70話 会合
ボォン!
ダッ!
帝都の空に赤い星が流れる
「はっは!さすが勇者秩序」
笑顔のソウマ
「はぁ!」
ブォン!
炎の剣を振るう
「おっと」
ヒュイ
軽々と避けるソウマ
「無理しないでよ…臨界天使った後でしょうに」
はぁ
息があがるヴィットウェイ
「なるほど……貴様らはおこぼれを貪り続け勇者終末など仰々しい名で呼ばれているのか」
「我なら羞恥心で表になどあるけんがな」
ふ〜ん
余裕の表情のソウマ
「まぁ…あんたの考えなんてどうでもいいし」
「挑発なんて弱者がすることだよ……騎士団長?」
ジュ
ボォ!
ソウマに振りかざす正義の炎
「はぁ!」
ブン!
ガキィン!
「なっ……」
ギギギギギギ
剣を受け止める赤色の籠手
「まぁ…栄光ある未来のためにさ」
「犠牲になれよあんたも……この国も」
ドッ
「ぐぅ……」
ヴィットウェイは後方に押し出される
ビタ
「くそ……」
空中で磔にされる
「いいねぇ……その顔」
顎に手を置くソウマ
「どうだろう「強者の断罪」って名前」
「強いものでも死ぬ時は苦渋の表情へと変わる…そんな意を込めた作品」
パチン
指を鳴らすソウマ
「潰した後に血を全部使ってあんたの形にするってのはどうかな」
「うん!そうしよう」
グググ
ソウマは両手で何かをこじ開ける
空中に亀裂が入る
「じゃあね……なもなき老兵」
バキィ!
グシャグシャグシャ!
空間が歪む
「…………はぁ」
下を向くソウマ
「すみません……」
地に伏せるヴィットウェイ
「なぁに……休んどきな小僧」
シャンザは上を向く
「そうはいきません」
「今なお戦う同胞の魔力が潰えぬ限り」
「私が倒れることはあってはならないのです」
ふぅ
呆れ顔のシャンザ
「ほんっとお前は真面目だな堅物が」
「臨界天だけじゃねぇ…陛下の護衛に裏方の諸々で魔力空なんだろ」
「よくやったじゃねぇか、お前がいなかったらとっくに国なんて滅んでんだろうさ」
「ですが!」
ギロ!
男の目は堕ちない
ガシ
両手を握りしめるシャンザ
「わかってるよ、諦めが悪い所もかわんねぇな」
「魔力練っとけ……私が作ってやるよ」
「見せ場をね」
「もういいかなぁ」
声を下すソウマ
「てかそこ……危ないよ」
ビィ
2人を囲むように地面が歪む
ドン!
円状に地面がひしゃげる
「へぇ……」
見下ろすソウマ
(転移魔術特有の前兆が見えなかった……やるね)
バキ!
ソウマ上部に開く穴
「もっと狙えよ小僧!」
ブゥン!
振り下ろされる右腕
バッ!
手を突き出すソウマ
「届くわけないだろ!そんな鈍い攻撃」
手から魔術を発動させる
バキ!
両者の手の間に黒い穴が開く
…………!
グリィ!
抉り込むシャンザの右腕
ソウマの手と顔の間に開くもう一つの穴
「経験があせぇ!」
ドッ
ダァァァァン!
衝撃波で周辺の家屋が吹き飛ぶ
バキ
地表に開く穴
「ふぅ……まだまだたんねぇな」
歩くシャンザ
「私の見せ場じゃなかったんですか」
しゃがんでいるヴィットウェイ
「なぁに……私で終わればお前も安心だろ」
笑うシャンザ
ふっ
「えぇそうでしたね……団長」
ドッ
ガガガガガガ
「もう少しだけ付き合うよお二人さん」
地面から浮き出るソウマ
振り返るシャンザ、ヴィットウェイ
「そうかい、よかったなヴィットウェイ」
剣を構える
「えぇ全くです、殺す前に逃げられるのかとヒヤヒヤしてたので」
ゴゴゴゴゴゴ
地面が抉り浮かぶ
ソウマの周囲に漂う巨大な岩石
「これの岩石には当たんない方が身のためかもね」
バキ!
黒い魔力を纏うシャンザ
(岩石から異様な魔力を感じる……即死か)
「いきましょうシャンザさん」
「おうよ」
ダッ
走り出すヴィットウェイ
ダン!
ヴィットウェイの前に赤い籠手
ガキィ!
ダッ
ダダダダ
両者の応戦
バキィ
衝撃で地面に亀裂が入る
ヒュゥ
ヴィットウェイめがけて岩石が飛来する
ソウマはにやける
(捌き切れるかな……団長さん)
ダダダダ!
拳速を上げるソウマ
ガキガキガキィン!
