51話 懐柔
8番通り 危険因子収監所 廃棄場
エリックとアンスはひたすら歩く
「なぁいつになったら出れんだよ」
うなだれるアンス
「もう少し……天上の高さと傾きからドームの周辺の大きさは……もうちょっとだ」
「山で見えねぇが…出口がない廃棄場なんてない」
「ちょっとこい」
エリックの案内で山に隠れる
「なぁアンス魔術はあとどれくらい使えるんだ」
「いや……やろうと思えば無限に」
「……そうか」
「あれ見てみろ」
アンスは山から顔を出す
そこには白衣を着た男が紙に何かを書いている
「ありゃ……何してんだ」
「経過観察ってところだな」
「経過観察?」
「この研究所はさっきの化け物がいたように」
「魔生物の研究施設らしい……そこで一つ疑問が出てくる」
「あんなヘドロみたいなやつが実験成功の産物に見えるか?」
「いや……どう見ても失敗だろ」
「そう、あれは意思の疎通もなくただ襲うことしかできない失敗」
「だけど無人の入口を守ることに関しては適任」
「それにやつは意思が無いくせにこの落とし穴に突っ込んでこなかった」
「魔生物は本能的に落ちる場所がわかってたんじゃないかって思ったんだ」
「本能的に?」
「あぁ、ここの研究の核となる材料は「人間だ」」
「どれだけ試行錯誤しても意識の完全消滅は不可能、どうしても自立行動する際に本人の無自覚な意識が必要になる」
「…………はぁ」
「まぁ要するにここにはもう来たくない………てことは一度来たことがありあそこにいるってことは」
「この研究所の奴らは廃棄後の魔生物同士の共生による進化も研究に入れてるわけだ」
エリックが白衣を指差す
「つまり……ここには安全に出入りできる通路が隠されてるってわけ」
「まぁ、あんな堂々と立っているとは思わなかったがな…あの調査方法は危険すぎる」
「…………じゃあ……えーと……つまり」
「何をすればいいんだ?」
「つまり、あの男をしめて出口を聞き出すんだよ」
ニヤ
アンスはトンカチを取り出しにやける
「なら早い……俺の得意分野だ」
白衣の男
「はぁ……疲れた………はぁしんど…………い!」
ヒュルルルルル!
男の体には何かが巻き付けられていた
「な……なんだこ……ふぐ!」
口に何かが巻き付く
「よぉよぉそこの人……今から答える質問にはいなら首を縦にいいえなら横に振ってくれ」
「いいか?」
男は首を縦に振る
「よし……では、ここの出口を教えてくれないか」
男は首を縦に振る
「よし……………え?……いいのか」
男は首を縦に振る
「あぁ…そうか………じゃいいか」
がは!
口の拘束が解かれる
「な…なんなんだ君たちは、どっから入ってきた」
「質問はなしだ…」
アンスの横からくちを出す
「早く出口に案内して……問わられている人の元まで連れて行け」
男は苦悶の表情を浮かべる
「それは……無理だ」
え?無理なの?
アホ面になるアンス
「あんたさっき首を縦に……」
男はアンスを無視する
「俺だってこんな作業……したくない」
「こんないつ襲ってくるかわからない中での作業なんて…頭がおかしくなる!」
「じゃあ誰がこんなクソ作業をさせてるんだよ」
「だから言えないんだよ!わかってくれ!」
男は泣きながら叫ぶ
「そうか……なら死んでくれ」
エリックは言葉を吐き捨てる
グサッ!
カバンから出した物を男の首元に突き刺す
タラー
血が滴り落ちる
「おい!」
「……いいのかよ、やっちまって」
「何言ってんだよ……俺は他の奴らと違って平和主義者なんだよ」
「………?」
がはぁ!!
