30話 嘘偽り
ギルド「雄剛の英団」本部
リリアと従者2人はベドラスがいる部屋へと招かれていた
ベドラス
「えぇ今回はクエスト完遂おめでとう」
「各人の健闘により無事解決されたことを心より祝福すると同時に感謝を伝える」
依頼達成の紙をリリアから受け取るベドラス
「やっぱもっと難しいやつの方が良かったかな?」
呆れるリリア
「このクエストも本当に大変だったんだからね」
ハハハ
「わかっているとも、クエストには想いが込められている大小はないからな」
「……………で報酬なんだけどさ」
「あぁわかっているとも…」
パンパン
手を叩くベドラス
「入りたまえ」
ガチャ
扉からマントをなびかせ白の鎧にも似た服を着ている金髪が現れた
「やぁリリア」
「師匠!!」
タタタ
リリアはその男に駆け寄る
「なっなんでいんの!今外に出てるって」
従者が耳元でささやく
「あの方は……誰ですか」
「知らん」
席に座り話を始める
「えぇ、初めに自己紹介をさせていただきますね」
「私はこの雄剛の英団、団長を勤めています」
クロス・ネイヴァード
「といいます」
「どうぞよろしくお願いします」
一礼をするクロス
一礼を返す従者達
「なんで師匠がここに?」
「ベドラスさんに緊急招集をかけられてね」
「断るとベドラスさんからゲンコツが飛んでくるから来たまでだよ」
おほん
咳払いをするベドラス
「何言うとる若造が、私は優しいで有名と言うのに」
「まぁそれはそれとして、今回僕がここに来た理由は」
忠告をしにきた
「忠告?」
「あぁそうだ、レシキについて僕も不思議な点があってね色々探ってたんだ」
…………………………
「多分この忠告はリリア達が知らない情報だから報酬として受け取ってもらえると話が早いのだが……どうだろう?」
クロスはリリアを見る
「……えっと、そう言うのはこの人に任せてるから」
リリアは話をエリックにふる
「へぇ君が……名無し人なんだってね」
エリックは答える
「はい……今はリリア様の身辺警護兼情報統括をさせて頂いております」
「何か疑問点があれば何なりと………」
クロスは笑う
「いや、僕は問題ないよ」
ベドラスに目を合わせる
「私もリリアが決めたことだ異論はない」
仕切り直すクロス
「では、始めましょうか」
「レシキに起きたことの顛末とその後を………」
「おっとその前に」
割り込むベドラス
やれやれとクロス
「お願いしますよベドラスさん」
そういうとベドラスは机に手を置く
パキン
部屋に氷が割れたような亀裂が入る
「では話してくれクロス」
エリックは言葉を失っていた
(こいつ、今の一瞬で凍結魔術を使ったのか……)
(ほうけたじいさんかと思ったが、ギルド統括は伊達じゃないのか…)
「では改めて、私の行動記録を交えて話すとするよ」
―――レシキ調査記録―――
レシキの公的記録は危険地域と断定され、地図上から消えている
それを知るものはいますが、なぜ消されたのかは恐らく知る人は少数
当時レシキでは村人同士の殺し合いが行わられていた
驚くべき事に村人達がギルドに調査依頼を持ちかけたときには既に村人の7割が死んでいた
村に案内されると中は腐臭がひどく家屋などは跡形もなかった
村人になぜもっと早く依頼しなかったと聞くと全員が「考えもしなかった」と答える
村には磔台があり血が染み込んでいた
我々は村に泊まり込み夜中に誰かが殺されていると言う情報をもとに捜索を開始した
「一つ聞いてもよろしいですか」
話の途中、エリックが質問をする
「あぁいいとも」
「その依頼は誰がしたのでしょうか」
「話では村人全員が考えもしなかったと言っていたので」
「依頼者はわからないんだ」
「わからない?」
「あぁギルドのクエスト受注する際、名前と国籍のみの提示で簡単に申し込める」
「そこから先遣隊の1人が現地へ赴きクエストランクや詳細などを決めるからね」
「その依頼が我々の元に来るまでに数日はかかってしまうからね」
「もちろん依頼者を調べたが虚偽申請だった…広くクエストを募る弊害かな」
「はぁ…話を止めて申し訳ありません」
「いや質問があったら遠慮なくどうぞ」
話を戻すクロス
夜中に我々は村を警邏していた
村に結界を張り外からの侵入も防ぐ徹底ぶりでね
まぁ結界が意味をなさないとわかったのはすぐだけどね
村南方から大きな音がしてね
駆けつけると首がない人間の体が歩いてたんだ
「え!」
リリアは驚嘆の声を上げた
笑うクロス
「はは、そうだね私も初めて見た時驚いたよ」
その首なしは団員に仕留められてその場で絶命したんだ
すぐに周囲の村民を調べたけど半数程息絶えていた
…………………………
我々はただの事件ではないと判断してギルド統括であるベドラスさんの意見を仰いだ
「あぁ、あの時のお前らの慌てようから事態は一刻を争うと確信した」
「お前の顔もはっきり覚えている」
そこでベドラスさんは王都へ騎士団にも協力要請を出した
ただそれは通らなかった
リリア
「通らなかったの?」
当時の王政はその事件には他に適任者がいると言って他の部隊をよこした
1つ目は「聖教会」
神を崇め、勇者を神の使いとして侵攻する宗教団体
勇者の死は役目を全うした勇者を召喚したと唱えている団体だね
うつむくリリア
「うん……そうだね」
2つ目は魔導研究チーム「テンペスト」
「テンペスト?聞いた事ない」
「まぁリリアが知らないのも無理はないね」
「この組織は秘密裏にアレスティア王国で結成された裏の組織だからね」
