2話 疲れても美味しいものは美味しい
歩く道中リリアはソワソワしていた
「ねぇなんで急に依頼受けてくれたの?」
ーーー無視ーーー
「ねぇって、聞いてる?」
立ち止まるエリック顔をあげ大きく息を吸う
スゥゥハァァ
「あのな、とりあえずうるさい」
唐突な言葉に驚くリリア
「なっ…うるさいって必要な会話でしょ」
「それにあんだけやりたくないって言ってて急にやるとか疑問にも思うでしょ」
歩き始めるエリック
「まぁ…あれだ状況が変わったってやつだ」
「状況?」
「お前のバッグに付いてる紋章、王国最強の騎士団『永劫の騎士団』のやつだろ?」
「それに今は依頼もないし、時間もあるので危険性、時間共に問題無し…と言うことなの」
「まぁ私がいればどんなやつでも返り討ちにしてあげるわ!」
フンっと胸を張り歩くリリア
その背中を見るエリック
「……………」
──歩き始めて数時間が経った頃──
二人は工業区から国管轄の農場を通り過ぎ、騎士団訓練場付近についていた
「ねぇそろそろお昼食べない?そもそもなんで徒歩なの?馬車使おうよ〜」
しんどそうな顔のリリアに対し
「一つ言うが、依頼は受けるが君の要求に従う気はない」
「馬車に乗りたかったら金を稼いで来い、お昼食べたかったら店を見つけて来い」
「これから先、なんでも自分でやれ俺はお前の執事でもなければお世話係でもない」
「そして確実に俺の方が腹減ってるし足も上がらない事を忘れるなよ」
すごい圧にたじろぐリリア
「ご…ごめんて、お店は近くに学校通ってた時に行ってた店があるからそこでいい?」
「あぁそこで…てかあるなら先に言ってくれ」
料理屋『馬旨亭』
広い店内にはカウンターテーブルがL字に広がっており、4卓の机が並んでいる
壁にはメニューが書かれており、厨房には3人の料理人がせっせと調理している
客数はカウンターに4人、机は2卓がうまっている
「メグリさ〜ん久しぶりです!」
店内に入るとリリアは机を拭いていた女性に声をかける
「あぁリリアちゃん久しぶりねぇ、魔導学園卒業式以来かい?」
「うん!近くに来たからまたあの美味しいお肉コースをお願いします!」
「じゃ奥のテーブルに座って待っててね」
奥のテーブルに案内され二人は座る
「おい、俺のこと聞かれたらどうするんだよ」
「今の仕事仲間ってことでいいでしょ?」
「間違ってはないが…まぁいいか」
店内を見渡すエリックはふと気づく
「てかお前って今何歳なの?」
リリアはあっとした表情を浮かべ
「そういえば自己紹介がまだだったね」
「私はリリア・グレイブ 15歳 得意魔術は後で見せるとして好きな食べ物はにくであと…」
言葉を遮るように
「悪いな個人的な好き嫌いは興味ない」
リリアは少し不満げな表情を浮かべつつも
「じゃあなんなら聞きたいの?」
エリックは少し考え
「今の手持ち金と俺をどこまで知っているか、何か事件について知っている情報…そんな所か」
リリアはニヤける
「聞いて驚きなさい、今の私の貯金額はなんと…」
「2000万エトラよ!!!」(1エトラ=1円)
──────!!??
「はぁぁぁぁ!!!」
突然の男の大声に店内の客が一斉に注目する
「ちょっ声大きいって」
「だっだだだだって2000万ってお前……何したんだよ」
「王国騎士でも年間で300万エトラ、平民に至っては150いけば裕福ってのに…これが勇者の力か」
「何一人で勝手に解決してんのよ」
「このお金は学校在学中に騎士仮免を使い依頼を受けて貯めた、努力の結晶!」
リリアは金額証明書をヒラヒラさせ
「ギルドに行けばいつでもおろせるお分かり?」
エリックは紙とペンを取り出し
「じゃあ早速、依頼についてだが前金で200万エトラお支払い頂いて」
「依頼達成事には1000万…いや1200万の報酬を用意していただき……」
「ちょっとぼったくるにしてももう少し隠しなさいよ、いい歳した大人なんだから」
呆れるリリア
「…てのは冗談で…正直いくら使う予定がありますか?」
「全部」
「ありがとうございます」
「勘違いしないでほしいけど、報酬で全部じゃないからね」
「この旅路の費用に当てて余った分だけ報酬として支払うから」
エリックは少し考え
「では早く終われせば報酬も弾むと言うことか…」
「そゆこと」
「了解した」
するとおもむろにエリックはペンを走らせた
「えーと宿泊代二人で一日100エトラで馬車は買った方が安いかそれと……」
バン!
