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勇者が死んだ罪と罰  作者: 吉
第2章  勇者の鍛冶屋
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36話  鍛冶屋

アトロス帝国8番通り

魔王征伐後軍事産業が落ち着き国の利益が大幅に減少した際、帝国は多くの失業者を生んだ

当時8番通りは格安で新人鍛冶屋の武具が売買されており賑わっていたが、帝国の軍事産業規模縮小に伴い、才ある鍛冶屋は1、2、3番通りへと移住し8番通りは失業者と税金を払えない者が住み着くスラムと化していた


―――8番通り入り口―――


(ここが8番通り……アレスティアのスラムと一緒かそれ以上か)

エリックはマントと仮面をつけ道を歩く

周りの建物はガラスが割れ人が住める場所ではなくなっている


エリックは道に倒れている痩せ細った男の前に立つ

「あんた…生きてるか?」

男は目を開けるために力を振り絞る

「あ……お………で」


男に目線を合わせるエリック

周りを見る

「なぁこれやるから…協力してくんねぇか」

エリックの手にはパン

ハウ!!

むしゃむしゃ

男は条件反射でパンを奪いむさぼ

「……ふぅ」

「ほらこれも飲みな」

水を差し出す


ごくごく


「じゃあちょっと建物に入るか…ここじゃあ目立ちすぎる」

倒壊寸前の建物に入る二人

エリックは男に肩をかしトボトボ歩く


部屋の一室

木製で作られた椅子と机はヒビが入りほこりをかぶっている

「どうだ、喋れそうか?」


男は振り絞る声で

「はい………なんとか」


「じゃあ最初に自己紹介をしてくれないか」

「名前と………まぁ言えること全部ほしいな」

男は頷く

「私は…べネスと言います」

「ここにくる前は5番通りで鍛冶屋をしていました」

「ですがある日、帝国騎士団が私の工房で…改造魔道具を見つけたと…」


「改造魔道具ね……」

「改造にも種類がある…あんたは何を作ったんだ?」

とん

男は机に拳を置く

「違う……私は…私は何もやってない」

顔を抑えすすり泣く声で訴える

「あの日も依頼者の防具を作ってただけで……改造なんて作り方もわからないんだ」

「それ言ったのか?騎士団に」

「えぇ、……そのまま収監所に連行されましたがね」

「それから数日経つと前科一犯で帝都に釈放されました」

「……ですが、前にいた工房どころか鍛冶屋の資格すら剥奪され…」

「反乱軍は……入りたくなかったので………盗みか強奪を……と」


「そうか……」

「一つお聞きしてもよろしいですか?」

「ん?なんだ」

「なぜ私に慈悲を下さるのですか?」

「こんな今にも死にそうな私なんかに…」


考えるエリック

「俺を見てたのがあんただけだったからかな」


「………見てた?」


「他の奴らは下を向いてただけ、でもあんたは俺を睨んでたろ」

「……すみません、意識が朦朧もうろうとしていまして」


「それにここは反乱軍の住処になってることから、道に捨てられてるやつは反乱軍に見捨てられたかそもそも反乱軍に入ろうとしないやつだけ」

「見捨てられたやつは絶望で先が見えないが、自ら拒否できるやつは生に実直なやつかなと思ってあんたにかけてみたって理由」

「不満か?」


「いえいえ不満など」

「短い命ですがお役に立てれば潔く死ねます」

頭を下げるべネス


「何言ってんだよ」

「え?」

「短い命なんて勝手に決めんなよ」


「でっですが……私は前科がある身、鍛冶屋としても帝民としても…もう諦めはついてますので」

ふん!

