38話 1人
アンス
「師匠が突然いなくなったのは話したよな?」
「あぁ」
「それから数日後からの話だ」
師匠がいなくなって数日残された俺たちは託された工房を守るために魔武具を作ってた
半年はお客さんも来てこれから工房を大きくしようとみんなで奮闘してたんだ
ある日、途端にお客さんが減っていった
みんなは魔王がいなくなって需要がなくなったと言うけど俺はそうは思わなかった
師匠がいる時には騎士団の結構お偉いさんも来てたしアトロス帝国の魔武具貿易にも結構な品数出してた
それに最初は師匠の名前で製造依頼が来てたけどその時には他の鍛冶職人にも指名が入るほど「ガレアス工房」は活気付いてた
事件は突然起きた
仲間の1人に改造魔武器製造の罪の容疑がかかったんだ
もちろん抗議文を送ったが審議会からは無回答と言われ取り合ってくれなかった
その1週間後別の仲間が7番通りの裏路地で仲間の一人の死体が見つかった
死体跡から酷い拷問がされていることがわかった
その1週間後にはお得意のお客さんが使っていた魔武器がクエスト中に暴走して自爆したと連絡を受けた
「魔武器の暴走か……誰が作ったのか聞いたのか?」
「あぁ聞いたさ……でもレキュルの……あいつの顔を見たけど嘘をついてるようには思えなかった」
「思いたくなかったの間違いじゃねぇのか」
違う!
「それだけは完全に言い切れる…あいつはそんな軽い鍛冶屋じゃない」
「一個一個に魂を込める…それを違えるなら死んだ方がいいと思うような…」
「バカな集団だからな「ガレアス」は」
「悪かったよ」
「別にお前らの信条をバカにしたわけじゃない」
「いや…いいさ」
「話の流れ的に思うのは仕方がない」
その件を受けてレキュルは罪人として帝城に召喚されるはずだった
「はずだった?」
その前夜に俺たちで国外に逃した
「へぇ、なかなか度胸があるな」
「で……成功したのか?」
いや、成功はしたが俺たちだけだったら失敗に終わってたろうな
帝都から抜け出すにも国外に行くにも国境魔石を無力化できる人物が必要だった
そこで俺たちは聞ける情報屋片っ端から情報を集めた
そこで協力してくれたのが……詳しくは言えねぇが強い人たちが協力してくれたんだ
見返りにシグナリアの武具を4セット欲しいと言われて…後がなく渡した
「不平等な取引だな」
「そうだな…でも後がないし仲間の危険を回避できるならと」
気分を良くしたのか追加の情報で
「師匠と兄弟子の生死はまだ決まってない」
「覚悟があるなら行ってみればいい」
そう言い残して消えてった
その日を境にガレアス工房は解散し
今となっては仲間達がどこにいるかわからない
平穏に暮らしてたらいいなと祈るばかりだよ
「……これが隠してたっていうか言ってなかった情報の全部な」
「そうか……協力者についてはいってくれないのか?」
「すまない」
「それはいくらエリックでも無理だな」
「わかった……ありがとな話してくれて」
「多分これを聞いたら迷惑かかるんじゃないかって思ったら」
「どうも言うタイミングが掴めなくてさ」
「いいさタイミングなんて……1ついいか」
「あぁ」
「聞いた半年前になんで帝城に行かなかったんだ?」
「仲間を国外逃亡させるくらい度胸があるなら……行っても不思議はないだろ」
はは
「そうだな……みんなに話してたら……な」
「て言うことは……」
「そう…あの日師匠の情報を聞いた日俺は……みんなに明かさずに解散したんだ」
「度胸のない俺は…ただ隠すことで…いや隠すことしかできなかった」
「みんなのためか?」
「違う……」
「師匠が出て行った日、師匠は最期にこう言ったんだ」
――絶対にわたしを探そうとするな、不幸は全て持っていく――
「あの日、師匠はすごく穏やかな笑顔でそういった」
「俺はあの時、師匠が何を言いたかったのか……わかってなかった」
「師匠はガレアス工房への危機を一手に引き受けたって」
「なるほど、改造疑惑も拷問もガレンへの見せしめか」
「ガレンが稼いだ死へのカウントダウン……てことか」
「俺はそれを考えただけで…師匠を探そうってことより」
「みんなを騙してでも」
「一刻も早くガレアス工房からみんなを避難させようと決めた」
エリックは水を飲む
「騙してでも……ねぇ」
「もちろん自分自身が師匠や兄弟子を見捨てたってことはわかってる」
「だから、お前らを見た時協力できればあの日の後悔をやり直せるかなって……」
アンスはうつむく
「まぁ浅い考えだよな…自分でも聞いててイラっとくるし」
「まぁそれなら取り返せばいいだけの話だ」
「……て言うかお前は捕まらなかったのか今まで?」
「あぁ、当時俺は鍛冶職人って師匠から言われてなかったし」
「そもそもシグナリアどころか普通の魔石も加工できなかったし」
カタン
フォークを落とす
「え……てことはあの工房にあった魔武具は師匠とか仲間のものだったのか」