男は息を吐き出す
「はぁ………はぁ…はぁ」
「何を……これは……」
「束縛魔術の強制解除」
「あんたに流れてる魔力神経の性質を変えてかかってる魔術を完全に無力化した」
「はぁ………そんな魔道具……私は知らない…知らないぞ!」
「当たり前だろ、これは俺が作った一点物なんだよ」
「あんた……何者だ」
「何者って……ただこの国を救おうと立ち上がった勇気ある青年だよ」
……………
「なんだよその目は」
男は疑いの目を向ける
ブルブル
男は首を振る
「そんな事言ってる場合じゃない!」
「この国が危ない……やつらは……ヴィットウェイ騎士団長を殺す気なんです!」
ぽん
肩に手を置くエリック
「まぁ落ち着きな……今は出口を紹介してくれ」
「ですが!」
「わかってないな君は」
「ここで慌てても何も変わらないの………わかる?」
「
「えぇ………あぁ……はいわかりました」
少し落ちるく男
歩く3人
「あ……あの」
「なんだ白衣の君」
エリックが反応する
「こんな歩いていていいんですかね」
「出口までもう少々かかりますけど」
「あと私はタフノと言いますので」
「そうかタフノ……質問に答えてやろおうタフノ!」
「俺は体力が極限に無い……そこを考慮した結果」
「歩いて移動するのと走って途中で体力が尽きることを比べた結果……」
「両者ともに同じ時間と結論付けたわけなのだよ」
エリックの顔を見るタフノ
「要は走りたく無いんですよね」
「まぁそうとも言えなくもない」
「それに……時間はある…全てが揃った時全てが揃う」
「あとは反乱軍の奴らをどう抑えるかだな」
ギィン!
地下に響く高音
鉄と鉄が響き合い激闘を映し出す
灰色縦ロール
「あんた…意外にしぶといのね」
「意外って……意味わかんないんだけど!」
地下水路 最高位騎士団「ガイア」ニナVSリリア
ニナは一定の距離を保ちジリジリとリリアを削る
矢を放ち罠を張り、剣をいなして反撃する
一連の動作はリリアに有効だった
交戦を仕掛けるリリア
ギュイ
弓を絞り矢を放つ
ここだ!
ダッ!
ダダダダダダ!
リリアは立ち止まり剣に魔力を流し辺りを切り刻む
ザザザザザザザザザ
地下水路はコンクリートで構成されている
壁はおち天井は削れる
辺りは煙幕
「目眩しなんて幼稚……無駄すぎるわ」
ビュン
矢を放つニナ
ピッ
手を出し指は空をなぞる
「サーチ」
パチン
バババババ
指を鳴らすと矢が弾け飛ぶ
矢は粒子になりニナの周りに幕として広がる
ギュュ
弓を絞り標的を捉えるニナ
「出てきなよ…そこを超えるたら撃ち抜くから」
ダッン!
煙幕からさらに煙が舞い上がる
「無駄なことを…いくら広げても意味ないのに」
…………………………
……………はっ
その時ニナの首元に刃が迫る
ブン!
ビシャ!
血が噴き出る
「く……そ」
上体を逸らしたが首を切られる
「オラぁ!」
スカ
弓を振るが空振り
はぁ…はぁ
首を抑え強襲に備えるニナ
(おかしい…今完全に魔術感知を受けてなかった)
「どうなってんの!魔術感知を受けない魔術なんてあるはず……」
ニナの後ろから刃が通る
(………)
目をつむるニナ
…………
目を開ける
「なんで切らないの」
首元には剣が突きつけられていた
「はぁ……殺すなって言われんの」
「あんたらをね」
「で……どうする」
「話を聞くか……聞かないか」
「聞かなかったらどうなるの?」
剣を首元から外すリリア
「別に……どうもしない」
「ただ聞いた方が…あんたもお仲間も死なずに済むよって話」
「はぁ……疲れた」
その場に座り込むニナ
「話聞く前に言いたいんだけどさ」
「私たちはともかくヴィットさんが殺されると思うのあんた?」
武器をしまうリリア
「少なくとも…あいつはその危険性があるって言ってた」
「あいつって誰」
「今回の作戦の立案者」
「そう……帝国最高位騎士団を懐柔するなんて」
「ぶっ飛んだ人だね…なかなかに」
