110話 魔海域
「あなた達は何をしてるんですか?エリックさん」
医務室にいるとんがり帽子のミーマ・エモット
「なんで俺の名前を知ってんだよあんたは」
身構えるエリック
ふふふ
「それは回帰様から教えてもらったんですよ」
「俺はその回帰様に会ったことは無いはずなんだが」
「あなたが気づいていないだけで回帰様は世界の分岐点には必ず姿を表しますよ?」
「私は詳しく知りませんがあなたが起こした分岐も随分と思慮深く見ていましたから」
…………
ビカビカビカビカ!!
船外に轟く雷鳴
「今外で戦ってるやつもお前の仲間なのか?」
「はい!私があなたとおしゃべりする間他の人達を抑える役目を賜ってます」
「まぁ殺しはしないですけど…あんまり長引くなら……ねぇ?」
ミーマは不敵な笑みを浮かべる
はぁ
「わかった」
「で、敵情視察ってのはどう意味なんだ」
「俺たちは皇国に入った覚えはないんだが?」
トントン
ポワァン
ほうきで地面を叩くと宙に地図が浮かび上がる
「まぁ簡単にですが、ここは魔海域と呼ばれる我が皇国を囲む海域なのは承知してますよね?」
頷くエリック
「ほんで、この魔海域は皇国の第一防衛線となっている訳ですよ」
「海獣達が皇国に不法入国する奴らの力量を調べてくれるんです」
エリックは黙る
(なるほど…海獣は防衛手段じゃなくて相手の力量を調べるために……)
「それを感知した回帰様がその輩達へと防衛レベルを決めて我々の誰かが沈めるのです」
「ですが!」
「あなた達の航路は皇国に向かわず、魔海域の海獣を片っ端から殺戮して行ってるのです」
「これには回帰様も憤りを隠せません、海獣とて無限に生まれる訳ではない」
「なのでその意味がわからない頭のおかしい航海者達の目的を聞き出すべく私とエゼル君が赴いたという訳です」
「わかりましたか?」
………
「ここまで聞いといてあれだが、そんな情報をペラペラと話していいのか?」
ふん!
ミーマは胸を張る
「これは全て回帰様より提示して良いと預かった情報なので大丈夫です」
「はぁ……そうか」
「じゃあお前達は目的を知れたら帰ってくれるんだな?」
………
「まぁ内容によりますね」
「そうか……」
(回帰がどれだけ知見を広げているかわからない以上、変に嘘をつくのも危険だな)
「じゃあ、要点を簡潔に話す」
エリックは勇者の娘の事や勇者の死について回帰に会うために皇国へ行こうとした事、その途中で海人と遭遇し目的地を変え進んでいることを明かした
「ふむふむ」
ミーマは紙を取り出し何かを確認する
「まぁ概ね…………っと」
「よし!ではこれより先は海獣が襲ってこないと思うので良い旅を!」
「ちょっと待て!」
………?
ほうきに跨るミーマを引き止める
「良いのか?俺たちを捕まえなくて」
「不法入国しようとしたんだぞ」
あぁ
「そのことでしたら回帰様から捕縛の命が出されていないので構いませんよ」
……
「あぁそうだ最後に回帰様から伝言を言い伝えるよう言われてたんでした」
海は渡るだけが航路ではない、楽な道はいつも目の届かぬ裏に沈んでいる
「とのことです」
「ではまた」
ぴょん
パッ
ジャンプした瞬間に消える
…………
「何だったんだあいつは」
ん?
ガタガタガタガタガタガタ
頭をベッドに埋め込み怯える王子
(………先が思いやられるなこの王子様は)
ガチャ
「おう……」
「お疲れイルマ」
ふぅ
体に傷が刻まれている
「強かったか相手は」
ポン
子供モードに変身する
「あぁ…かなり強かったがなんとかな」
「ジェルダンもなかなかに強かったな」
イルマは辺りを見渡す
「……リリア達はこなかったのか?」
「あぁ」
「どうかしたのか?あいつら」
ダダダ
「あぁ!空いてる!」
ディクスは急足で医務室へ駆け込む
「お前らさっきの声聞こえなかったのか?」
タンスから材料を取り出すディクス
声?
「全く聞こえなかったが」
………
「さっきの女が結界を張ってたのか…」
女?
「まぁいいや」
イルマ
「リリア達は大丈夫なのか?」
「応急処置はしたから大丈夫だが、後数日は動けねぇだろうな」
「魔海域抜けるのにあと1日あるってのに」
ダダダ
ディクスは部屋を後にする
「エリック…女ってのは誰かここにいたのか?」
「まぁな、お前は魔力感知はできなかったのか?」
首を振る
「そうか…」
「今あったことを含めて一回情報を共有しとかないとだな」
エリックは部屋を出る
「じゃあ僕は海獣が来た時のために外にいる」
「いや」
「イルマお前も集まってくれ」
……
「良いのか?」
「もう海獣は出てこないらしい…その事も含めて話あいたい」
「その情報は信頼に値するのか?」
「あぁ、少なくとも俺は信じてもいいと判断した」
「そうか…なら僕も信じよう」




