35話 師匠
ごくごく
牛乳を飲むリリアとヒヨル
「おそいわね……あの人たち」
「なんでそんな他人行儀なんですか」
「あ!きまし………たぁ!」
おどろくヒヨル
「えっ……どうしたの」
二人の目の前には
アンスに介抱されているエリックの姿
「あぁ……いつの間にか隣で目を回してて」
「とりあえず……帰ろうかと」
トコトコ
ぐいっ
「もぉ…何してんのあんた、バカなの」
もう片方の肩を持つリリア
「う……るせぇ、もう寝かせてくれ」
「なんか弱ってますねエリックさん……珍しい」
ツンツン
顔をツンツンする
「…………うぅ」
がくっ
次の朝
エリックが目を覚ますと目の前は壁だった
起き上がると真ん中で仲良く寝ている二人
「ん〜むにゃむにゃ‥‥ふふ」
夢の中でも楽しそうなヒヨル
エリックは気づく
その部屋にアンスの姿はないことに
ガチャ
外へ出ると
「いで!」
アンスの足を踏んでいた
「あぁ悪い……何してんの?」
「んぁ……おはようエリック」
「何って……寝てんだよ」
(こいつ本当に床で寝たのかよ)
「昨日はすまなかったな…色々考えてたら頭が回ってた」
「ははっ、気にすんなよ」
「意外な一面が見れて嬉しかったぜ」
……………あっそ
エリックはアンスをまたぎテーブルへ向かう
「冷たくね」
ガタッ
椅子に対面で座る二人
「茶でも飲むか?」
「あぁ頼む」
キッチンへ行き茶を沸かす
アンス
「で…昨日は寝れたか?」
「お前はどうなんだよ…二人を意識しすぎて寝れなかったんじゃないか?」
「な!なんでそのことを!」
「……てか、お前が意識しなさすぎだろ」
「女の子と一緒に寝るとか……なぁ……だろ?」
「女の子ね……お前は戦うあいつらを見てないからそういえんだよ」
「まぁヒヨルはちょっとしか見てねぇがな」
え……
「そんなに怖いのか?」
かたっ
エリックの前に茶が置かれる
ズズー
「んまぁ……脳筋でとても女の子とはいえ……」
バシっ!
どん
メキ!
机にめり込むエリックの御尊顔
後ろには起きたばかりのリリア
「レディに向かってその言葉はないんじゃない?」
ビシ!
机に乗っているくせっ毛が指をさす
「それ!それだよ!寝起きの力じゃねぇんだよお前は」
「今のはエリックさんが悪いと思います」
後ろから顔を出すヒヨル
その光景を見てアンスはあることを感じ取る
(仲良いんだな)
もそ
エリックは顔を上げる
「……そんなことより、これからどうすんだよ」
「どうするって…何?」
「だからこれからアトロス帝国の内部事情をどう探るかって話」
「エリックさんはノープランですか?」
「まぁ、あったけどどっかの鍛冶屋に壊されて考える気が失せた」
「まぁまぁ、落ちついてくれよエリック」
肩を揉むアンス
「じゃあアンス、何かこの国の情報をくれないか」
「……多分俺、内部情報とかなんもしらいねぇけどいいのか?」
「ないよりかはマシだ」
「0から1より1から100の方が近い場合もあるからな」
う〜ん
考えるアンス
あっ………
「そういえば、この前魔防具作りにきた人が1週間後に大規模なクーデターを起こす…とかなんとか言ってたような」
「お前の情報の価値観が謎だ」
ヒヨル
「クーデターってなんですか?」
エリック
「まぁそうだな……簡単にいうと話せない国に対して暴力で政治を変えようとする動き…かな」
「ざっくりしすぎてる」
リリアからの一言
「細かく言っても伝わらなきゃ意味ないだろ」
「特にこのバカじゃ」
どん!
「誰がバカですかぁ!」
「リリアも何か言ってやってください!」
………………ごめん
「なんで謝るんですかぁ!」
パン
手を叩くエリック
「もういいか」
「じゃ、今後の予定だが……」
1週間後のクーデターに乗じて内部情報と囚人の捜索、両方を進める
「で……その1週間は何するの?」
「まぁ、お前とヒヨルは魔術の訓練でもしときな」
「もちろん段階を踏んでな」
リリアの目をみるエリック
「……わかってるわよ」
「で、エリックさんは何するんですか?」
「もしかしたらおサボりさんですか?」
「俺はこの国にある噂を片っ端から調べ上げる」
「それに囚人については大方の情報は手に入ったからな」
「さすがです!エリックさん!」
「いつの間に情報を手に入れたんですか」
くい
親指をアンスに向ける
「昨日浴場でこいつから聞いた」
……?
