62話 龍対竜
帝城 皇帝の間
部屋は炎で包まれる
緋炎と蒼炎が吹き荒れる
炎は飛び散るが部屋は焼き焦げない
炎は龍の形でうねりをあげる
「臨界天は魔力を極限に練り上げると魔力の性質そのものが変異する総称」
ボゥ
ボゥ
歩くと炎が巻き起こる
炎の中に翼が生え鱗を纏う姿
「己の魔力を対象物へと直接流し込める」
スゥ
剣を前へ向ける
炎の中に羽が生え鱗がある姿
「そうだな...臨界天の攻撃に防御は意味をなさない...だったか」
「じゃあ臨界天同士だったらどうなんだぁ!」
ボォボォボォ
マジュラの全身から蒼炎が噴き出る
ボォン!
突進
「そうだな......その前に言いたいことがある」
ボボボボ!!
剣に炎が灯る
ダッ!
目の前にマジュラが現れる
「死ねぇ!」
右手を振り下ろす
―― 龍限十束――
ボッ
.........
ドォガァァァアアアアア!
「ふがぁ!」
剣先から龍の頭に似た魔力の塊がマジュラをなぶり返す
剣先一直線にマジュラは吹っ飛ぶ
「あが......ぐはぁ」
部屋の天井に埋め込まれるマジュラ
「な......ぜだ」
剣をおろすヴィットウェイ
「さぁ早く......臨界天を使ったらどうかね」
「最近命の戦いに飢えていた所だ......」
我自身の臨界天なら退屈しのぎにはなるだろう
「勇者終末の後ろ盾を使い...アトロス帝国に厄介ごとを持ち込んだだけでは なく」
「皇帝陛下を洗脳しようとした挙句、罪なき民そして愛する仲間達に手をかけた罪」
グッ
剣を構えるヴィットウェイ
「償うだけでは済まされんぞ!」
目が燃える
口からは炎が噴き出る
見に纏う鱗は全ての厄災を跳ね除ける
ギロ!
その出で立ち龍の如し
秘密の部屋
がぁぁぁぁあああああああ!!!!
大きなうねり声をあげる巨大生物
ビビ!!
巨大生物の体に線が走る
ビキビキビキビキ!!
線をなぞるように雷が皮膚を焦がし外傷を与える
そのふもと
ジェット
「なぁ......この生物を倒すってどう倒すんだよ」
「回復するし...明らかに魔力量がおかしいだろ」
見上げるエリック
「なぁあんたこいつの素材を知ってるか?」
傾げるジェット
「しらねぇよ......俺はただここの研究所の責任者を懲らしめようとしただけだし」
「そうか......」
「まぁ一言で言うとこの生物の核は」
「過去数年で冤罪で捕えられた帝民と鍛冶職人、騎士の心臓だ」
「へぇ......そうかい」
「お前以外に薄いリアクションだな」
「別に俺ここの育ちでもねぇし」
「ただこの国で依頼があっただけなもんでね」
「そうか......じゃあとりあえず」
「あの生物の足元を切り続けてくれ」
「いきなり命令かよ......まぁいいけど」
剣を構えるジェット
「よっとぉ!」
声と共に剣を大振りする
バシュゥゥ!
デモニッション5つある足の 2 本が切断される
「ふぅ......どうよ?」
ドヤ顔でエリックを見る
「う〜ん」
顎に手をそえ考えるエリック
「まだだな」
イラっ
「そうかい......たんないですかそうですか」
「じゃあイイよって言うまで切り続けるからな」
ジェットはデモニッションへと走り出す
ビリ!
エリックの隣に現れるイルマ
「なぁエリック......あの再生はどこから魔力を供給されていると思う」
「そうだな......考えられるのは大気と魔力核だな」
「でも考えられるのは前者だな」
「後者の場合核となる媒介の検討がつかなすぎる」
「大気からの魔力供給なら皮膚が奇妙な色の説明もつく」
ビリ
イルマの体に雷が走る
「じゃあ......魔力粒子は吸収に時間がかかるから」
「その前に叩けばいいのか」
ふっ
「そうだな......タイミングは俺が言うから」
「それまで頼んだぞイルマ」
「任せといて」
ビリ!
イルマが姿を消す
ビリ
ビカビカビカ!
デモニッションが光る
ボォン
ビカ!
ブン!
巨大な腕がイルマを追う
ビキビキ!
デモニッションの腕や胴体を渡り攻撃をかわすイルマ
ビュンビュンビュン!
イルマは攻撃を寄せ付けない速度で移動し攻撃
「もう少し早く来てれば......ごめん」
「僕たちが終わらせるから......もう少し我慢してて」
ヒュン
天井にイルマが座り力をためる
ビキ
ビキビキ
帯電する体
バキバキバキ
イルマの足元がイナズマ状にひび割れる
「マジかよ」
ジェットは急ぎ離れる
「君もここを壊す気なのか」
グワァ!
デモニッションは体から触手を生やし天井にいるイルマに繰り出す
ビュンビュンビュ......
ピカ
シュタ
眩い光が辺りを包むと地面にイルマが立っていた
ゴロゴロゴロォォォォオオオオオ!!
ガァアァアアァァ!!!
デモニッションを電流が覆い包む
ジュゥゥゥ
皮膚から煙が立ち込める
ガァァァァァァアアアアア!!