剣も速度をあげる
ゴゴゴゴ
岩石が目前に迫る
バキィ!
黒い穴が空く
ビキィィィ!
岩石と黒穴が衝突する
バチィ!
黒穴が破裂し岩石が降る
拳を振るうソウマ
(終わりだ……団長)
ガキィン
ヴィットウェイの剣がソウマの籠手を弾く
「な…………」
ザシュザシュ!
「ぐふぁ!」
ソウマの体に刻まれる十字の斬撃
「岩石に目を奪われたのはお前の方だったようだな」
最後の一振りを振るうヴィットウェイ
ゴゴゴゴゴゴ
音は増し岩石は空を埋め尽くす
ボゥ!
ザシュ!
めったぎり
バタ
倒れながら笑うソウマ
(もう間に合わねぇよ)
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!
隕石の風に靡くアトロス騎士団のローブ
ふっ
笑みをこぼすヴィットウェイ
「やはりあなたは上に立つべきだ」
見上げる上空には巨大な掌底
風に立ち向かうお姉さん
「さぁ……ちょっと本気を出すよ!」
シャンザは腰を落とし両手を前に出す
ガガガガガガガ
上空の掌底はシャンザの手と連動する
「ふん!」
ゴォォォォォ
掌底は隕石を包み込む
パチン
手で包まれた隕石は消滅する
「ふぃ……まいったね」
前を見る2人
そこには血だらけで立つ男
「まだ稼がないと殺されちゃうんだ」
「もう少しよろしくね」
シャンザ
「上位魔生物の回収とか言ってなかったかい?」
バッ
手を上下に構える
「よく覚えてるねおばさん」
「まぁ強者は色んな任務を背負わされるんだよ」
「あんたらも一緒だろ?」
ボゥ
炎が灯る
「我々騎士の任務はアトロスの守護と仇なす者への鉄槌」
「それ以外背負う気などない」
ソウマ
「かなしぃね」
「強者同士意見が合うと思ったけど」
パチン
両手を閉じる
「生理的に合わないなら仕方がないか!」
グィ
ドン
ヴィットウェイ、シャンザの周りに重力場が生まれる
ダッ!
足で地面を抉り突撃するヴィットウェイ
迎え撃つソウマ
(普通なら動けもしねぇんだよ化け物が)
剣と拳が交戦する
定英博物館 1階
戦いの傷が残る戦場
展示品に傷はなく異様な雰囲気が漂っている
ガタ
歩くエリックとイルマ
「さすがはアトロス加工物は上等だな」
浮遊するイルマ
「この素材は耐魔性能が桁違いに底上げされている」
「物理攻撃に対しても約50層の防護幕が貼られていて大抵の衝撃は吸収される」
「さすが物知りだな」
「別に見ればわかる事を言っただけだ」
「見てもわかんねぇんだよ」
周りを見るイルマ
「で、ここに来た理由はなんだ」
「今も帝国のあちこちで魔力が衝突している」
「それに同胞が置き去りになっているのも放って置けない」
「心配すんな」
「デモニッションは記録だけ抜かれて死体はそのままだと思うし」
「起動してから記録は遠隔で筒抜けだったし死体には何にもされねぇよ」
「そうか……」
カタ
瓦礫を登る
「これから起こる事は他言無用で頼む」
「あと……もしもの時は俺を助けてくれよ」
エリックを見つめるイルマ
「まぁ任せときなよ」
「弱いエリックを強い僕が守ってあげるからさ」
コト
2人の目の前に黒装束の幼女が立っていた
ぺこり
「初めましてエリック様」
「マスターの代理人として会合に出席させて頂きます」
「マスターは多忙の故、ご理解頂きたく存じます」
エリックも一礼をする
「こちらこそ急ぎの呼び出しに答えて頂き感謝申し上げる」
「早速だが本題に行きたいのですが、よろしいか?」
「……っとその前に、あなたのお名前を頂けると進行がスムーズになるのですが……」
ぺこり
再び幼女が一礼
「申し訳ありません、私は名無し人なのでお答えできません」
「そうでしたか、申し訳ない」
「……では、本題へ入らせて頂きます」
「ミレニアムに頼んだ憑依型魔生物はどこまで研究が進んでいるかを教えて頂きたい」
バタン!