「俺なんか言ったっけ?」
「言ってたろ、勇者の鍛冶屋について」
「こいつらにも聞かせてやれよ」
コップに茶を入れながら話すアンス
「……まぁいいけど」
「昨日エリックにも話したが俺が鍛冶教わった師匠は勇者の武器防具を作った」
「ガレン・ギュッテルなんだ」
え…………
「でも……昨日もういないって……」
「そうですよ……いないって…」
戸惑うアンス
「あぁ、もう師匠は死んじまった」
二人はエリックの目をみる
「昨日あんたがのぼせたのって……これ聞いたから?」
「あぁそうだ」
「どうもこいつは情報に対する危機意識が皆無らしい」
「おい、なんだよさっきから」
「何かあるなら俺にも教えてくれよ」
わしゃわしゃ
髪をくしゃるエリック
「まぁ俺たちがきた理由は話したろ?」
「あぁこの国の情報調査だろ?」
「それに加えて……というかこっちがメインで」
「ある囚人に会って色々と情報を聞き出すっていう……な?」
首を振るリリアとヒヨル
「で……その囚人ってのが鍛冶屋ガレンっていう人なんだ」
………………
ガチャン!
持っていたティーポットが割れる
「ははは……うそ……じゃねぇよな」
「そんなくだらない嘘、俺はつかない…時間の無駄だからな」
その場でしゃがみ込むアンス
「そう…か…そうだった…のか」
「師匠は…生きて…たんだな」
ズズー
「まぁ収監されてる所は相当警備が厳重だろうがな」
「……まぁ人手が増えたらこちらとしても願ったり叶ったりなんだがな」
アンスは立ち上がる
「そんじゃあ、国…いや世界一の鍛冶職人はいらねぇか」
「なんでも手伝うぜ」
泣きながら笑う
ふっ
エリックは二人を見る
「どうだ二人とも、こいつにも手伝ってもらうか?」
「いいんじゃない、ちょうど武器のメンテナンスもしたかったし」
「そうですね、私も先輩になりたかったですし」
「じゃあ俺もこの作戦に……」
「待ってくれ」
割り込むエリック
「なんだよ…まだ何かあるのか?」
「いやそうじゃなくて…言う相手が間違ってる」
「相手?」
「俺はリリアに依頼されてる身、これに加わるなら依頼主であるリリアに言うべきだ」
「律儀なやつだなお前は」
「じゃあリリア、俺もこの作戦に加えてくれないか」
「頼む、もう1度師匠に会えるなら……協力させてくれ」
頭を下げるアンス
「頭あげてよアンス」
頭をあげると笑顔で手を差し出すリリア
「よろしくねアンス」
ぎゅ
「あぁこちらこそ、恩は百倍にして返すぜ」
「うんうんいいですね」
ニンマリするヒヨル
「で、師匠に何聞きたいんだみんなは?」
あ…………
「俺も言えることなら出し惜しみなしだぜ」
ちら
リリアはエリックを見る
はぁ…
「あぁそれだがな……シグナリアは現存する武具以外に存在するか……だな」
「へぇそうか………悪い俺じゃあ答えられそうにもない」
「謝ることはない、それを聞きに行くんだからな」
「それと…今日8番通りに行くから何か知ってたら教えてほしい」
「8番通りか……」
「あんまいい話は聞かねぇな」
「それに反乱軍のボスが統括してるから情報も外に来ないんだ」
「なるほど…」
「まぁいいさ、行けばわかることだし」
「私も一緒に行こうか?」
「いや、お前は1週間後に帝城に忍び込んでもらうからそれまで待機だ」
「ってことで、アンスこの二人に魔術訓練できそうな場所を案内してもらえるか?」
「あぁ……気をつけろよ」
「8番街はいわばはぐれ者の巣窟」
「昨日会った反乱軍のメンバーなんてうじゃうじゃいるし襲われる危険もある」
「まぁそん時はそん時だ」
エリックは席を立つ
「じゃあ何かあったらこれで連絡するから、肌身離さず持っとけよ」
エリックはポケットからディファンを取り出す
「じゃ、行ってくる」
「「「行ってらっしゃい」」」