「てっきりお前がつく……」
あれは俺が作ったやつだよ
エリック
「半年で魔石加工からシグナリアまで行ったのか?」
「まぁそうだな、師匠とか皆のを直で見た記憶を頼りにだから探り探りだったけどな」
「そうか……すごいなお前は」
(いくら才があっても半年で魔石加工……しかもシグナリアも)
(魔石加工って言ったら、基礎に10年、売るのに5年かかるって聞いた……けど)
エリックはアンスをまじまじと見る
(こいつ……何者だ)
「これが、俺の知ってる全てだ」
「……こう言っちゃあれだが」
「別にお前にとってはなんもなかったろ?」
「いや……これでこの国がどうなってるのか」
「大方の見当はつく」
「へぇ、すごいな」
「よし、もう30分くらい経ったろ」
「宿に戻るぞ」
「おう」
部屋に戻ると3人は談笑していた
「あっおかえり」
「お帰りなさい」
「説明は終わったのかべネス」
「はい、言われた通りしっかりと説明しました」
「「言われた通り??」」
疑問に思うリリアとヒヨル
「よし、じゃあせつ……」
ぎゅるるるるるる
部屋に鳴り響く腹の音
赤面するリリア
「…ごめん、お腹減った」
「お前ら3人は朝何も食ってなかったのか?」
アンス
「いや、結構食ってたぞ……特にリリア」
「……はぁ」
「何か頼むかリリア?」
「じゃあ……ビーフセット」
少し黙るエリック
「……まぁいいけど」
「ついでに他のやつも注文するから好きに食べながらやるか」
べネス
「私も食べていいんですか」
「食いたければ食えばいい」
「……ありがとうございます!」
机に運ばれた食べ物が並び
各々食いたいものを食す
「んで、あんたからの説明を聞きにきたんだけど」
「あぁそうだな」
「てか、べネスの事理解できたか?」
「もううんざりするほど理解できましたよ」
「ね?リリア」
「数十分しか話してないのに何日も話してる気分」
「そうか」
「じゃあまず最初にこれから起こるであろうことを言っとく」
「エリックさんて……」
「預言者かなんかなんですか?」
ふふふ
「いいかヒヨル、預言じゃなくても未来は予測できんだよ」
「それは……魔術ですか?」
「違うここだよここ」
エリックは頭を指し示す
「何度も言うが情報があればあるだけ真実に近づける」
「今回は情報が思った以上に揃ってるから」
「それを元に正確な未来のパターンを分析して割り出せる」
「ふ〜ん」
エリックの熱弁より肉を食うリリア
ゔゔん
「まぁ可能性が高い最悪な状況を徐々に潰してく感じだな」
「最悪な状況ってなんだエリック」
「それって師匠に関係があんのか?」
「ある」
「まぁその最悪な未来では……」
「この中の3人は死んで2人は悪い奴らに捕まる…てとこだな」
え………
「その最悪ってそんななの?」
「あぁ、でも今現時点での最悪ってだけだから事態は好転も逆転もする」
………………
「そこで!」
「今から言うことをやってほしい」
肉をちぎり冷めた目で見るリリア
「でた謎テンション」
「この国ではなぜか軍事産業の核となる鍛冶屋の職人が不当に罰せられている」
「それは軍事産業から別の産業へとチェンジする国の意向だと感じ取れる」
「そもそも軍事産業でまかなえるはずの人まで8番通りにおいやってるの見ると」
「この国では人命よりも優先している国家事業が存在する」
アンスが立ち上がる
「エリック!」
「それ……本当なのか…」
「あぁ、確実にそうだと言える」
「俺ら鍛冶屋がどれだけ国のために働いたと……」
「あいつら俺らなしじゃ戦えないくせに…」
拳を握る
「そこが本題だ」
え?
「今までは魔武具の使用は戦況をひっくり返す要因となっていたが…」
「今ではその常識が要らなくなってきてる」
はい!
手をあげるヒヨル
「それって勇者様が魔王を征伐したことが関係あるのでしょうか?」
「それもあるが、それだけじゃ説明がつかない」
「魔王征伐後も残党だったり国家間のいざこざで悲しいことに争いは尽きないからな」
「そっから導き出される答えは……」
「魔武具に変わる新たな戦力…」
アンスがつぶやく
「そう言うことだと俺は考えてる」
「多分それがこの国で行われている非人道的な実験だな」
「……それってかなりヤバいんじゃないの」
「こんな呑気に食べてる場合じゃ……」
「だから今日ここにお前たちを集めたんだよ」
「しかも反乱軍は1週間後じゃなくて3日後にクーデターを起こすらしい」
え!
アンスは驚く
「でも、店に来てた奴らは……嘘だったのか」
「あいつらはいろんな場所でそう言ってるらしい」
「あんたはどうやって知ったのよ」
……………
「まぁ、人にはあまり言えない方法でな」
べネスを見るエリック
「は……はい、そうですね」
「私もあれだけは受けたくないです」
「まぁいいだろそんな話は」
「と言うことでリリアとヒヨルには鍛冶屋になってもらいます」
………………はい?