幼女は突如倒れる
がし
立ち上がる幼女
「あぁすまないエリック」
「これの魔術は使う時に気を失うらしい」
外見は変化はないが声色、表情、佇まいから別人と一目でわかる
ぐい
口を拭う幼女
「そんな硬い話し方は気を遣う」
「俺と君の仲じゃないか、さぁ気楽に行こう」
ふぅ
息を吐くエリック
「さっきその女の子が代理って言ったから」
「てっきり姿も表さないかと思ったよダンバールさん」
はっはっは
綺麗な顔に似合わない下品な笑い
「まぁまぁ、これも言われた通りにいっただけだから」
「恨まないでくれよエリック」
ボリボリ
頭をかく幼女
「で……憑依型魔生物の進捗だったか……」
どん
瓦礫に座る
膝に腕を置き頬杖をつく幼女
「その前に……対価としてお前は何をくれる?」
ガタガタ
瓦礫の中を歩く
「ザンパってやつの研究を見て気づいた修正点でどうだ」
う〜ん
「そうだな、あの豚野郎には遊びで金と餌を与えたが」
「所詮凡人は凡人だったようだな」
くい
指でエリックを招く
「どれ……見てから決めようじゃないか」
「首にさせ」
エリックはカバンから四角い黒い箱を取り出す
ジャキ
先端から刃が飛び出る
ザク
「はがぁ…」
首に刃を刺す
がく
瓦礫を降りる
顔を上げる幼女
「ふん………なるほど」
パン
手を叩く
「いいだろう……これなら対価になる」
がた
立ち上がる
手をエリックに向ける
「受け取れ記憶の断片を」
ピュン
エリックの頭に光線が貫通する
「なっ!」
イルマが声を漏らす
どさ!
倒れるエリック
「そう慌てるな魔導生物」
「無害な光線は全てを貫通する」
「感知も防御も意味をなさない」
むく
起き上がるエリック
「いでで……光線は無害でも気ぃ失って倒れたら痛いんですがね」
笑う幼女
「これで会合はお開きでいいかな?」
「いやまだ一つ」
ん?
「ヴァンダ……アンスの兄弟子は何をしたんだ」
「ほぉ……それを知りたいのかエリック」
「あぁ…ガレンは勇者の鍛冶屋という肩書きが消えるほど重い罪をしたというが」
「それはどんな罪を犯したのか……知ってんなら教えてくれ」
「さっき渡した情報と今の情報じゃ対価になってねぇ」
ほぅ
「俺に楯突くのかな……エリック・バートン」
エリックは幼女を見つめる
「俺だってこの情報得るために苦労したんだ」
「少しの色はつけてくれてもいいんじゃねぇか?」
にやける幼女
「そうだな……まぁ別に隠す必要もないか」
「ヴァンダはガレンが隠していた最高位の魔石「シグナリア」を盗み出しどっかの悪い集団に高値で売り払った」
「しかも売買が明るみになった時にはヴァンダは逃亡、全責任はシグナリア秘匿と合わさりガレンが罪を背負った」
「あとは見ての通り研究所で拷問され「シグナリア」の情報を搾取された」
「どっかの悪い集団ってのは俺の想像通りでいいのか……」
さぁ
「お前の悪いという言葉の定義を知らんからなんとも」
「でも俺から見たら大義を掲げる良い集団だと思うけどね」
飄々(ひょうひょう)と喋る
「それにあいつの手を奪うよう指示を出したのは俺じゃないし」
「そうか……」
「手を奪ったってことは……もう用済みってことか」
「さぁ……」
肩を落とす幼女
「じゃあねエリック」
「あぁそれと何を思ってるか知らないけど」
「君に危害は加えないから安心しなよ」
ビィ
突如として幼女の前に青い四角の幕が出現する
スルゥ
幕の中に消える
「久々の仲間との再会を楽しんでくれ」
「エリック」
ブゥン
消滅
ふぅ
息を吐くエリック
「仲間………ねぇ」
壊れた天井から夜空を見上げる
「ねぇ今の誰?」
ビクッ!!
驚き振り返るエリック
「な……なんだ……お前かリリア」
ビリ!
イルマは成長し雷を纏う
「おい待て!」
慌てて止めるエリック
「こいつは仲間!俺たちが戦う敵じゃない」
ヒュン
子供に戻る
「ならそんな気味悪い登場はやめてくれ」
リリア
「何そのガキは」
イラっ
「なんだとこの根暗女」
「まぁまぁ2人ともここは早く次に行かないと」
ふん!
2人はそっぽを向く
「てかリリアなんでここにいるんだよ」
腕を組むリリア
「別に……あんたから言われた作戦終わったから」
「付いてったらなんかあると思って」
はぁ
ため息をつくエリック
「8番通りに行けって言ったと思うんだけど」
・・・
「聞いてない」
嘘をつくリリア
じー
「まぁいいや、帝域に戻るぞ」
「あともう少し、最後まで気ぃはれよ」
「ちょっと!」
「なんですかリリアさん」
「急いでるんですけど」
「さっきの女の子は何?」
「それと話してた内容も意味わかんないんだけど!」
「………まぁ………後で話すから」
「今は目の前のことだけに集中してくれ」
・・・・
「わかった……」
「絶対に!後で話してよ!」
「はいはい……わかってるよ」
3人は帝域へと足を運ぶ




