75話 殺す事の意味
ピシャピシャ
地下水路を走る1人の少女
ただひたすらに魔力を追いかける
(感じる……べネスの魔力がどこにいるのか)
(それに……段々と弱まっていくのも)
リリアの速度は上がる
感知魔力はべネスの位置を示す
べネスが持つビーコン魔石は地下迷宮などで用いられる所有者の魔力を巨大にする作用を持つ魔石
魔力を巨大にするだけで強化や威圧などには使えない
シャカ
リリアはフードを被り面をつける
(ディッツの魔術……意外と役に立ってたのね)
べネスの魔力が近づく
バシャ
バシャバシャ
角の先5mにいる
バサ!
角を曲がる
リリアの目に飛び込んだのは……
「あぁ!なんでここに」
「それはこっちのセリフ!」
「ってか……助けて!」
ニナは議長と血だらけのべネスを両腕に抱えていた
ゴゴゴゴゴゴ
後ろからおびただしい数の魔生物
「今弓ひけないの!」
バシャ
ニナとリリアはすれ違う
「任せて」
がぁぁあああ!
襲いかかる魔生物
ジャキン!
バシュゥゥ!
噴き出る紫の血飛沫
次々と魔生物を切り刻む
バシャ
止まるニナ
ドサ
2人を置く
ガチャガチャ
弓を展開する
「何かとあんたとは一緒になるわね」
ビュン!
ブシャ
矢が突き刺さる
ブン!
剣を振るう
「……で地下にいた黒髪知ってる?」
弓を絞るニナ
「あぁ……あの頭がおかしい人かしら」
「なら心配ないわ……私の仲間達がついてる」
ザシュ!
「そっ……なら……安心だね」
「とっととここを終わらせましょう」
帝域 屋根上
エリックとイルマは座っている
イルマは遠くを見ている
(止まれと言われ数分……エリックは魔石に喋りかけ続けている)
「どうしたイルマ」
「あぁ……いやなんでもない」
ふぅ
エリックは息を吐く
「どうも戦況の流れはこっちが持っていけたらしい」
?
イルマは首を傾げる
「じゃあもう大丈夫ってことか?」
「あぁ、改革軍で帝国領域に開く放たれた反乱軍と魔生物を狩ってた部隊から次々と戦闘終了の報告がきた」
「しかも反乱軍は結構前に全員揃って撤退したらしい」
「全員?」
「あぁなんか魔石が光った瞬間、戦いの一切を放棄して逃げたらしい」
「あらかじめ決まっていたかのようにな……」
考えるエリック
「まぁ統括してるウィーズって人から改革軍も警邏する少数以外は避難所に返していいかって連絡きたし」
「そろそろだなと」
ピカ
空が光る
イルマは立ち上がる
「またきたのか」
「いや…」
「終幕の光芒だな」
天に突き刺される2本の光柱
はぁ
バタ
エリックは倒れる
「どうしたものかね……あの2人にろくに連絡してやれなかったし」
「そもそも不確定要素が多すぎたな……」
空に広がる星を眺める
「こんなんじゃ、いつかあの時みたいになっちまう……」
「あの時ってなんだ?」
小さくなり浮遊するイルマ
「まぁ……過去の話さ」
ガチャ!
2人は音のした方に目を向ける
「あの時の仮面か」
イルマの視線の先には先の尖った仮面
エリックは視線を空へと戻す
「どうした…もう帰ってもいいぞ、戦いは終わった」
カパ
仮面を外す
深緑の髪が風にゆられる
「気づいてたのか……エリック」
「気づいてた……か」
「見ればわかるさ、仮面をつけていようがな」
「お互い前を見れてんなら結構なことだろ」
「なぁジェット」
ニコ
笑うジェット
「あぁ…全くその通りだ」
「ただ……まぁ時間ができたから会いにきただけだ」
「俺の巻き込まれ体質はあの人譲りかな」
ジェットはその場を去る
ブブブ
エリックのポケットが振動する
四角い鉄製の箱を取り出し耳に当てる
「おぉどうし……」
助けてくださいぃぃぃぃいいいいいいいいいい!!!
