39話 改革
4番通り 鍛冶屋「ギル」
店内には武器や防具が陳列されている
カウンターには三角頭巾を被り紺色のエプロン着ている金髪と黒髪2人の姿
「ねぇこんな堂々としてていいのかな?」
「大丈夫ですよ、エリックさんがここにいろって言ってましたもん」
「それにリリアは髪型変えてるんですからバレっこないです」
リリアの髪型は二つを束ねるおさげになっていた
プラスしてエリックがメガネをつけるよう指示していた
「あんたどんだけ髪型変えることに信頼を置いてるのよ」
「まぁ、正直まだ腑に落ちない点がいくつかあるけどね」
―――昨日―――
「鍛冶屋ってできるわけないでしょ!」
「あんたバカなの!」
興奮する2人
「そうですよ!」
「私熱いところにいられないんですよ!」
(そこなのか!)
アンスは言おうとしたが心に留める
「まぁ落ち着け2人とも」
「鍛冶屋って言っても、店番するだけだから」
「「店番?」」
「そう、客が来たら接客する、商品持ってきたら会計する」
「ただそれだけじゃないか」
ドドド
2人は接近する
「「接客なめんじゃなーーーーーーーい!!!」」
―――現在―――
「あの男はどこまで考えてるのか本当にわからない」
「ははは、でもいいじゃないですか」
「こうやってるのも貴重な経験ですよ」
「それにアンスも私たちのために武器を作ってくれるそうですし」
「武器ねぇ……」
カランカラン
「「いらっしゃいませ〜」」
店には武器や防具を買う人がちらほら現れる
2人はそつなくこなし業務を遂行する
「「ありがとうございましたぁ」」
カランカラン
入ってきたのは男女3人組
ガタイがいい男、ローブを羽織る女、背が高い男
3人は共に腰に剣や槍といった武器を下げている
物色する3人を眺めるリリア
(あんま強そうじゃない……巡回兵かな)
男がカウンターに近寄る
「なぁここには並んでる以外の武器はあるか?」
リリア
「もうしわけありません、当店には陳列されているもの以外は売るなと言われていますので」
………
「ですが、誰かの紹介なら話は別と言っていました」
「そうか……ミネリアの紹介できたって言ってくれないか?」
(きた!)
―――昨晩―――
「店番ならいいけど顔出したまんまでいいの?」
「どこの世界にガチガチ仮面の店員がいんだよ」
「それに顔は覚えてもらっとけ」
「いいの?」
「あぁ、ここの人らはどうも外国の情報に乏しいらしい」
「昨日、8番通りと1番通りに行ったけど聞く人聞く人外の世界には興味ないらしい」
「流石に1番から2番通りで顔丸出しはあれだが4番ならどうってこともない」
「エリックさん、昨日1番通りに行ってたんですか?」
「どうやって入ったんですか?あそこ通行書が必要って……」
「おいおいもう忘れたのか」
「全てには裏があるんだよ、この世界は」
「あぁ……忘れてました」
「ぶん殴るぞお前」
「それに明日の店番にも裏がある」
「「裏?」」
「いいか、こう言ってきた客が来たら…………」
―――――――――――――――――――――――――――
「承りました」
「ミネリア様のご紹介ですね…只今確認いたしますのでお待ちください」
リリアは裏へと回る
裏の工房には4人の男女が座っている
左からエリック、大男、べネス、色女の順で座っている
「ねぇきたよ、ミネリアって人から紹介されたって」
「おう、シャンザさんよろしく頼みます」
シャンザと呼ばれたガタイが大きく凛々しい顔をした女が立ち上がる
「ドォれ、骨があるやつだといいんだがね」
リリアとシャンザは店内へと戻る
「エリックさん、今の所改革軍の総員は何名ですか」
「慌てんなべネス、安易に主格の情報を口に出すな」
「あぁ!すみません」
「はっは、きびいしですなエリックどのは」
顎髭を結ぶ太った男
声は太くおっとりとしている
「いやいや、ウィーズさんも気をつけてくださいよ」
「あいや、わかっていますとも」
「にしてもエリックどのが加わり数日でここまで改革軍が大きく前進するとは頭が上がらないですな……はっはっは」
「シャンザも大いに喜んでしましたぞ」
「何言ってんですか、みんな思いは一緒でしょ」
「帝国騎士にも反乱軍にも国は預けれない…それで作った第三勢力なんでしょう?」
「皆が手をとり明日をより良くなるよう努力する」
「それは全帝民が望んでいる未来ですよ」
「ただ声に出せないだけで思いは抱いている」
「俺がいなくても誰かが背を押せばみんな進める力はあります」
「にしてもエリックさんが急に第三勢力を探すって言った時は驚きましたよ」
「はっは、我々もまさか帝民以外に正体がバレると思わなかった」
「これはエリックどのがなせる業ですな」
「いやいや、ただのかんですよ」
「それにアンスが割り込んでくれなかったら気づくのが大幅に遅れて」
「この選択肢も無くなってましたよ」
「ほう……シャンザが帰ってくるまでの間、お話いただけるかな?」
「えぇ」
最初は反乱軍に潜入して好機を伺おうと思ってました
正直反乱軍のクズさも知っていましたし、仲間のふりしてクーデターの中「帝国」と「反乱軍」の両方から情報を引っこ抜いて、会う人に会って帰ろうとしてました
ですがアンスが来たことによって反乱軍が「やはり罠だったか」って言ったんです
その前に私はボス宛に「仲間に入るための材料が揃ったから会って欲しい」と送ってたんです
そこで「やはり罠」って言葉は前にも似たようなことがあったんじゃないかと思ったんです
暗号は結構入手しやすく誰でも連絡が取れるような感じだったし
それに帝国騎士団が罠を失敗させていたなら……それはもう内戦の合図
「なるほど……ではエリックどのは騎士団以外で反乱軍を打倒する組織があるとそこで思ったわけですな?」
「はい、なので反乱軍を目障りに思っていて尚且つ帝国にも疑念を抱いている確率が高い一番通りに行ったら……」
「シャンザに出会ったと……」
「それも狙ってのことかな?」
「いえいえ、ただ1番通りには内に想いを抱いてる人がいると思っただけです」
「この国では、帝国に近づけば近づく程鍛冶のスキルが落ちている気がしたので」
グググ
ウィーズが小刻みに体をふるわす
べネスは冷や汗をかく
(まずい、ウィーズさん怒ってる…早く撤回してエリックさん!)