紙の上に手を叩きつけるリリア
「そんな計算よりもっとお互いの情報交換をしましょうよ」
「あぁそうだなつい金にかじりついてしまった」
「じゃあ初めに私の得意魔術を見せてあげる」
リリアは自分の右手を指差し
「今からこの手であなたをビンタするね」
「意味がわからん」
「いいからゆっくりぶつから手で止めて」
慌てるエリック
「こんなこと言いたくはないが俺は魔術適性が常人以下で最下層の貧弱人間なんだ」
「だから君のビンタで俺の頭が今の形状のまま保てるかどうか自信がない」
「ということで他のお披露目を考えて…」
パチン
エリックの左頬に少しの痛みが走る
「ちょっしゃべってる時に何すんだよ」
リリアがにっこりと
「どう?これが私の魔術」
「意味がわからん」
「はぁ…じゃあもう一回ぶつから今度は止めてよ」
「強さは今と一緒だから痛くなかってだしょう?」
「まあな…もう一回?」
「よく私の右手に注目しててね…ぶつよ」
リリアの右手はゆっくりとエリックの左頬に近づく
「この手を止めればいいんだな…なんだ簡単じゃ…」
パチン
「え……今何したこいつ」
リリアはまたもにっこりと
「すごいでしょ私の魔術」
「あぁすごい……けど何したんだ?」
「いややっぱいい…ここで言われると負けた気がする」
「はいお待ち」
二人の目の前に大きなパン、こんがり焼かれた大きな豚肉、刺身と野菜が和えてあるサラダ、赤いソースがかかっている蒸されたじゃがいもが並んだ
リリアは目をか輝かせ
「おぉ〜これこれこのフルコースぅ」
「きつい訓練の後に食べたあの時……蘇る至福の時間」
グサっ
無造作に豚肉にフォークを刺すエリック
「で、さっきの続きだが俺のことは誰から聞いた?どこまでってい……」
パチン
叩かれたエリックは額に怒りを浮かべ
「今叩くんじゃねぇーよもう魔術のことは終わっ……た」
リリアの顔は酷く冷めていてゴミを見るような視線だった
「恥を知りなさい」
とん
エリックの胸に人差し指を突き立て
「恥を知りなさいあなた、どれだけ私が楽しみにしていたかわかる?」
「それに、豚肉は最後にとっておくの最初に触らないでくれる!」
「悪かった、悪かったよ…じゃあ最初は何から食べればいいんだ?」
「そうねこのサラダからじゃがいもをパンに塗って……」
エリックはこの時確信した
(変に抵抗すればもっと面倒になる)
エリックは話を戻す
「俺のことどうやって知ったんだ?情報部に忍び込んだとかって……」
ごくんと飲み込み
「あぁそれね…そうそう忍び込んでちょちょいってね」
エリックはため息をつき
「アグノバに教わったんだろ?俺のこと」
ぎょっとしたリリア
「さっさ〜てアグノバだっ誰のことか私わからないな〜はは」
見つめるエリック目をそらすリリア
「王城にいてしかも勇者の娘と面識がありアレスティア全域に精通していてグレーな部分も知っている」
「そんなの諜報局『レーヴン』の局長しか思い浮かばねぇだろ」
リリアは顔を近づけ小声で
「そうよその通り、だからこんな公共の場で安易に言葉を出さないで」
「うぐっ」
リリアの額にデコピンをかまし
「わかってるよお前に言われなくてもな」
「それに何を吹き込まれたか知らんが俺はお前が思っているより普通の人間だから」
「そこんとこ忘れんなよ」
額を抑えながら
「あの人と知り合ってる時点で普通じゃないんだけど…どんな関係なの?」
エリックは水を飲み外の景色を見ながら
「まあ……昔の付き合いかな」
食べ終えた二人は目的地のスラム街に歩を進める
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