「うっせ!」
いそぎ耳から離す
「なんだ今のやかましい雑音は」
イルマが毒づく
「落ち着けヒヨル要点を話せ」
「えぇと…私達迷子です」
はぁ
ため息をつく
「要点じゃ………まぁいいや」
「そこでじっとしとけ今行くから」
「えぇ!ここ地下迷路ですよ……エリックさんが迷子になっても私探せませんからね!」
「行くのは俺じゃねぇよ」
「頼れるお姉さんだよ」
「はい?」
地下水路
ドサ
ゼノを置く
「ごめんね僕重いよね」
ぐっ
「私こう見えても力には結構自信あるんです!」
「心配は無用です」
ドサ
崩れるように座るヒヨル
はぁ………
「もうすぐ頼れるボスが来ますからね」
「ヒヨルさんが言ってたボス?」
「はい!頼れる人です」
「なので待ってれば来ますよ絶対に」
ふふ
笑うゼノ
「本当にヒヨルさんっていつでも元気だね」
「羨ましいよ」
「昔は結構泣き虫だったんですよ」
「ある日にお母さんから泣いた分だけ笑えば強くなれると聞いたので……」
「今では無理にでも笑うようにしてるんです!」
ニッ!
「素敵なお母様だね」
「はい!大好きです」
バキ!
地下空間に黒い穴が空く
「なんだ!」
ゼノは驚く
「大丈夫です…助ける時黒い穴からお姉さんが出てくると言っていたので」
「お姉さん?」
ズズズ
黒穴から現れるお姉さん
「可愛い弟妹のためにお姉さん登場!」
「なんてね」
「あぁ!シャンザさん!」
ヒヨルは鍛冶屋「ギル」で会った時に一目惚れしていた
がし
シャンザに抱きつくヒヨル
「おうおうヒヨルちゃん……よく頑張ったね」
頭を撫でるお姉ちゃん
「あんたがシャンザさんですか…」
「あぁ話は聞いてるよゼノ君」
「なんでも帝国騎士で臨界天に1番近いとかなんとか……」
はは
笑うゼノ
「それは……レストさんの過保護でしょう」
ちっち
「レスト君だけじゃなくヴィットウェイもだよ」
「……そうでしたか」
「嬉しいですね」
「まぁいいさ」
「とりあえず帰ろうか」
「みんなが待ってるよ」
ヒヨルは歩きゼノはシャンザにおぶられる
ズズズ
開く黒穴を通る3人
カツカツ
「ここは……帝城?」
3人は大広間へと歩を進める
シャンザ
「ここは治療部屋って言ってもほとんど重症の人たちが使ってるけど」
「君たちもここで治療を受けるといい」
「えぇ!」
「私は別に重症では……」
口に指を当てられる
「そこは功労者なんだから手厚い補助を受けるべきだ」
「それに仲間とも会いたいだろ?」
「ヒヨル!」
ヒヨルの目の前には見慣れた金髪の少女
「リリア!」
走り出す両者
ガシ!
うわぁぁ!
泣き出す
「よがったですぅぅぅ!」
「うんうん、本当によかったよ!」
「生き残れたね今回も生き残れたね」
抱きつく両者
「さっきエリックから報告は受けたけど実際に合わないと不安で」
「私も大丈夫と思っていましたが」
「本当に不安でしたよぉ!」
ゼノ
「あの人がヒヨルさんの仲間……」
「あぁ…所でゼノ君」
「あの金髪少女どこかで会ったことあるかな?」
「いえ…初対面です」
「そうかい」
「じゃあ君はベッドで治療受けてね」
ベッドに横たわるゼノ
「ありがとうございますシャンザさん」
「あぁ……それと地下にいた君の上司も入ってきた魔生物討伐で貢献したらしいよ」
「じゃね」
部屋を後にするシャンザ
ふっ
笑うゼノ
「あの人たちなら当然かな…」
カツカツ
地下へと続く階段を降りるシャンザ
明かりは蝋燭のみとなり地上階層よりも薄暗い
ギィィ
木のドアを開ける
上には「収監所」と書かれている
牢屋は寂れていて中に人はいない昔の産物
奥の扉は厳重に結界が張られている
扉を開く
「やぁお待たせ英雄達」
「ありがとうございますシャンザさん」
頭を下げるくせっ毛
「なぁに彼女達の功績を見れば当然の行動だから」
「それで……あなたがガレンさんかな?」
両腕のない男
「あぁ……こんな姿で恐縮だなシャンザ元団長殿」
「何言ってんだい…色男がやすやすというもんじゃないよ」
笑うガレン
ヴィットウェイ
「ガレンさん……」
「もういいと言っただろう団長殿」
ヴィットウェイを遮る
「別にわたしは誰を恨んでもいない」
「これは私自身が招いた不始末、騎士団には何の責もなし」
「すみません」
頭を下げるヴィットウェイ
「じゃあ始めるか」
前へ歩み出るエリック
「ティゲルス議長への尋問を」
椅子に縛り付けられる灰髪のおっさん
額に汗を垂らし何かを訴えている
それを見つめるヴィットウェイ、シャンザ、ガレン、エリック
ガチャ
口の紐を取り外す
「さぁ何を語るか……議長」
ふふふ
笑うティゲルス
「お前らは何もわかっていないんだ!」
叫ぶ議長
4人は表情ひとつ動かさない
「どいつもこいつも幻想の平和に甘んじ先を見ようとして……」
ブン!
