32話 アトロス帝国
森を歩く三人
ヒヨル
「あの…こんな森にそのシステムはあるんですか?」
エリック
「まぁシステムって言っても、小屋みたいなやつだな」
「言い忘れてたけど、ここアウトポイントだから……」
――魔獣出るよ――
ガウゥ!
木の影からツノが生えたトラが襲いかかる
ブワァ
ヒヨルが刀を振り突風を起こす
風に煽られ魔獣が後方に吹き飛ぶ
「リリア!頼みます」
ヒュン
ジャキン
風で押し返した魔獣を両断
しゅた
ドサァァ
切れた死体と共に着地するリリア
ぐっ
「ナイス二人とも!さすが俺のナイト!」
「あんたねぇ……」
呆れるリリア
ブワン
武器をしまう
「まぁ…魔獣くらいならどうってことないね」
その後も襲いかかる魔獣を淘汰する二人
「いやぁいい運動になるね」
二振りの剣をブンブンふるリリア
「ですね、もうちょい強くてもいいくらいです」
リリアは両手で刀を回す
(こいつら……怖っ)
「もうそろそろだな……」
そういうと木々の隙間から見える古びた小屋
「あれが…例のあれですか?」
「ついに例のあれになったのか…」
「あぁそうだ」
小屋の前にたつ三人
「ねぇ大丈夫なの本当に?」
リリアは目の前にボロ屋に不安を隠せない
「まぁ大丈夫……というかこの方法しかない」
「うん」
意を決しドアを開ける
ギィィィィィ
カタン
カタン
カタン
部屋に入るとボロボロの家屋
ヒィ!
驚く二人
「あぁすまんのう、驚かせる気はなかったんじゃ」
ボロい椅子に座っている老人
「こっこちらこそすみません!」
「すみません!」
二人は謝罪をする
「で、あんたが運び屋で合ってるか?」
「「え!」」
老人は立ち上がり近寄る
「いかにも、私が運び屋のバンダルじゃ」
「そうか…じゃあ早速だがよろしく頼む」
「あいわかった、ではアトロス帝国帝都「セクトポリス」で良いな」
「あぁ、よろしく頼む」
では行くぞ!!
「ちょちょちょっと待って!」
割り込むリリア
「なんじゃ、いい所に」
「ちょっっといいですか」
「私たちは何してればいいんですか?」
は?
「そんなもんそこらへんに座っとれい」
「………そんなんでいいんですか」
座るリリアとヒヨル
では行くぞ!!
はぁぁぁぁぁぁ
老人は気合を溜める
「ドンと構えてドンと鍛える、ドンドン大きくどんでん返しぃ」
見つめるリリア
「ねぇ……あれ何?」
壁に持たれるエリック
「転移魔術は飛ぶ飛距離に応じて発動にかかる魔力も精神統一の詠唱も比例する」
「国家間の移動は最上級魔術だ…あのじいさんは人生を賭けて練り上げた…」
「至高の業だよ…あれは」
老人が詠唱するにつれて地鳴りが起こる
ドドド
落ちつかないリリアとヒヨル
「ねぇこれ大丈夫だよね」
エリック
「まぁ俺も初だからなんともな」
「「ヒィィィ」」
がしっ
抱き合う二人
不安をよそに老人は詠唱し地鳴りは響く
「どんどんどこどこどんたんぜぇどんこどんどん……」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!
泣き目のリリア
「これやばいって……やばいよねこれぇ!」
目をつむるヒヨル
「大丈夫です…だいじょう……ぶ…ですよねぇ!エリックさん!」
ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ
地鳴りは大きくなり窓から光が差し込む
老人は汗をかき踏ん張っている
「どこでもどこどどどどんぶらどんぶらどんどぉここここ」
ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ
壁が振動できしむ
天井にぶら下がる照明が荒々しく動く
「いやぁぁぁぁあああ」
叫ぶリリア
「助けてくださいぃぃいい」
泣くヒヨル
ピカッ
視界が白くなる
リリアは目をつむり祈るように叫ぶ
「いやぁぁぁぁあああああああ………ああ……………あれ?」
地鳴りは次第に収まり辺りは静寂が戻る
「はぁ…はぁ…着いたぞ、帝都セクトポリスじゃ」
辺りを見渡すリリアとヒヨル
「うそ……でしょ」
トントン
四足歩行で窓に近づきカーテンを開ける
うそ……
そこに広がっていたのは石レンガで作られた街並みの見下ろす風景
しかも見下ろしている状況から小屋ではない
ガタン
老人は椅子に腰掛ける
「ふぅ…わしは少し休むから準備出来次第行っとくれ」
「あぁいいものを見せてもらったよ」
「ありがとう」
「あぁまたの利用待ってるぞ」
疲れた手を振っている老人
エリック
「じゃあ降りる前にお前らわかってるな」
「うん!」「はい!」
エリックは王都の宿である提案をしていた
――王都の宿――
「「変装?」」
「あぁ、ヒヨルはともかくリリアと俺は顔が割れてる可能性がある」
「それで、街中では変装をして行動しようと思う」
「へぇ」
「空返事だな、リリア」
「いや、だってアトロス帝国の人わたしの顔知らないと思うし…」
「………めんどくさい」
それが本音だろ
「いいじゃないですか!リリア」
「私、一味違うリリアも見てみたいです!」
「じゃあ、ヒヨルが選んでくれる?」
………は!