ぶっ
「ぶっわぁはははははははははは」
大声で笑うウィーズ
え!
驚くべネス
「わかっとるなエリックどのは!」
「そうじゃそうとも帝国の奴らはクズだかバカじゃなかったって話だ」
追いつかないべネス
(……??)
「のぉエリックどの……なぜこの国は優秀な鍛冶屋を………迫害していると思う?」
「外にやるでもなく捕まえたり秘密裏に殺して回るようなめんどくさいマネをなぜする?」
考えるエリック
それは……
「流出を防ぐため………ですかね」
「そう……それが全てだとわしも思う」
「奴らは軍事産業から乗り換える船を見つけた途端に」
「わしらを海へ落としたんじゃ」
「なるほど、技術が流出すれば軍事大国の名が廃れ、他の国に利益が移る……か」
「そう…しかも奴らは鍛冶屋の1番大事な部品を知っておった」
「部品………ね」
エリックの顔は暗くなる
「鍛冶屋で一番大事な部品は、優秀な魔石でも、完備された工房でもない」
「鍛え上げられた職人だということに」
ウィーズは涙目になる
「ここ数年は生きた心地がしなかった」
「工房はあるがまるで違う、叩けど叩けど完成しない失敗作」
………………………………………
「ゔぅ……もうわしは職人じゃ無くなってしもうたんじゃ」
「あいつらがいない工房なぞ、ただの廃墟にしか見えん」
「叩くハンマー、熱を帯びる魔石、布に織り交ぜる魔石回廊…どれも空っぽの偽物」
「わかってる、とうにわしの中にある火は消えてしもうてるのは」
「ウィーズ……さん」
「たのむ……エリック……どうか」
「どうかこの錆れた国を鍛え直してくれないか」
「わしにはもう、何をすればいいかわからない」
静かに懇願するウィーズ
正面を向いているが肩は震えて拳は強く握られている
トントン
ウィーズの肩を叩くエリック
「落ち着けよウィーズ」
「寝不足だから感情が不安定になんだよ」
ハンカチを差し出すエリック
「ゔぅ……すまん」
「大丈夫……安心して眠れるよう」
「俺たちが居心地の良い場所作ってやるから」
「エリックぅぅぅぅ」
ぎゅぅぅ
エリックに抱きつくウィーズ
「うぅ……くる……し………ぬ」
バシン!
「何やってんだい!」
ウィーズの頭を叩くシャンザ
「エリックが死んだら私があんたを殺すからね!」
がは!
急いで両手を離す
「あぁすまんエリックどの……大丈夫か!」
白目を剥くエリック
「おう……大丈夫だ……意識がとーーぶ」
「ほら首かしな」
シャンザはエリックの首を抱く
ぽわ〜
シャンザの手から暖かい光が溢れる
「私が得意な治癒魔術さ……気持ちいいだろ?」
エリックの顔に生気が戻る
「………は!」
「ここは……」
「じゃ私は2日後のために準備しとくよ」
「あ……あぁ頼みます」
バタ
床に座るエリック
「はぁ……今日は俺達いますけど明日はウィーズさんに任せますからね」
「この改革軍入隊の暗号…忘れないでくださいね」
「あぁもちろん……忘れたりせん!」
その後も入隊希望者は後をたたなかった
―――Close「閉店」―――
店内から裏へと戻る2人
「はぁあ、疲れた」
「こんなに喋り疲れたのは久しぶりですぅ」
「お疲れ、ほらこれ」
水を差し出すエリック
「お、気が効くじゃない」
「ありがとうございます」
ごくごく
ぷはぁ
「これ普通の水じゃないわね」
「気づいてくれたか…そう!」
「水に塩分やその他栄養が配合された疲れが吹っ飛ぶ特製ドリンク」
「エリックさんってほんと物知りですよね」
「そうね、さっきいた2人も紹介が雑だったし」
「そうだな…それも含め明日の行動を確認するか」
………………
「どうした2人とも黙って」
「いや、なんかいつもと顔……というか雰囲気が違うっていうか……ね?」
「そうですね……いつもはふざけた顔なのに…今は落ち着いてる顔です」
(本当にひどいねヒヨルさんは)
「いいだろそんなこと、宿に戻るぞ」
「お前達にもそろそろ本格的に今回の殺さなきゃいけない相手を確認してもらう」
2人の顔が静まる
「……わかった」
「了解しました」