「まぁ否定はしないけど」
「じゃあいい?」
「今回の私達がやってる作戦を話しましょうか」
「あの〜」
水路の向こうから顔を出す
「あぁもう来ていいよリッツ」
向こうから走ってくる
「何回も言いますけどディッツですって」
「てかあんたたち、どうやってここまで来たの?」
「1番通りから来ても帝城内にまでに何回通路が変わると思ってんの」
ピッ
ディッツを指差すリリア
「こいつの魔術できた」
「へぇ………どんな魔術なの?」
ディッツ
「方位って言って」
「始点から方位を定めるとどんな迷路でもブレずにまっすぐ進めるっていう……やつです」
スゥー
ニナが不思議そうに2人を見る
「方位って目的地が設定されてるとかじゃないの?」
きょどるディッツ
「えぇ…まぁ………方位だけです」
「よくこれたわねあんたら」
「やっぱ無謀だったのかな……私達」
リリアは呆れ声で尋ねる
「だって方位って……要は勘でしょ」
……………
ディッツを見るリリア
「そんなわけ…………ないわよね」
冷や汗が止まらないディッツ
「あ…………その…………」
「はい勘です」
がし
胸ぐらを掴むリリア
「じゃあ何か!私は今まであんたの勘に身を任せてたんかぁ!」
揺さぶられるディッツ
「で……でもいいじゃないですか!着いたんですから」
怒りが収まらないリリア
「結果論を言ってるんじゃないの!」
「そもそも帝城に侵入するってんならもっと確実な作戦をよこせってことなの!」
「なんで勘で帝城に行こうって思うのよあいつはぁ!」
涙目になるディッツ
「し…知らないですよそんなの!僕に聞かれても!」
2人を眺めるニナ
「早く作戦ってやつ聞かせてくれる?」
ディッツ揺さぶりを止めるリリア
「まぁ……愚痴は直接いうとするわ」
前屈みで息を整えるディッツ
はぁ……はぁ
(今結構言ってたような)
「作戦って言っても全容じゃないからそこは最初に言っておくわ」
「全容じゃないって……どういうこと?」
「なんでもあいつは作戦を全部伝えることが良策じゃないって思ってるみたい」
「聞かされないこっちの身になって欲しいところだけど」
へぇ
感心するニナ
「でもいいと思うわその考え方」
「そうかな?」
「えぇそうとも…私達は所詮人間だもの」
「作戦全部聴いたところで全てが良い方向に行くとは限らない」
「図らずも悪い結果になることの方が多いし」
「ならいっそ役割分担で責任を分割した方が円滑に行くってことでしょ」
考えるリリア
「まぁ今はいいわ」
「…で今回の作戦は」
「帝城で最高位騎士団のメンバーを保護して」
「皇帝と議長………それと手を組んでるこざかしい奴らを一掃する」
ニナは立ち上がる
「後ろの2人はいいけど皇帝陛下に手を下すなら話は別だけど?」
はぁ
ため息を漏らすリリア
「今回の一連の事件で皇帝には不審な点が多すぎる」
「実際に皇帝を見て殺すかどうかは判断する」
「だからと言って私が皇帝陛下に手を下すわけないでしょ」
「それに皇帝陛下を狙う前にヴィットウェイ騎士団長が阻む」
「だから……………」
リリアは説明をする
カタン
ニナは弓を落とす
「それ……て」
「本当ならヴィットさんを殺そうとしてるのは……」
リリアはうなずく
「そう……これを確かめるために私達は帝城に侵入するの」
「ここで言い争うより実際に観に行く方がお互いのためになる」
「手伝って」
ふぅ……
ニナは頭を抑える
「はぁ……わかった」
「もし嘘だったら……まぁいいわ」
「その後の処置は上に任せれば」
ニナは歩き出す
2人は残される
「ちょっと何つったてんの!」
「早く行くよ!帝城に」
「いいの?」
リリアは聞き返す
「何言ってんのこの中で帝城に詳しいの」
「私しかいないでしょ?」
「ゲッツの方位も当てになんないし」
ふっ
リリアは笑い歩き出す
その後ろについていくゲッツ
「あの……ディッツです…………よね?」
3人は歩き帝城へ侵入する