「がふぁ!」
血が垂れる
「何してんだいエリック」
エリックはティゲルスを殴る
「何って死ぬことはないと安堵し饒舌になる勘違い野郎に立場をわからせようと」
がし
胸ぐらを掴むエリック
「ちょ!」
バサ
シャンザを止めるヴィットウェイ
「彼に任せてみましょう」
「彼に賭けようと言ったのはあなたですよシャンザさん」
「お前は自分が何をしたのかわかってんのか」
落ち着いた口調
グラ!
揺さぶる
ふふふ
微笑するティゲルス
「何って……世界平和への第一歩だろ?」
「君もわからないかね…この国で魔生物への研究が進めばきたる未来への対抗手段がひとつ増えるんだぞ」
「近い将来必ずくる終末に対抗できるのは「ストーム」の研究に他ならない!」
「そうだろ」
ティゲルスの目は真っ直ぐエリックを捉える
「そのためなら罪なき人も死んで当然と?」
…………
ニコ
笑うティゲルス
「あぁもちろんだ」
「未曾有の大災害を抑えられるなら少ない犠牲はつきものだろ」
シャキ
エリックは服からナイフを取り出す
「じゃあ今ここで死ぬのも本望だろ?」
「脅しか?殺せないのは知ってるぞ!」
ビビりながら喋るティゲルス
「許可する」
後方からヴィットウェイは声をかける
「君なら許そう…この場のいかなる殺人もここで秘匿し決して表に出さない」
ヴィットウェイは2人を見る
頷くシャンザとガレン
「あぁ……俺も最初からこいつを殺したくてうずうずしてたんだよ」
ナイフを振り上げるエリック
「あぁ…私は決して屈しないぞ!」
早口になるティゲルス
「この世界は空想だ、虚無だ!」
「勇者が魔王を征伐し皆が世界が平和だとほらをふく」
「お前もそうだろ騎士団長!」
ヴィットウェイは眉ひとつ動かさない
「おかしいだろ!なぜ隠す勇者の死を」
「それは世界に危機が去っていない証拠ではないか!勇者がなんだ魔王がなんだそんなもの全てご都合主義の産物ではないか」
「奴らは世界の危機を勇者という幻想で隠し我々の知らない所で世界を終わらそうとしてるんだ」
ブン!
刃が落ちる
「私は怖くないぞ!ストームがあるかぎり私の信念が潰えることはない!」
ティゲルスの眼前に刃
「怖くない怖くない怖くな……ああああぁぁぁぁぁぁああああああああ!!!!!」
ガタガタガタガタガタガタ
椅子が揺れる
ザク
「うぅ……う」
ガタ
刃は頬をかすめ椅子に刺さる
ティゲルスは失禁し気絶する
ヴィットウェイ
「どうした…殺すのが怖くなったか?」
ナイフを抜くエリック
「そんなんじゃねぇ……ただ」
「殺して済む問題ならとっくに世界は平和になってる」
「ただそれだけの話だ」




