15話 勇者の手記
―――勇者の手記―――
魔王征伐から一年が経った
これより書き示すのは魔王討伐後の変化を実体験として伝えるためである
リアンダと王国辺境の村「レシキ」に移住することにした
みんなは王都に住んで欲しいというがあまり気が進まない
リアンダに話したら快く受け入れてくれた
みんなはそれぞれ『アトロス帝国』『ヘリウ王国』『ハイトス共和国』に行くらしい
彼らには故郷がある、止めても仕方がない
村は魔王の軍勢である魔獣ヘルボッグの被害に遭っていた
あの魔獣は非常に厄介で人が寝静まる時間を読み攻撃してくる
だがいなくなった今、村民は亡くなった者のお墓を作り村を再興している
前向きな村民を見て変われる気がした
村民は毎日野菜や果物を差し入れてくれる
ねぎらいだというが何もしていない俺には分不相応で気が引ける
今日はもう寝よう
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勇者の手記に記されていたのはなんの気もない日常だった
日付は書かれていないがおそらく時系列は追っていると文からわかる
あるページでリリアは驚く
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リアンダは体の不調を訴えた
医者に見せたら新しい命が宿っているらしい
なんとも言えない程に感動した
……………
ようやく俺たちの子供が生まれる
この気持ちを書き記したいがあいにく表現できる言葉が見当たらない
どうか二人とも安全で、今はただそれを祈るばかり
今日ついに子供と対面できた
女の子だったかわいかった本当にかわいかった
なにより二人とも笑顔でおれも笑顔になった
よかったよかった本当によかった
今日名前を初めてよんだ
リリアと言ったら笑顔で反応した
天使も嫉妬するかわいさ
元気に育ってくれ、お父さんとお母さんと一緒にいろんなとこ行こうな
…………
家に娘が来た
可愛いこの笑顔を見るために胸がしめつけられる
いや俺はこの子を幸せにする義務がある
俺が幸せになるのではなくこの子がだ
そうだ忘れるな
やはり子供は強い
何物にもおじけずに進む姿勢
俺も見習わなければ
食事作りには慣れてきた
どうやらリリアはミスリタの葉が好きらしい
父さんと一緒の好物だ、なんとも味がわかる子だ
将来は天才料理人になることは確定だ
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それから娘を育児する日記が続いた
生まれてから日常が細かく書かれている
リリアは大粒の涙をこぼしていた
「……お父さん」
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しかし異変は突然起こる
また悪夢を見る
リリアが生まれ一年が経つ
別に気が病む出来事もないし
今の生活に不満があるわけでもない
なのに疲れと動悸がすごい、医者に診てもらうか
リアンダから最近夜独り言が多いと言われる
最近娘の眩しい笑顔が痛い
あの子の無邪気な言動を見るとあいつのことを思い出す
やはり最近寝れない事が多い
リリアが生まれ2年が近づいている
行動も意思を感じる
この子の成長だけが今の生きる意味
だがこのままではいけない
あの子のためにケリをつけなければ
王に頼んだらリアンダとリリアは王都で面倒を見てくれるそうだ
すまない二人ともしばし別れだ
では旅の支度をしよう
長旅になる入念な準備が必要だ
え……
それから数ページは破られていた
驚くリリア
「え!ちょっとこれ」
スピー
椅子に座り寝ているエリック
ふと、窓を見ると外は暗かった
時間はすぎていたが続きを読む
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ひどいことをしてしまった
勢い余って途中のページを破ってしまった
しかしここまで書いたなら手記が終わるまで書き続けるとしよう
寝れない事が日常化している
やはりあいつらとの決着はつけなければいけない
ここまできてこれとは
あいつらを殺さなければユディスを助けなくちゃ
ひどく暑い、敵はいつも不意に襲ってくる
こんなんじゃいくつ命があっても足りない
いくつって命は一つだった何を書いてんだ
おれはX X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X X
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「きゃっ!」
ゴトン
手記を落とす
ふがっ
起きるエリック
「お、もうよんだのか」
困惑するリリア
「最後の……なに」
本を拾うエリック
「おれはという文のあとはペンでぐしゃぐしゃになって読めないって所だな」
「そういう意味じゃなくて!」
「分かってるよ、勇者は死ぬ直前何かと決着をしに旅に出た」
「その途中、ユディスって奴を助けようとして…この黒いとこだな」
「それもお父様がやったの?」
まじまじと見るエリック
「知らん、自分でやったのか誰かが意図的にやったのか」
「まぁ死んだ時にこれを持ってたなら、犯人がやったのか……」
「でも手記が残ってんなら、敵はわざわざ黒で潰す意味もねぇ‥‥」
エリックは本を渡す
「これ持っとけ、後半はアレだが前半は紛れもないお前への愛情だよ」
受け取るリリア
「うん……でも困ったね」
「次の手がかりが…ないね」
チッチッチ
「誰が手がかりがないと?」
「え!あるの?」
がた
エリックは前屈みに座る
「次の目的地は【セイントエルダ】」
「王直轄の冒険者ギルド「雄剛の英団」の本部がある王都に行く!」
神妙な顔のリリア
「……なぜ?」
ぺら
紙を見せるエリック
「その手帳から読み取れるものをまとめた」
・勇者は魔王征伐後、リアンダと共に王国辺境の村レシキにいた
・リリアが生まれると成長が生き甲斐になっていた
・リリアが成長するにつれて何かとの決別を考える
・夜眠れない日々が続き手記の言動に異変が起きる
・明確な土地名は「レシキ」、王にあっていたので王都「セイントエルダ」?
重要!レシキと言う土地は調べたら地図に載っていない
・途中破られたページは他者ではなく自己で破り後悔してる?
・ユディスという人物の救出途中で死んだ?
・確実に勇者は魔王以外の何者かを敵対視しており、殺さないと娘が幸せになれない?
・最後は俺はで始まり黒塗りで消している、これはなんのためか
誰かの隠蔽工作とは考えにくい、なぜなら黒塗りより燃やせばいい
「……うん」
ピンとこないリリア
「だからセイントエルダ?」
「そうだ、騎士団にある情報は王政からの隠蔽が徹底されている」
「だが冒険者主体のギルドなら過去の依頼履歴とか資料の保存に王政は介入できない」
「そこでギルド内部に潜入してお前の生まれ故郷「レシキ」について調べる、以上!」
「うん…分かった」
紙を返すリリア
「いいよ、エリックが言うならそうするよ」
「…………」
沈黙するリリア
「どうした?」
「ギルド内部ってどうやって調べるのかな…て」
「そんなの決まってんだろ!」
ビシッ
リリアに指をさすエリック
「お前だ!」
「え!わっ私!」
腕を組むエリック
「勇者の娘という権力を思う存分使ってもらうぞ」
「その力でギルド長「ベドラス・ネーデン」に会う!!」




