43話 潜入
帝英博物館屋上
三角窓が並ぶ屋上に黒くなびくマントが1人
「現場に着いたよ」
リリアの耳にエリックお手製の魔石ピアスが付けられている
「よし、それじゃあ南から4つめの窓から入ってくれ」
「警備兵は1階に4人、2階に6人巡回してる」
「本来なら魔術感知を解く所から始めるがお前なら1階制御室にある防御壁を解除して2階に直行だ」
「了解、これより作戦を開始する」
「頑張ってくださいリリア」
「俺らは博物館北東に隠れてるからなんかあったらすぐ知らせてくれよ」
「うん」
しゅた
窓からおりると天井に貼られている鉄骨を渡る
下を見るリリア
通路には1人の巡回兵、各部屋に1人ずつ警邏している
カツカツ
タッ
鉄骨を渡り階段まえに降りる
「階段に向かう、でも……なんかそこまで厳重じゃないみたい」
エリック
「気ぃ抜くなよ、そう思わせといて赤の部屋で待ち伏せがあるかもしれない」
「そうだね…これから制御室に行く」
はっ!
階段を登る巡回兵
リリアは急ぎ階段横のトイレに隠れる
(ここで無闇に魔術は使いたくないな…)
巡回兵
「こちら異常なし、2階も異常なしだそうです」
「まもなく予定の時刻なので警備兵を「勇者の胸当て」に集中させます」
巡回兵同士は手信号でやり取りし報告役だけ言葉を発する
「今……勇者の胸当てって……」
「どうしたリリア」
「今、警備兵から…今回狙われてんの勇者の胸当てだって」
「ほう…それはやばいかもな」
「やばいって…注意が逸れるならいいことじゃ…」
「まぁ怪盗が正直者ならな…」
「そう言って本当の狙いは別にあるなんてよくある事だろ」
「まぁ確かに…」
「とりあえずお前の長所を活かせ」
「こっちは防御壁の解除だけで全てが終わる、奴らが現れる前に帰れればそいつらの目的なんてどうでもいい」
「そうだね」
階段の手すりからワイヤーを垂らし1階へと侵入する
展示品の影に隠れ奥の大扉へと向かう
大扉にはロックがかかっているがエリック愛用の魔道具で開錠する
中に入り右手に通路、そこからはリリアの魔術で気配を悟られる事なく制御室へ走る
――帝英博物館 制御室――
「着いたよ」
「じゃあ、その部屋に座ってるやつをビビっと気絶させてくれ」
「できるだけ首元を狙えよ」
リリアは空間からこれまたエリック愛用の魔道具を取り出す
「これで本当に気絶するの?」
「間違いない、俺も何回も使ってるから安心してくれ」
「何回もって……」
「ふふふ」
鼻歌を歌う警備兵
目の前にはモニターが10枚ありそれぞれ博物館内を映し出している
「異常っはな〜し〜♪」
「ふふ〜ーふふじゃおじゃいおあいだ」
バタ
倒れる警備兵
「本当に死んでないのこれ?」
「まぁ当たりどころによる」
「それより、なんかいっぱいボタンあるだろ」
「うん、気持ち悪いくらい」
「その右上くらいに言った道具させそうな所あるか?」
ボタンの集合体を見るリリア
う〜ん
1つの枠の中に四つの穴が空いている
「見つけた…かも」
「そこに刺してみろ」
う〜ん
疑問を持ちながら言われた通りにさす
えい
ガチャ
ピーピピピピ
ギュン
さした魔道具が光を点滅させ音が鳴る
「めっちゃ光ってるんですけど」
「何色に光ってる?」
「え〜緑」
「よし、それで解除成功だ、2階に行って帰ってこい」
「もう終わったの?」
「あぁ、っとその前にモニターから2階をみてみてくれ」
「侵入者がいるかもしれん」
モニターを見るリリア
「誰もいない」
来た道を戻るリリア
「最初からこれで全員気絶させればよかったんじゃない?」
「そうしたら連絡が急に途絶えて増援とか逆に面倒になる」
