてくれ」
ヴィットウェイが歩き出す
「今回の反乱軍の頭目だったマジュラ・ディグノーに自身が皇帝陛下の隠し子だと許されざる虚言を吐いた愚者の名前を教えてくれ」
「君がやれる世界平和への一歩だ」
「平和のために道化でもなるんだろ」
「教えてくれ……嘘でもいい、嘘がつけるのならなティゲルス・リットラ」
ヴィットウェイの眼差しは前を向く
ゴクリ
「討究機関ストーム素材調達班カリノバ班長」
ベンゼン・ダイアン
「彼が……今回の首謀者であり反乱軍を組織した張本人です」
紙を見るヴィットウェイ
「そうか……議長」
うぐ……
泣き下を向く議長
「あなたはやはり眩しいな騎士団長」
「私もあなたみたいに………いや」
これは傲慢です………かね……
笑う議長
ギシャギシャギシャギシャギシャギシャギシャギシャ!!!
「なんだ!」
ヴィットウェイは叫ぶ
「…………あ…」
目の前の議長は捻り潰され血だまりとなる
シャンザは議長の遺体を見る
「この魔力……地下水路にも同じような魔力残穢が残ってた」
「そうか……あの時点で死ぬ運命だったってわけかい…………議長さん」
ガレン
「なんと……酷い」
ヴィットウェイは出口へ向かう
「我々の見立てが甘かったわけですね」
シャンザ
「まぁ……そうだね」
「ティゲルスの体内に魔力痕はなかった…それだけで結界を貼れば議長を外敵から守れる……」
「だと思っていたが…この魔術を見るに脳に直接魔術作用……しかも丁寧に時間経過で作用する細工」
「おそらく自身の魔力に馴染んでいたことことから……数年、数十年前につけられた」
「初めから生かしておく気はさらさらなかったってことかね」
ガレン
「それに最後の言葉……ストーム内部事情を言った瞬間に術は発動した」
「議長も最後は……」
カツカツ
外へ出るヴィットウェイ
「シャンザさん……悪いがティゲルスの遺体を安置所まで転移させてください」
「あとは私が埋葬しますので」
「ヴィットウェイ……」
「ここまで人の命をコケにする外道は」
「骨まで灰燼に帰さなければ……」
「本当の平和は訪れまい」
ヴィットウェイの目は見開き怒る
世界のとある場所
「おい!ベンゼン!」
扉から大声
大広間
その中央にある10mほどのテーブルで食事をしている男
口を拭う
「あぁなんだ」
気だるそうな声
「さっきさ!呪術班のルネットからアトロスの件で面白いこと聞いちゃってさ」
「お前にも言っておこ………」
バァァァァァァァァァン!
大広間の壁に大きく抉られた跡
「……急にやめてよベンゼン」
テーブルの上に乗っている青年
「殺し合いはルール違反だろ?」
ふっ
ナプキンを置くベンゼン
「殺し合い?今のはちょっとしたお遊びだろシドウ?」
「まっそうだね」
シドウと呼ばれた黒髪の青年
「で、早く言えよ面白い事を」
「あぁそうだね」
「なんでもアトロスで君の名前を言って死んだやつがいるってさ!」
「ついに君も表舞台に立つ日が!」
バッ!
両手を高らかにあげるシドウ
「ちっ!」
舌打ちをするベンゼン
「ったくあの根暗女」
「だから呪術は思考に入った時点で発動させろって言ったのに!」
座るシドウ
「まぁまぁ、思考制御型の呪術はまだ未開発だからって言ってたじゃん」
「いじめないでよ…可愛い後輩をさ」
ガタ
席を立つベンゼン
「誰に知れたんだ……俺の名は」
ニッ
笑うシドウ
アトロス帝国最高位騎士団 団長
ヴィットウェイ・ダリルダンカー
はっはっは
笑うベンゼン
「なるほど……だから面白い事なのかシドウ」
「あぁ!」
「ついに動くのかな!」
「俺たちが夢にまで見た平和を願う者同士の殺し合いが!!」
「その顔どう見ても世界を破滅させる奴の顔だと思うがな」
笑うベンゼン
はは
「粗末な事だろ?」
「何を壊そうが殺そうが重要なのは一つさ」
「我々の思想に共感する者がどれだけ生き残り世界を存続させるか」
「残った世界で俺たちは「勇者」になるんだぜ!」
アトロス帝国内乱後
騒動は皇帝指導の元、騎士団、街の駐屯兵などの力で倒壊した家屋の再建、帝国内の浄化などが行われた
帝国に巣食う内通者は騎士団長ヴィットウェイ並びに騎士位3席により摘発、裁判が行われている
帝国再興の折8番通り、7番通りの在り方について議論が交わされ国からの公的業務の斡旋により徐々に活気を取り戻す
5日後 6番通り
歩くつなぎの男
「はぁ……そんな日たってねぇのに懐かしいな」
見上げる建物には「ガレアス工房」の看板
壁には「鍛冶屋募集!」の張り紙
ギィィ
扉を開ける
カン
カン
鉄が鳴る音
「叩けばいいってもんじゃねぇぞ!」
「はい!」
見渡す景色は懐かしの風景
涙を浮かべるアンス
「おい!いつまで階段の上にいるんだ!」
「え!」
急な呼びかけに驚くアンス
「早く降りてこいつらに鍛冶屋のなんたるかを教えてくれよ」
「アンス」
「はい!師匠!」
階段を降りる鍛冶職人




