1話 出会って出発
──アレスティア居住区──
金髪を後ろに結び小綺麗な格好をしている女の子が鼻歌混じりに歩いている
「リリア様!」
女の子が振り返るとそこには酒場の店主が手を振っていた
「勇者様の課題終わったんですね、お疲れ様です!」
「今晩店来てください、是非ご馳走させてください」
女の子は呆れた口調で
「あのですねぇ、敬語もご馳走もやめてって何回言ったらわかるの?」
「それに人の名前を大声で呼ぶのも様もやめて!」
「あぁ…すみま…ごめんなリリアちゃん」「ぐふぁ!!」
店主の横腹に肘がきまる
それは店主の奥さんの華麗な技だった
「久しぶり!マイカラさん」
「ごめんねリリアちゃん、このバカは寝たらすぐ忘れるから…」
「いえいえ大丈夫です」
マイカラはリリアの肩を掴み
「本当によく頑張ったね…おばさん涙が出そうだよ」
目には大粒の涙が溢れていた
「これからは毎日外にでれるんだろ?」
「うん!でもまぁ来年の騎士団入団までの1年間だけだけど……ね」
「そっか…邪魔して悪かったね、これからどっか行くのかい?」
「うん、これから人に会いに行くの」
「人……?」
「私と一緒に命をかけてくれる人にねっ」
店主とマイカラは呆気に取られ目を丸くしていた
それを見てリリアはニヤリと
「冗談だよ冗談……じゃ行ってきます!」
「あぁ…気をつけて」
二人はリリアの背中を見送った
居住区を抜け橋を渡るとそこには工業区が広がっていた
工業区には魔導兵器工場、武具屋、質屋など様々な店が構えられている
リリアは店には目もくれず、一心に目的地であるボロ屋の前に立つ
「ここが国随一の知者がいる所……ボロすぎ」
………よし
トントン
「すみませーん…」
シーン
「あれ?家から生命反応があるのに……」
トントン
トントントン
トントントンドン
ドンドンドンドン
ダァンダァンダァンダァン
ちっ
「返事せんかぁぁぁぁぁい!!」
大声と同時に扉を蹴破る
「依頼を持ってきました、リリア・グレイブと言いますどうぞよろしくお願いします」
暗がりの部屋、物が散らかってる中に一脚の椅子
そこに座っている髪の毛が跳ねた成人男性
「居留守って言葉を知らないのか君は?」
「知らない」
「あっ…そっ」
リリアはバッグから紙を取り出し
「エリック・バートン」
「騎士団に依頼され数々の殺人事件を解決する何でも屋…国内外にも人脈がありしかも……違法な事件も請け負ってるとか」
エリックは立ち上がり
「よく調べたなお嬢様…誰から教わった?」
「私自身が調べたの、こんなの情報部に忍び込めば手に入る」
「私の依頼を受けて欲しいの、お金ならいくらでもはらっ……」
言葉を遮るように
「無理だ」
「なんでよまだ聞いてもないじゃない!」
「聞かなくてもわかるから聞く前に言ってんだよ」
「どうせ勇者のことだろ?」
リリアは急ぎ言葉で
「そうだけど…まっまさか調べる前から諦める気?」
「あなたも勇者様の死を調べるのは不敬だなんていうつもり?」
「……」
拳を握る
「あなたが無理なら協力してくれそうな人を紹介して…誰でもいい何か…お願い」
ビシ
リリアの目の前に三本の指が立っているエリックの手があった
「3?」
「断る理由を3つ言う…最初に言うが別に禁忌とかにビビってるわけじゃねぇからな」
「1つ、リスクが高すぎる…事件調査は危険度と事前情報量が全てだ、避けられない案件なら別だがこれは断る」
「2つ、規模がデカすぎる…これを調べるために何カ国回らなきゃいけない?考えるだけで面倒だ」
「3つ、知る覚悟がお前にはできていない…以上」
「わかったなら帰ってくれ……その前に扉を直せ」
エリックは椅子に座るとくるりと一回転リリアを背に
「まあ気が済むまで調べればいい、好奇心は罪にはならねぇからな」
ドッドッドッ
ガシッ
エリックの肩を掴み無理やり顔を突き合わせる
「覚悟がないなんて簡単に言わないで!」
「何年待ったと思ってるの、この時をどんなに待ったか」
「あなたにとっては他人事だけど、この事件は私の全てなの!」
涙を浮かべるリリアを見たエリック
「……なんでそんな知りたいんだ、復讐か?」
「ただ知りたい、お父様がどんな最期を過ごしたのか……それだけ…それだけなの」
「わからねぇな、復讐心でもねぇのにこんな執着する理由があるのか?」
「お父さんを知りたい事に…そんなに理由が必要なの?」
「みんなは色々言うけど家族として知らない方が罪だと私は思うから…」
「それに知らなかった期間が長ければ長いほどふとした時の罪悪感が増すと思う」
エリックは頭をクシャクシャかき目線をそらす
「悪かった、さっきは勝手に決めつけたが…言い方を変えるよ」
「お前は全てを知る覚悟はあるのか?」
「ある」
「俺が聞いてんのは勇者の最期じゃねぇぞ」
「え?」
「それについて回る知りたくねぇ情報だ」
「こういった曰く付きの事件には知りたい情報を得るために知りたくない情報を知らなきゃならない場合がほとんどだ」
「気が滅入るなんてもんじゃねぇ、人生観がかわっちまう情報もある」
「それを受け入れ、最後まで知り抜く覚悟が必要だ…途中で止めることは俺が許さねぇからな」
リリアは手を離し顔をあげる
「ありがとう」
「知る覚悟ならできてる」
エリックは再び立ち上がり
「そっか、じゃあ支度するから待っとけ」
……
「何ボーとしてんだよ」
リリアは驚いた様子で
「えっいいの?引き受けてくれるの?えっえっ…」
「なんでそれ以外の理由でお前を待たせるんだよ」
リリアは後ろを向き、体を震わせ
「ありがとう、本当にあり…が…とう」
──数分後──
身支度を整えたエリック
「よしじゃあいくか!」
「どこに行くの?」
「スラム街」
「……スラム街?」