「それに制御室は1時間交代だからそいつだけで済むに越したことはない」
「へー」
「ちょっと待って」
リリアが異変に気付く
(1階の巡回兵が見当たらない)
「1階の巡回兵が見当たらない」
「ヒヨルとアンス…外から何か見えたか?」
「いえ何もみてません」
「音一つない、もちろん誰かが侵入してもない」
「そうか…リリア巡回兵の中に紛れてるかもしれん」
「その場合戦いに巻き込まれる可能性がある」
「わかってるよ、昨日何回も聞いたから」
「要は魔石とって帰る」
「その中でイレギュラーがあれば安全を考慮して最大限の戦果で帰るでしょ?」
「私の場合、最悪姿をくらませればいいんだから平気平気」
「大丈夫か本当に」
「リリアがそういうなら信じてあげて欲しいですエリックさん」
「……わかった、無理はすんなよ」
「ヒヨルとアンスも準備を怠るなよ」
「任せといて」
行きのワイヤーを引っ張ると戻るように2階へと移動する
階段に足をつく
ボワァン
リリアは武器を取り出す
異様な気配は2階から漏れ出ている
(なんだ、この気味悪い気配……)
2階通路を壁越しで見ようとした時
ダァァァン!
「うわぁ!」
リリアの目の前に何かが投げ込まれ爆風で吹き飛ばされる
ダダダダダダダダダ
ガフッ
階段を転げ落ち床に叩きつけられる
「今の音はなんだ…大丈夫か!」
「だい…じょうぶ、ただ転んだだけだから」
リリアが顔を上げると階段から見下ろす異形の存在
月光が差し込み異形がライトアップされる
起き上がるリリア
「ふぅ……随分とすごい顔してるね」
「あんた」
異形は顔上部に包帯がぐるぐる巻きにされ口が裂け肉が見えている
上半身裸で縫い目で所々皮膚が変色している
腹巻きの上にオレンジ色の作業着を着ていて返り血がベッタリとついている
「なぁ……あんた」
異形が声をあげる
「……なに」
返答するか迷ったが情報を得るため返す
「真紅のアミュレットってどこにあるか知ってるか?」
(喋れる……)
「どこってあなたは知らないの…それともわざと聞いてる?」
「パパにとってこいって言われたんだけどさ」
「ここら辺にあるって言われたけどぼくさ…そのしんくってやつ何かわからないんだよ」
「でもさパパにがっかりしてほしくなくてさ、わかるって言っちゃったんだよ」
「あんたもわかるだろ、こう…わかんないのにわかるって言っちゃう時がさ」
「みんなに聞いても知らないっていうからさ……殺しちゃうんだよ…わかるでしょ?」
(こいつ……子供みたいにベラベラ喋る……ここは)
「わかった、私が教えてあげるよ」
「えぇ!ほんとに!」
異形は顔に似合わずテンションが上がる
「えぇ、本当よ…教えてあげるからさ私の質問にも答えてくれない?」
「いいよいいよ!」
「じゃあ、あなたのパパって………誰?」
ガクッ
異形は体を一段落とす
両手をぶらつかせる異形
あぁぁぁぁ
一定の音程でうなだれる異形
開いた口から涎のようなものが垂れる
「あぁ…そうだった、パパに教えてもらったこと、忘れるとこだったよ」
がしっ
両手で顔の包帯を掴む
ビリビリビリィ!
包帯の下にはただれた皮膚に埋め込まれた魔石
「「良い人は必ず悪いこと考えてるってぇさぁぁぁぁ!!」」
「だからそういうやつを殺すために僕は強くなったんだった!」
ブワァン!
両手を広げると5本あった指が全て刃に変わっていた
「もういいやここにあるやつ全部持って帰ろう」
ビュン!!
異形は勢いよく飛び出してリリアに襲いかかる
リリアも剣を構える
「いつになったらまともな奴と戦えるのかなぁ!」
ガキィィィィン!
剣が混じり合い戦いが始まる




