33話 投擲物
アトロス帝国 帝都「セクトポリス」
灰色の石レンガで統一された建物と道路
道ゆく人は商人や騎士、帝民の中に白衣を着た研究者も混じっている
所々に赤い旗が下がっておりアトロスの紋章が刻まれている
キョロキョロ
「目線が変だぞお前」
え!
「いやぁそうかな?」
「逆に怪しい」
帝都を歩く三人
初めに今夜泊まる宿を探しに帝都を練り歩く
「にしても王都とは随分と違いますね」
「こう…なんか……寂しい雰囲気です」
人はいるが顔が暗く、視線はやや下方に向いている
「まぁこの調子じゃ問題はなさそうだな…」
「ただ帝都も博物館とか展示会もあるようだ」
え!
「行きたい!」「行きたいです!」
興奮する二人
「まぁ、落ち着けよ」
キョロキョロ
「ちょっといいか」
「「?」」
「一回路地裏で話がある」
三人は人目がない路地裏に移動する
「何よ急に路地裏に来て」
メモ帳を見るエリック
「まぁ現地に来てみて思ったことを言おうかとな」
「確かに思ったより暗いというか怖いですね」
「お前は帝都にどんな事を期待してたんだよ」
「そうじゃなくて、巡回兵が少なすぎるんだよ」
「そうですか?」
「あぁ、帝国騎士団は世界最大規模を謳っている」
「今年の新人騎士はおよそ400人にものぼるそうだ」
「400人!」
思わず声をあげるリリア
「それは……多いんですか?」
「多すぎる……アレスティアでも騎士試験に合格したの40人だし」
「それでも豊作だって先生が言ってたくらいだし……」
パン
メモ帳を閉じるエリック
「まぁでも大多数は街の警邏任務とか雑用で終わる」
「帝都なんて通る奴の半数以上は騎士だって聞くし………」
「でも今通った感じ騎士さんより商人さんとか…帝民さんが多かったような」
「そう、考えられるとしたら……」
反乱だな
「反乱……」
「別に珍しい事じゃない、国家転覆を狙った反乱なんて昔なら日常光景だった…」
「昔ってあんた何歳よ」
「まぁお子様のお前には話からねぇだろうがな」
「殴るわよ」
ごめんなさい
「で、どうする?宿さがし続けるの?」
いや………
「まずは用を済ませてからだ」
カツンカツン
足音が聞こえる
バッ!
臨戦体制に入る二人
がし
「ちょっ何すんの」
リリアの帽子を深く被らせるエリック
「いいから、ギリギリまで下げとけ」
「合図するまで動くなよお前ら」
リリアとヒヨルは静かに頷く
手を振るエリック
「あの〜反乱軍に入りたいんですけど」
ガチャガチャ
遠くから武装したやつが降りてくる
マスクに帽子
両手には大きな魔導銃が下げられている
「暗号を送ってきたのはお前だな」
「誰から聞いた」
「なんでそんな無意味なこと聞くんですかね?」
カチャ
両手魔銃をエリックに向ける
「意味の有無はオレが決める…いいから言え」
両手をあげるエリック
「でも、敵ならもう君たちのアジトを攻撃して無力化してる」
「してないって事は」
「……だろ?」
「ハッタリには興味ないんだよ」
「ハッタリじゃない」
ニヤ
「ジェッソ工業地区A-13、6階建物にあるヴェトュスの絵画下……だろ」
「…………ハッタリじゃなく脅しという事か」
「そゆこと」
笑顔のエリック
沈黙
ヒュ
…………!
エリックの顔の真横を投擲物が通る
カキン!
それを弾く反乱者
「……ちっ、やはり罠だったか」
ドドドドド
銃を乱射する反乱者
ザッ!
エリックの前にヒヨル
「下がってください!」
刀を構える……
バッ!
「お嬢さんも下がりな」
ヒヨルの前に上裸の男
くるくるくる
両手にはトンカチ
ドン!
地面を叩く
「さぁ鍛えてやるよっ!!」
ゴォォォォ
地面が盛り上がり巨大な壁となる
キンキンキンキン
銃弾を弾く
「早く知らさなければ」
反乱者はその場を後にする
ゴゴゴゴ
壁は地面に戻る
かちゃ
トンカチを腰に戻す男
「ふぃ〜」
エリック
「なぁあんたか、今なんか投げたの」
くる
ぐっ!
笑顔のグッドポーズ
「あぁお礼はいらね……」
グロン!