「もちろんです!」
「エリックのは私が選んであげる」
「おい、なんでだよ」
「いいじゃないですか、エリックさんダサいんですから」
「別に変装はセンス関係ないだろ」
「「ある」」
……………まぁ、いいか
―――アトロス帝国 転送後―――
エリック
「………変装って知ってる?」
「なに?」「なんですか?」
「みてくださいよこの美しいリリアを!」
リリアはふりふりのワンピースに帽子をかぶっている
「どこからどう見ても、戦う人には見えない!」
………………
「顔面が丸見えだろうがぁ!」
「せめて小道具で隠すとか、髪色を変えるとかな…」
冷静に解説するヒヨル
「いいですかエリックさん、リリアはかわいいんです」
「なので顔を隠すのはもったいなく、逆にその顔を引き立たせるコーディネートをね…」
「それに髪型を変えて雰囲気をガラッと変えてます!」
後ろに束ねている髪型から左右二つ結びへと変わっている
はぁ…
「お前はいいのか?リリア」
リリアはその場で周り服を確認する
「ん〜」
「まぁヒヨルが楽しそうだからいいかな」
「そうか……もういいや」
投げやりになる
ちなみに他二人の服装
リリア→エリックの変装
灰色のベストに赤いネクタイ
黒の長シャツに黒のズボン
茶色の革靴
黒縁メガネ
選んだ理由
リリア「地味な雰囲気だから逆方向で」
エリックは髪色を変えようとしたが「髪色なんて誰も見てない」という理由でメガネのみの変装となった
エリック→ヒヨルの変装
水色の上着
黒のスカート
灰色のタイツ
茶色のブーツ
選んだ理由
エリック「考えた末の力作」
ヒヨルは大いに喜んでいたが、実際は呉服店の店員に見繕ってもらったエリック
尚、顔が割れていないヒヨルは変装よりも衣替えの意味を持つ
「まぁでもいいんじゃないかな」
「観光客に来たって体でさ」
なぜか嬉しそうなリリア
「じゃあ、せめて目立った行動、言動は避けてくれよ」
ギロ
ヒヨルを凝視する
「わかってますよ、まっかせてください!」
胸を張るヒヨル
……………………………
アトロス帝国 帝都「セクトポリス」
世界で一番魔道研究が進んでいる国の中心部
ここには多くの研究者が在国している
アトロス帝国の産業は主に魔防具、魔武器といった加工品を外国貿易で取引することで利益を得ている
「ねぇエリック」
部屋の出口前でリリアが質問をする
「お父様の仲間が囚人ってやっぱおかしいよね…」
「まだ気にしてたのか」
王都から疑問に思っていたリリア
「それは自分の目で確認するってことで終わったろ」
「それに勇者の仲間の情報は完全秘匿だから家族、少数の関係者以外しらねぇんだよ」
「だからガセ情報の可能性も捨て切れない…」
「うん…そうだね」
「まぁここまで来たら調べ終わるまで帰れねぇから」
「思う存分正体がバレねぇ程度で探せばいい」
ばし
エリックの背中を叩く
「エリックも一緒にね」
ふん
「私も入れてくださいよぉ」
間に入るヒヨル
「えぇい鬱陶しい、もう帝都だ気合い入れて行くぞ」
「よっし、帝都捜索行くぞぉ!」
リリアが手を高く掲げる
呼応するようにヒヨルも手をあげる
「おぉー!」
………………
ぐい
無理やり手を持ち上げられるエリック
「おー」
三人はアトロス帝国の帝都「セクトポリス」に足を踏み入れる
―――セクトポリス 地下室―――
ヒッヒッヒ
不気味に笑う小太りのメガネ
前には大きな水槽、その中に筋骨隆々《きんこつりゅうりゅう》の大男が浮かぶ
「被験体73、脳機能に異常あり…魔力神経は正常、むむっ」
「筋肉数値が異常に高い……こいつはとっとくか」
ウィーン
「進捗はどうかねザンパ博士」
「おぉ、オーナーいい所に来ました」
「見てください、この筋肉細胞を……」
髭をさするオーナー
「はぁ……これも魔力因子のおかげなのかね?」
興奮するザンパ
「はいそうです、ようやく次のフェーズに進めます」
「完成の暁には「ストーム」への推薦状を頼みますよ、ゔふふ」
「あぁもちろん、国を一つでも滅ぼしたら内定は確実だろうね」
地下室で何かを目論む二人
三人はまだ知らない……この国に起きている惨状を……




