56話 後悔の背負い方
「うぐ……がはっ」
泣き嗚咽するアンス
「し……師匠……すみ……ません」
格子前に近寄るガレン
「何を謝ってる……謝るのはレキュルにディーダ……あいつらを守りきれなかった私の方だ」
「だげど!」
泣きじゃくるアンス
「し…師匠の……うで…が…俺たちの命が……」
「もっと早く………あの時に来てれば……くそ」
「顔を上げてくれアンス」
顔を上げるアンス
格子前で膝をつくガレン
笑顔で穏やかな表情
「お前が生きてくれただけで他にはもういらない」
「アンス……お前は私にとって腕なんかよりも大切な存在だ」
「ガレアスの奴らもそう思ってるはずさ」
「あり……がとう…ございます」
アンスは地に額をつける
「……でそこの人」
「アンスをここまで連れてくるのが目的ではないだろう」
「私に何かようかな」
エリックは気まずそうにアンスを見る
「そうだな……その前にアンス」
アンスはエリックを見る
「泣くのもいいが師匠も一緒に出るんだぞ」
「泣きすぎて荷物にだけはなるなよ」
ぐしゃぐしゃ
顔を擦るアンス
「ったりめぇだ……師匠に成長した所を見せつけてやんだ」
ふっふっふ
笑うガレン
「楽しみにしとくよ」
「じゃあ時間もねぇから手短に話す……ガレンさん」
「あんた…勇者の死について知ってる事があれば全部教えてくれ」
…………………………
沈黙が流れる
口をひらくアンス
「おま…今勇者の死って言ったか」
「あぁ言った」
「てことは師匠に会うのもそのためなのか?」
「そういうこと……最初からな」
「はぁ……そうか」
「でどうなんだガレンさん」
ドス
後ろのベンチに座るガレン
「そうだな……まぁ知りたいやつがいるなら教えるのがいいか」
「ここまできた礼と思ってわかることはなんでも教えてやろう」
「ありがとうございます」
「では勇者の死はどこまで知っていますか」
「そうだな……死については知らないが」
「やつとの最後の旅はよぉく覚えている」
「最後……というと奥様と娘さんを王都に預けた後の旅ですか」
………
間があく
「お前さん…どこでそれを………まぁその旅で間違っていない」
「だがな私は途中まで同行し、とある街でアトロスに戻ってな」
「とある街とは?」
「宿場町「ジュンダーク」だよ」
エリックはメモを取る
(ジュンダークか……これは地図に載ってたな)
「なるほど……ではその旅の目的は聞かされてましたか?」
「あぁ……なんでも自分の過去と決着をつけにいくと言っていたな」
「過去?」
「そうだ……だが私は元々途中までの旅路だったからなんの過去だったかは教えてくれなくてなぁ」
「なんでも聞くとお前の人生を壊しかねないって……あんな表情は見たことがなかった」
「そうですか……過去ね」
「そういえば」
アンスが割って入る
「エリックお前……アレスティアから来たって言ったよな?」
「あぁそうだが」
「じゃあ勇者様の家族にでも聞けばいいんじゃないか?」
「うまく交渉すればちょっとは情報くれるんじゃないか」
ガレン
「何言ってるアンス」
「あいつの死については世界の禁忌」
「調べること自体罪になるんだぞ」
「あぁそうか……………て!」
「お前……犯罪者なの?」
「まぁな」
即答のエリック
「…………まぁ今更だな」
・・・
考えるエリック
「それに俺は依頼されて調べてるにすぎない」
ガタ!
ガレンはたち上がる
「誰に言われた!………まさか……」
アンスは突然の師匠の振る舞いに戸惑う
「娘の………リリアちゃんじゃ……ないだろうな」
ガレンはエリックを見つめる
エリックは上を向き
「まぁ……そうだ」
がた!