デモニッションが雄叫びをあげる
「おい!イルマと怪盗!」
「なに」「なんだ!」
空を飛ぶイルマを切り続けるジェット
「そろそろ転移するからすぐ移動できる準備しといてくれ」
「了解」「はぁ!?」
巨体を渡るイルマ 聞き返すジェット
「だ・か・ら」
「そいつ一定の体力まで行ったら」
「転移する仕組みになってんだよ!」
切りながら喋るジェット
「どこにだよ!」
クイッ
エリックは指を上に指す
「地上だよ」
え......
ジェットは呆気に取られる
「まじか......」
4層
蝶仮面の案内で入り口まで走るアンス、ガレン、タフノ
「ねぇちょっとそこの白衣!」
蝶仮面は声を荒げる
「はい!なんでしょうか」
驚くタフノ
「もうちょっと早く走れないの!」
「さっきからあんたのペースでちょー遅いんだけど!」
「多分そっちの 2 人も思ってるからね!」
「え!......そうなんですか?」
アンスとガレンの顔を見る
........
「そんなこと......思ってねぇよ」
「ねぇ?師匠」
なんとも言えない間で喋るアンス
「もちろんだ......人にはそれぞれペースがあるからな」
「まぁ......気にするな」
............
沈黙の中をひた走る
タフノが振り絞る力で少しペースを上げたことを3人は知らない
「もう少しで入り口だよ!」
蝶仮面
ズサァァ
足を止める3人
ドン
アンスに激突するタフノ
「ふがぁ.........すみません」
アンスは前を見ている
「師匠とタフノは下がってて......」
ドサ
背負っているブライトを雑に下ろす
「あぁ」「はい」
指示に従い下がる 2 人
「なぁ蝶仮面......お前来た道全部倒したんだよな」
「あったりまえでしょ」
「じゃ......あそこに立ってんのは誰だ?」
2 人の視線の前には血だらけの男が立っていた ヒヒヒヒヒ
奇妙な笑い声が聞こえる
「先ほどはどうもだな」
蝶仮面
「ちょーキモいんだけど」
「さっき確かに殺したはずだよね?」
ヒヒヒ
「お前らが死体を確認しなかったのが運の尽きだな」
「さっきの尖った仮面はどこいったんだ?」
ぬるっとした口調
ガチャガチャ
蝶仮面は弓を展開する
「どうでもいいでしょ」
「今度はうちが殺してあげるし」
ビュン
ピンクの矢が放たれる
シュン
「なんだ今の!」
アンスは驚く
ピンクの矢は男を貫通する
ヒヒヒ
「おいおいどこ狙ってんだよ」
両手をひらく
「さぁ開演だ!」
「行こうか役者達!」
男の掛け声で部屋中に男の分身が現れる
「ヒィィ!」
怯えるタフノ
「これは厄介だな」
周りを見るガレン
「全部打ち抜けば当たるっしょ」
弓を引く蝶仮面
「......?」
何かピンと来ていないアンス
「さぁ怯えて死ねぇ!」
男の掛け声で分身達は一斉に襲いかかる
ビュン ビュン
シュン
「クソめんどいんだけど!」
矢が空振り苛立つ
「あぁぁぁ助けてぇぇ!」
タフノが叫ぶ
がばっ
タフノに覆い被さるガレン
「大丈夫だ君だけは私が守ろう」
アンスは 2 人を見る
「師匠......これって」
ガレンはアンスを見る
「なるほど......大丈夫か」
「タフノ君大丈夫らしい」
2 人に襲いかかる剣を持った4人の男
「何が大丈夫なんですかぁ!」
目をつむり大声を出すタフノ
ダッダッダ!
男は 2 人に近付く
ブン! 剣を振り下ろす
シュン
「う.........あ?」
タフノは消える分身を見る
「が......ガレンさん......見分けられるんですか?」
ガレン
「いや......」
「アンス!」
「はい!師匠」
「大丈夫だ自身の眼を信じろ」
ガレンはアンスに呼びかける
アンスは眼を分身一人一人に向ける
「なんだこいつ......まぁいいか」
ビュンビュン
シュン
当たらない矢
「くぅ〜ジェットはどうやって見分けたんだよぉ〜」
必死に矢を撃ち続ける蝶仮面
カーン
ドドドド
地面が盛り上がる
ビュン!
ドォン
「ぐぉは!」
勢いよく飛び出した地面は左後方の分身に当たる
ユラユラ
分身は姿を保てなくなっている
「ちょ.........あんた」
驚く蝶仮面
分身は消え 1 人になる
「な......なぜ私の分身が見破れた」
アンス
「だって......」
1 人だけ顔が明らかに違ったろ
............
え!そうなの!??
その場にいたアンス以外の全員が思った
バサ
男は崩れ落ち気絶する
かちゃ
トンカチをしまうアンス
「本体弱すぎだろ」
「よし......じゃあ先を急ぎますか」
ブライトを担ぐ
「.........そうね」
蝶仮面は一瞬言葉を失う
「行こうかタフノ君」
「あの......アンスさんの魔術なんですか?あれは」
ふっ
「まぁ......まだ本人が気づいていない才能ってところかな」
「はぁ......」
4 人は地上を目指し進む