エリックの右手が男の顔面にえぐりこむ
「余計なこと……」
してんじゃねぇぇぇぇぇぇ
宙にうく男
ヒヨルはエリックにも暴力という概念があるのだと驚いた
どさっ
「何してんのあんた」
後ろから駆けつけるリリア
エリックは地に落ちた上裸を見下す
「あぁ!この計画ぶち壊しやろうに俺の最強パンチをお見舞いしてやったんだよ!」
…………………
エリックはリリアを見てふと気づく
「お前、いつもなら真っ先に飛んでくるのにどうした?」
「具合でも悪いのか」
「いや別に…ヒヨルが行ってたし私はいいかなって」
「そうか…」
むくっ
起き上がる男
「おいおい、恩返しにしては手荒いじゃねぇか」
ペッ
血を吐く男
「手荒いのは恩返しじゃねぇからだよ、アホが」
「じゃあ、あんたここら辺が反乱軍の密会場所って知ってて入ったっていうのか」
「あぁ、そうだ」
「………知ってたのか?」
「そう言ってる」
「あんたら観光客……じゃないのか?」
「観光客……です」
……………
男は下を向き体を振るわせる
……な
「人をバカにすんのも大概にしろやぁ!」
「観光客がなんで反乱軍にくみするんだぁ!」
男は殴りかかる
「待ってください!」
間に立つヒヨル
ズサァ
ブレーキをかける
「エリックさんはあなたをバカにしてなんかないんです!」
がし
肩を掴むエリック
「余計なこと言うなよ……わかってるよね?」
「ここはまかしてください」
真剣な表情
顔を赤らめる上裸の男
「じゃ……じゃあなんだって言うんだお嬢さん」
ん?
エリックは男の表情が気になった
ヒヨルを目の前にした途端、緩んだような……まさかな
「エリックさんは誤解されやすい人ですが」
「私たちを思って行動する人なんです」
納得しない上裸男
「わからねぇな、お嬢さん二人を巻き込んで反乱軍と会うなんて」
「てか知ってたのか、あんたら」
「いえ、知りませんでした」
「じゃあ、言っておくが反乱軍なんて言ってるが」
「実情、クソみてぇな手段で政治や軍事問題に手を回してんだぞ…その中に」
「女を上層部に売って武器支援や反乱の一助にしてるって噂もある…」
「エリックさんがそう言うのなら」
「構いません!」
…………
ピキ
「このくそ野郎がぁぁぁ」
襲いかかる上裸
ふん!
ヒヨルが顔面に拳をえぐりこませる
「ふん!」
上裸は踏ん張る
「ぐ……その男に…何か弱みを…にぎられてるんだろ」
「何言ってるんですかあなたは!」
タラー
血が溢れる上裸
「俺は君たちが解放されるまで絶対に見捨てない!」
ジーーー
後ろで冷たい視線を送る二人
「勝手なこと言わないでくださいー!」
ドンドンドン
「ぐふぁ!」
ヒヨルの乱撃は上裸を襲う
だが反撃をしない
「はぁ…なんなんですかあなたは…私たちに関わらないでください!」
無傷のヒヨルが苦しそうな顔をしている
「好きなだけ殴ればいい……でも」
「俺は諦めない!」
もういい
キュ
………む?
「なんだこれは!」
上裸の腕は後ろでかたく結ばれていた
「な…何をした白い嬢ちゃん」
ぐっ
解こうとするが解けない
「それは特別な素材で出来てるから、簡単には解けない」
「……で、話聞いてくれる?」
リリアはエリックの方を見る
「じゃあ、説明お願い」
ジー
リリアの目線の先には…
……………俺?
―――――――――――――――――――
体を縛られた上裸
「……ふむ、なるほどなるほど」
「では君たちはこの国の裏側を調査しに来たのか」
「まぁそんなとこだな」
エリックが出した紙を見る上裸
「確かにアレスティア王国のクエストだな……」
「てことは俺……すごい邪魔した感じか?」
「まぁ、クエスト失敗に繋がるような邪魔をな」
ダン!
地面に頭突きする
「「「!!!」」」
驚く三人
「それは本当にすまないことした」
「申し訳ない!」
「………はぁ、別に過ぎたことだ気にすんな」
「俺も殴ったしな」
「そうですよ、方法はどうあれ守ろうとしてくれたんですし」
「そうね、悪気がないなら責めても仕方ない」
三人の言葉に感動する上裸
「おぉ…ありがとう」
「じゃ、またな」
トコトコ
裏路地を出ようとする三人
「おいちょっと待ったー!」
「なんだよ」
「これを解いてくれないか」
「どうにも自分で解けそうにない」
「ま、がんばれ」
再び歩き出す
「たのむぅぅぅうううう」
「解いてあげてもいいのではないでしょうか」
「まぁ……そうだな」
解くエリック
「いやぁーかいほう、かいほう」
「たびたびすまないな」
「じゃあ今度こそ……」
エリックは歩き出す
「待ってくれ!」
「今度はなんだよ!」
どん
路地に座る上裸
「あんたらに恩を返させてくれ」
「熱い人ですね」
苦笑いのヒヨル
「熱すぎるのも問題だがな」
「……でどうやって返してくれるんだよ」
はっ!
「それは俺の工房で話させてくれ」
「「「工房?」」」
「あんた一体何者なの?」
リリアの問いに答える上裸
「俺の名前は【アンス・ライト】」
「この国一番の鍛冶屋と言われている!」
「「一番!」」
リリアとヒヨルは驚く
「アンス・ライト……………」
「聞いたことねぇ」
一人とてつもない不安を抱える男エリック




