55話 ガレン・ギュッテル
壁を見つめるエリック
手を壁につけると透明な壁越しに手を置く少年
「これは……」
「なぁ……俺はどうすればいいんだ」
言葉が渇いている
ニコ
壁の向こうにいる少年は微笑む
エリックの後ろにいる2人は言葉を失っている
手を重ねる少年に足が4本生えている
笑いながら口を動かすが言語として聞き取れない
ガシ!
アンスはタフノの胸ぐらを掴む
「おいお前……どのくらい知ってたんだ…」
「返答によっちゃあお前をぶっ殺すぞ」
うぅ……
恐怖に怯えるタフノ
「全てだよ……」
怒号を放つアンス
「あぁ!全部って……ふざけてんのかぁ!」
「この状況を知ってて黙ってたのかお前は!」
グイ
アンスの肩を掴むエリック
「やめとけ」
「でもよ!」
エリックの表情は険しく冷静だった
「タフノだって仕方なくやったんだろう」
「もし進んで協力してたら俺たちをここまで案内しない」
バサァ
タフノは床に崩れ落ち顔を手で塞ぐ
「すま……ない……」
「わかってる…わかってたんだ人を介した実験が……これほどまで残酷なことなんて」
「でも従うしかなかった、俺にはそれしかなかった…ただ帝国のためと言い聞かせて……うぅ」
泣き崩れる
「なんでもいい」
エリックは平静を保つ
「いいか………やった事は変わらない、その後悔を背負って罪を受け入れろ」
「俺たちにできるのなんてそのくらいしかねぇだろ」
「はい……わかってます」
泣きながら答えるタフノ
「タフノ……頼む」
「こいつらの生死を聞いてやってくれ」
唖然とするアンス
「生死って……おまえまさか……殺さないよな」
「それを決めるのは俺じゃない」
こいつら自身だ
「アンスと俺は奥のガレンに会ってくる」
「頼めるか………タフノ」
タフノは頷く
「これをつかえ……開錠魔道具のスペアだ」
「生きたい奴はこれで外に出せ」
魔道具を受け取るタフノ
「じゃあ行こう……お目当ての人物に」
「行くぞ……アンス」
「……………あぁ」
2人は奥へと進む
両側の壁には目もくれず
ただ歩く
アンスは下を向き
エリックは前を向く
「なぁエリック…世界は平和になったんだよな……」
「勇者様が魔王を殺して平和に…………なったんだよな?」
ふぅ
息を吐くエリック
「さぁな」
通路の先にドアがある扉には重要人物と名札が貼られている
ただ鍵はされていなかった
ガチャ
扉を開けると先ほどの青白い空間とは対照的に石れんがと赤い照明が照らす空間が広がる
少し伸びた通路を進む
開けた場所に出る
目先には鉄格子
鍵はない……
扉もない
外と完全に乖離された場所
鉄格子の先には髪と髭が伸びている人間が座っていた
「あ………あぁ!」
ガダ!
アンスは腕をつき地面に崩れ落ちる
「来ちまったか………久しいなアンス」
エリックは格子に近づく
「あんたが勇者の武具を作り共に旅をした鍛冶屋」
「ガレン・ギュッテルだな」
男は立ち上がり
「懐かしい肩書きだな」
「あぁそうとも…私がガレン・ギュッテルだ」
返事をする
男には両腕がなかった