「まぁでもこの組織が出てきて良いことはない」
この二つがレシキ調査に乗り出したんだ
それ以降、ギルドはこの件について一切の関与を剥奪された
その後も何度かレシキについて問いただしたが無駄だった
我々もギルドメンバーの安全を考慮してそれ以上踏み込まなかった
それから程なくしてレシキは危険地域として地図上から消された
「……という感じで僕からの話は以上だけど何か質問はあるかな?」
ちら
エリックを見るリリア
「いえ、特にはありません」
「貴重なお話ありがとうございます」
「期待に添えたようで何よりだ」
「では次にうつろうか」
え……………
慌てるリリア
「つっ次って何、師匠?」
はぁ
ため息をするクロス
「まだ勇者様の死について調べてるんだろリリア」
……………
「やっぱりそうか、レシキについてはなせと言われた時もしやと思ったが」
「あんだけダメと言ったのにどうしてまた」
「……」
黙るリリア
「君はこのままいけば永劫の騎士団に入団できるんだよ」
「師匠としてこの上ない誉だよ」
「でもこの一件が見つかればいくら勇者様の娘でもタダでは済まない…このことがわかるかい?」
クロスは優しく問いかける
……………
「君たちも協力している……のかな?」
「はいそうです」
エリックは返答する
「なんでまた……」
「お言葉ですが…」
エリックは割り込む
「お二人は勇者様がなぜ亡くなったのか疑問に思わないのですか?」
クロスとベドラスは黙る
「この一件は世界で禁忌とされています」
「表面上亡き勇者への冒涜とされていますが、私は別の意図が介在していると思います」
クロスは興味深く聞き入る
「ほう……別の意図とは?」
「未知です」
クロス
「未知とは………君自身もわからないという意味かな?」
「はい、わからないから隠すのです」
「皆が一様に未知を恐れ勇者の死から目を背ける」
「この事件は隠している者たちだけではなく我々も間接的に隠蔽の手助けをしているのです」
ベドラス
「我々も手助けをしているというの……かね」
「はい、あなた達も心のどこかでこの一件は解決されないことを望んでいるのではないのでしょうか」
ドン!
机を叩くベドラス
「あまり図に乗るな、リリアの従者だから甘く見ているが出過ぎると後悔させるぞ小僧」
「私自身、あいつを殺したものが見つかればこの手で殺す」
「でも探さないんでしょ」
リリアが口にする
「………」
黙るベドラス
「わかってるよ、ベドラスさんも師匠も探さないんじゃなくて探せないってことくらい」
「みんなは守るものがあって譲れないものがあるんだよね…」
「リリア……」
クロスがつぶやく
「だからさ、私も譲れないことのために人生を賭けてるの…」
「だから辞めないし、引く気もない……ごめんね師匠」
ニコ
リリアは笑う
「だからさ、もう私この国には帰らないって決めたんだ」
「そんなにお父様が大事なのですか…リリア様」
クロスは改まって問う
「もちろん大事だけどさ、なんか今までこの国で生きてきて嫌になったんだ」
「やること全部否定されるし、お母様も何考えるかわからないし」
「だから…………ね……もう無理なの」
「それは修行していた期間も同義なのですか」
「あの笑顔は偽りだったの…ですか」
「う…ん」
リリアは服を握りしめる
静寂が部屋を覆う
はぁ
息を吐くクロス
「では、あなた達に個人的な依頼をします」
「よろしいですかベドラス総統」
困り顔のベドラス
「はぁ……まぁよい」
下を向くリリア
「顔をあげてください…依頼者に対しては顔を合わせる」
「最初に教えたことですよリリア様」
顔を上げると
泣きそうな顔をしている
「ゔん…」
「アトロス帝国に調査をおこなってほしいのです」
「現在、アトロス帝国では非人道的な実験が行われているという情報が流れてきています」
「そこで研究の有無や詳細な情報を掴んできてほしいのです」
エリック
「隠密……ですか」
クロス
「まぁ方法は任せますがくれぐれもリリア様の素性はバレないよう努めてください」
「この依頼はリリア様の魔術しか頼れないので……お願いできますか?」
こくり
頷くリリア
「あぁそうだ、ベドラスさんなんかクエスト不備でケッテルが至急きてほしいそうですよ」
がつん!
殴るベドラス
「そういうことは、早く言わんかい!」
ベドラスは出口へ歩を進める
「またおいでリリアちゃん……」
ガチャ
席を立つクロス
「では私もそろそろ……」
「あぁそうだ、これは余談ですが」
「アトロス帝国の囚人に勇者様の専属鍛治の「ガレン」がいると聞いたような…」
「あなたは聞いたことありますか?」
エリック
「いや聞いたことないです」
クロス
「あぁでは聞き間違いか、国家間の暗号も読み違えては意味をなさない」
トコトコ
「リリア…」
…………………………
リリア・グレイブ!
大声で呼ぶ
「はい!」
反射的に立ち上がるリリア
「僕が魔導学園卒業の時に言ったことは覚えているか?」
ぐぐ
涙を拭き取り
「信条とは剣を掲げ突き進む先にしか守れない!」
「覚えているならいい」
「信じる事を忘れるな、その先に答えがあるはずだ」
「何かあったらまた僕の所に来なさい」
ガチャ
部屋には三人
泣き崩れるリリアを介抱するヒヨル
キョロキョロするエリック
(今ここで部屋を捜索……)
泣くリリアを見るエリック
(こいつどんだけ不幸を背負えば報われるんだよ)
とん
背中をさする




