4話 交渉は最後まで聞くことが大事
戸を開けるとその一室に綺麗な女性が外を見ていた
テーブルを挟んで高級そうなソファーが二つ
壁には絵画やタンス、大きな鏡どれも綺麗な装飾が施されていた
女性は振り返り
「やぁエリックと‥‥リリア・グレイブちゃん♡」
綺麗な服に豊満な体付き、誰しも見惚れてしまうような風貌
口には鉄製の筒をくわえており先端から煙がのぼっている
リリアは驚きを隠せなかった
「な…なんで私がわかったの」
女性の両目は包帯で覆われ、耳が潰れていた
微笑むと
「なぁに、そんなに私のことが知りたいの?」
割り込むように
「雑談はそこまでだシリュウ…報酬をもらいにきた」
シリュウと呼ばれた女性は頬を膨らませ
「もうっ本当に冷たい人ね」
「いいわ聞きましょう…その前に座ったらどう?」
二人はソファに座り対面にシリュウが座る
「で、今回は何が知りたいの?」
「まぁその子絡みってところかしら?」
エリックは淡々と
「そうだ、結論から言う『勇者の死について』知ってることがあったら全部教えてくれ」
一瞬の静寂
フゥゥゥゥ
シリュウは目線を外し
「そうねぇ知ってはいるけど、釣り合わない取引はごめんだね」
エリックはじっと見つめ
「恩を仇で返すなんて女帝がやることじゃねぇだろ」
会話の中、異常な緊張感を感じるリリア
「恩は返すけど、返し方まで決められる筋合いはないってことよ」
「……お分かり?」
エリックは交渉を続ける
「じゃあ報酬も払う……100万エトラでどうだ」
カン
銀皿に筒を叩きつけ
「ねぇエリック、なんで禁忌だと思う?」
「おかしいと思わないか?この一件は世界中誰でも知っている、なのに誰も真実を知らない、知ろうともしない…この意味が」
エリックは深く息を吐き
「誰かの意図が介入している……か」
シリュウは再び鉄筒を吸い始めた
「そう…しかも勇者は魔王征伐後、地位も権力も欲さなかった…なのに死んだ」
「誰かの恨みかそれともまだ見ぬ強者さんに殺されたか」
「あんたも同じ意見だと思っているんだがね」
エリックは息を飲み
「あぁ殺される理由がわからねぇ、それに殺されたならそいつはこの10年間何してたんだって事だよ…な」
「そうゆう事だ、もう解は出てる『知らぬが仏』そうだろ」
ドン
机に下ろされた拳 ひび割れる机
「だからなんですか」
「知らないじゃなくて目を背けてるだけでしょ!」
エリックはリリアの腕を掴み
「おい!よせっ……」
「ちょっと黙ってて!」
ダァン!!
振り払うとエリックは吹っ飛んだ
「何か知ってるなら教えてくださいよ、取引なんて小さいこと言わずにお互いに助け合えばいいじゃないですか!」
シリュウはリリアの目を見つめる
「……助け合いね」
立ち上がりリリアを見下ろす
「いい根性だお嬢さん」
リリアの顎を持ち
「いいことを教えてあげる、話術よりも情に訴える方が早い場合もある…けど」
「ここは違うの…だから条件を飲めば、先に情報を教えてあげる」
「条件…ええ望むところよ」
起き上がるエリック
「ちょっと待て、俺抜きで会話を進めるなそして俺を投げ飛ばすな」
「フフッ、覚悟を決めた子に水を差すの?」
「水を刺したのはそいつだ」
リリアはシリュウを見つめ
「条件を先に言って、話はそれから」
「条件は一つ、今後いかなる場合も、私の味方に付くこと…以上」
リリアは唖然と
「……それだけ?」
「えぇそれだけの話、しかも書面諸々なしの口約束ってやつ…どう?」
「おい、よく考えろよリリア」
リリアは嬉しそうに
「それなら大丈夫…なんかもっとヤバめな条件かと思ったよ」
エリックは小声で
「十分やばいだろ」
「さぁ話を進めよう、私が知ってる勇者の死について」
席につき直しリリアは机を見つめる
「あのぉ…この机なんですけどぉ」
「あぁ気にしないで、取引相手様に不快な思いをさせたこちらの落ち度だから責任は私にあると思ってちょうだい」
「……すみません」
エリックは不満げに
「早く教えろよ、早くこんな場所から逃げたいんですがね」
「そんなに言うならあなただけどっか行けば?」
「俺抜きで進む話なのか?」
「それはそこのお嬢さんが決めることだけれど」
「交渉に負けて、不機嫌になるなんてあなたらしくもない」
二人の会話を聞き急ぎリリアが割り込む
「えぇとエリックも私の依頼者だから一緒に聞いてほしい…な」
エリックは頷きシリュウはクスッと笑う
「じゃあ簡潔にいきましょう、私の知っている情報は二つ」
「一つめは彼には仲間がいた、しかも魔王征伐後も交流があった」
二人は驚き
「仲間!聞いたことない…」
「まぁ最後まで聞きな、その仲間はなぜか伝記にも書物にも記載がない…」
「情報によると人数は3人、それぞれ当時最強の勇者に引けを取らない力を有していた」
「しかも3人はそれぞれバラバラの国に帰った」
「それぞれ『アトロス帝国』『ヘリウ王国』『ハイトス共和国』」
「これが知ってる一つめの情報だよ」
唖然する二人
「どこでこんな情報を仕入れてんだよ」
「王国の諜報局にもそんな情報なかったのに」
シリュウはニヤリと
「まあアングラの世界は隅まで行くと掘り出しもんがあるんだよ」
「っと2つ目の情報は、『勇者の手記』がこのアレスティアにあるって噂だ」
「なんでも今度開かれる闇市場に売り出されるらしい」
エリックは疑うように
「今度っていつだよ」
「3日後、観光区の遊園地『エルブ・プレジャー』の地下で闇市が行われる」
「そこで提案なんだが私達の代わりに出席してみないかい?」
驚く二人
「えっ!こっちとしても願ってもないことだが……いいのか?」
(いやでもこいつが譲るってことは何かあるはずここは慎重に……)
「いやちょっとま……」
エリックの左が慌ただしく
「ぜひいきます、いかせてください!」
シリュウはニヤつき
「じゃ決まりね」
「……もう勝手にしてくれ」