エリックは鼻でわらう

「何が諦めだ、そんなの考えるのを放棄する言い訳だ」


「じゃあ……どうすればいいんですか」

「工房も人権さえもないこの私に……一体何を」


「簡単だ」

「………?」


「生きてるうちに全て取り返せばいい」

「そのために考え行動し自分の全部を投げ打てばいい」

「誰になんと言われようとも自分の信じたものに死ぬまで従えばいい」


「自分の……信じたもの」


「そうだ、環境や時代が変わっても信念が変わらなければ自分を見失わずに済む」

「お前は奪われた時何を感じた、何を抱いたんだ…聞かせてくれ」


「私は……」

グッ

べネスは拳を握る

「私はあの時、恐怖で言えなかった事を騎士団に…あのバカどもに言ってやりたい!」

「家族にも、工房の仲間たちにも私の言葉で全てを取り戻したい!」

「だから………慈悲を受けた身でこんなこと言うのは非常識で愚かなのはわかっているけど!」


べネスは立ち上がり

「エリックさん」

「私に取り戻す機会を作る手伝いをお願いしたい!」

頭を下げるべネス


ぽん

肩を叩くエリック

「いいね、その言葉」

「気が済むまで手伝わせてもらうよべネス」


「うぐっ………ありがとう」

「よし!じゃあ早速その足がかりを見つけに行こうか!」


「え…あっはい!」

「ちなみにどこへ行かれる気ですか?」


一番通り


「…………はい?」




アトロス帝国 6番通り

リリアとヒヨルはアンスの案内の元とある建物の地下空間へと来ていた


「ここなら多少の荒事でもバレないで済むと思うぜ」


「へぇ地下にこんな空間があるなんて思ってもみなかったわ」

「ここってどんな場所なんですか?」


「あぁここは師匠が作った魔武器の試運転のために作った空間でな」

「外壁には外から魔力探知を阻害する材質+対魔術防護壁が施されてんだ」



辺りを見渡す二人

「へぇ、これで思いっきり試せるってわけね」

「いいですかリリア、ちゃんと順序は守ってやることですよ」

「わかってるって、ほんと心配性なんだから」

アンスは渡された四角い箱を手に持つ

「じゃ入り口閉じるから終わったらディファンに連絡くれ」

「うん、わかった」

ヒヨルは四角い箱を持つ

「でもディファンって箱に入れちゃうと割れないんですね」

「そうみたいね、でも3個もあれば足りるでしょ」

「エリックと私たち、アンスが持ってれば情報は全員に行き渡るし」


「それもそうですね」

「じゃ早速始めますか、魔術開発を」


「うん、始めよう」


二人は武器を構えあい対する



夜が深まり二人はアンス工房へと帰宅する

アンスは夕飯を作り二人は椅子に座り待機する


「よし」

机に置かれた肉料理

「おぉ!美味しそう!」

歓喜するリリア

「すごいですよアンス!この肉にかかってるソースはなんですか匂い美味しそうです!」

ふん

自慢げなアンス

「まぁ俺は師匠がいた時もずっと料理番をしててな、ちと腕には自信があるんだ」

「ちなみにこれはレンス産の赤ワインと自家製のソースにクルシュア村の野菜に……」

「「いただきまーす」」

ばく

「う〜ん、おいひぃぃぃぃぃ!!」

食べ進める二人


「美味しいのは嬉しいんだが……」

「エリックがまだなんだが」

ごくん

「あいつのこと心配したって無駄よ無駄」


「そうですエリックさんの事を考えるくらいなら目の前の肉のことを考えます」

ははは

苦笑いのアンス

(これは信頼……だよな?)


ブゥゥゥゥゥ!!!


リリアとアンスのディファンが音をあげる

急いで取り出し魔力を込める


「どうしたの今美味しい料理を嗜んでる途中なんですけど」


「お前はくいしんぼうか」

「そんなことより聞いてくれ」

「そこに3人はいるのか」


「あぁいるぞエリック」


「それはよかった」

「ちょっと調べに区切りがついたから報告する」

「どうやらこの国は軍事産業を再興しようとしてるらしい」


「再興?」


「今この国は金策に苦しんでるがそれは軍事産業の衰退だけじゃなさそうなんだ」

「魔王がいなくなり魔武具の消費量が減ったとしても魔軍の残党や国家間のいざこざで需要はそこまで落ちてない……と調べた結果で明らかになった」


リリア

「じゃあこの国の貧困の加速は軍事産業の低迷が原因じゃないっての?」


「あぁ…だがそれを調べるためにはもうちょい調べる必要がある」

「……てことで予定よりちと早いが」

「明日正午、4番通りの「メルティカ」っていう宿に来てくれ」

「そこで今後の各人の作戦を決める」


アンス

「それはいいけど……お前は大丈夫なのか?」


「心配すんな、お前らこそ時間を守れよ」

―――――プツ

通信が途絶える


「エリックさんってやっぱり調べ物上手ですよね」


「何言ってんの、あいつは私の国では結構有名な情報屋なんだから」

「このくらいしてもらわないと依頼した意味がないでしょ」


「ははは……結構辛口だなリリアは」


「私は一般に優しいと思うけど?」


「ははは」

苦笑いするアンス

(エリックも苦労してんだな……)



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