再び座るガレン
「そうか……そうだったのか……」
「なんか聞いてたのかあんた」
「まぁ……あいつの奥さんから手紙をもらってな」
「どんなです?」
「ならリリアちゃんにも伝えてくれ」
「君のお母さんはお父さんの死については調べてほしくないってな」
「なんでか理由は聞いてもいいか?」
「お母さん……リアンダはこう書いていた」
「あいつの死は世界がいつか知るべきだけどリリアには一生知らないでほしいってな」
「それは…リリア以外には知ってほしいってことか」
「まぁそうなるな」
「………どれくらい本気なんだリリアちゃんは」
「まぁ………勇者の関係者がいるって分かったら不法入国しても会いに来る程かな」
「それは……私か」
「あぁそうとも」
「えぇ!エリック達……不法入国者だったのか」
アンスは驚く
「まぁな」
「てかてか、あの2人のうちどちらかが勇者様の御息女なのか」
「まぁな」
「………そうか分かったぞ」
………
「ヒヨルだろ!……どうりで気品溢れる佇まいだ……どうだ当たってるか!」
「まぁな」
(こいつはバカなのか、たった今リリアって言ったばかりだぞ)
「どうしましたガレンさん…そんな考え混んで」
「いや……まぁここまで来たらいうべきだろうな」
「先ほどに追加して言いたいことがある」
「はい…お願いします」
「あいつ最後に手紙を送った相手がいてな」
「ミカノツカイ皇国にいる」
輾転回帰
「という人物だ」
「輾転回帰………」
「はっはっは」
「流石の君も知らないだろう」
「はい……初耳です」
「どんな人なんですか?」
「さぁな……私も魔王征伐の旅と最後の旅で名を聞いただけだからな……」
「しかし、あいつはいざとなったらミカノツカイ皇国に行き会えば助けになると言っていた」
「まぁ行くには遠い地ゆえ、助けを求めることは叶わなかったがな」
「そうですか……」
(ミカノツカイ皇国……神に作られた血族「現人」が代々統治している国か)
(世界でも稀な保護国家として環境や種族、魔術においても保護されている国)
「確かにそこならいくら禁忌とはいえ隠し通せることも……」
「私が知ってるのはこれで全て……まだ聞きたいことはあるかな?」
「いえ……ありがとうございます」
「ではここから出ましょう……アンス頼む」
「よし……」
ふん!
ガキィン!
鉄格子をトンカチで叩く
…………………………
グニョ
鉄格子が曲がり穴が開く
タッタッタ
アンスは中に入りガレンを介抱する
「師匠…ここを出てまた鍛冶教えてくださいね」
抱えられるガレン
「あぁ……楽しみだな」
出口へ向かう際エリックは簡単な自己紹介と現状を説明する
通路を進む3人
ガレン
「なぁエリック君」
「なんです?」
「今更だが私のこの姿を見て眉ひとつ動かさかったね」
「この現状も君の作戦というわけかな」
「いえ……ただ」
「自分も同じことしたんじゃないかと思っただけです」
「同じ?」
「はい…今回あなたが捕まってるという状況、アンスから聞いた話から推測するに研究所の奴らは何かシグナリアへの執着があったと思いました」
「ですが主導権は情報を知っているこっちにある、でもいまだにシグナリアの情報は帝国になかった……ということは口を割っていない」
「それであなたの仲間達の虐殺…それを受けて解散し消息不明……あと残ってるのは」
「鍛冶職人に必須の腕……おそらく最初は指を切るとこから始めたのではないかと」
「なるほど…案の定ということだったのか」
「ですがわからないことが一つあります」
「何かな…君でもわからないこととは」
「兄弟子はどこにいるのですか?」
はっ!
アンスは声に出す
「兄弟子もここにいるんですか!」
下を向くガレン
「あぁいると言ってもいいがいないと言っても正解だな」
エリックは前を向く
「それにあんたが捕まった理由もわかんないですよ」
ふっふっふ
「そんなの決まってる私が犯した罪が肩書より重かっただけの話」
「そうか……」
「そんなことよりエリック君」
「君は私たちが最後の旅に出たという情報はどこで知り得たのかな?」
「この旅は我々しか知らないはずだと思うのだが」
「あぁ…それなら勇者の手記を見る機会がありまして」
「そこに書いてあったんです」
不思議そうなガレン
「そうか……見つかっていたんだな」
エリック
「そうですね……」
「無くしていた期間などわかりますか?」
ふむ
「私は最後の旅では書いていた素振りはなかったな」
「しかもあいつは手記を無くしてへこんでいたんでな」
「きっとアレスティアで無くしたものだと思っていた」
「アレスティアで……」
考えるエリック
「一ついいですか?」
「あぁ」
「手記にユディスという名前があったんですが…憶えはありますか?」
「あと勇者が病んでいた可能性はありますか?」
考えるガレン
「さぁてな……ユディスという名も知らぬし」
「病んでいた……それはないだろう」
「娘のために決心した顔で…魔王征伐と同じくらいの活気があり頼もしかったのを憶えている」
…………
「そうですか……ありがとうございます」
ガチャ
扉を開け部屋に戻る
…………………
「ありがとうなタフノ」
「苦労をかけた」
「……………」
無言のアンス
部屋に立っているタフノ
「後悔を背負い罪を受け入れる…」
「これはエリックさんが言ったことじゃないか」
「苦労なんて……おこがましいよ」
目が腫れ充血している
部屋にはタフノ1人が立っていた




