109話 天の使徒
二日目の魔海域は平常運航
剣と刀を持つ少女が一心不乱に海獣を切り刻む
呆然と眺める大男三人衆
ディクス
「…………」
ゴイツ
「…………」
グレシャ
「…………」
シュパン!
ヒヨルが刀を回すと周囲の海獣が切り刻まれる
ザァン!
リリアは海獣の死角を攻め続け息の根を止める
シュタ
甲板に降り立つ2人の怪人
「まっ海獣もここまでってことかな」
「ですね、少し物足りないくらいです」
余裕の2人
「おいおい」
ディクスが2人へ駆け寄る
「お前らなぁ、俺たちとの連携も考えろよ」
「見てみろあいつらを」
??
ディクスが指差す方向には壁にもたれかかる大男2人
「グレシャよ海底にはまだ見ぬ魚類がいるのか?」
「あぁ…海鮮に関しては飽きが来ないと自信を持って言えるぞ」
世間話に花を咲かせる2人
「どうだ、お前らのせいで戦意が完全に無くなってんだぞ」
「あのいかつい2人がだぞ!」
……
リリアとヒヨルは顔を合わせる
「入ってくればいいじゃん」
「そうですよ」
う……
ディクスはこの時連携という概念はコイツらには無いと確信した
「あのなぁ」
………………
「ていうか」
ディクスは異変に気づく
「海獣が来ないな……」
海面を見渡す3人
「確かに……今まで隙なく来てたのに」
「そうですね…不気味です」
波音だけが響く
…………
バサァ!
!!!
羽音が聞こえる
「あれは……なんだ」
ディクスは空を見上げ音の主を目の当たりにする
霧がかかり光が差さない魔海域に光る一体の生命体
「気をつけて…あいつ相当強いよ」
リリアとヒヨルは武器を構える
と同時に後ろのグレシャ、ゴイツも戦闘体制に入り空を見上げる
「ありえない……なんだあれは」
「神話の中に出てくる天使みたいですね」
バァサァ
上空には翼が生えた人間が滞空している
お前らは何者だ
!!
脳内に直接流れ込む言葉
…………
「最初は自分から名乗るのが礼儀だと思うけど?」
リリアは咄嗟に言葉を返す
ふっ
天使は笑い口を開く
「あいにくだが口で語る名など持ち合わせていない」
「私の名を聞きたくば心から話かけてくれないか?」
「できればな?」
ちっ
「むかつくやつ」
バサ
「答えぬなら死ぬのみ」
!!!
甲板中央に降り立つ天使
(いつの間に!)
ブン!
ギィィィン!!
「礼を説きたくば己が示してみよ」
「人間が」
リリアの剣は天使の素手で止められる
「よけて!リリア!」
ピュン!
ブシャ
「ゔぁあ!」
天使の手から出た光線はリリアの肩を貫通する
バタン
倒れる
「ディクス!リリアを治療するぞ」
ゴイツは服から粉が入った瓶を手に持ちリリアに近寄る
ブン!
「おいおい2対1は卑怯ではないか?」
天使の前後方に刀と槍が襲いかかる
ブォン!
勢いよく振られた武器は空を切る
「なに!」
ドン
「ぐはっ………」
グレシャの腹にめり込む右足
「おうおう、海人も大したことないな」
ドドドド!
ダァァァァァァァァン!
グレシャは吹き飛ばされ壁にめり込む
「おっと……」
バザァン!
「死ねぇ!」
ヒヨルは怒りに任せ刀を振り回す
「おいおいそんな怒るなよ」
タッタッタ
軽快なステップで刀をかわす
バキィ!
ガギィィィ!
刀は船などお構いなしに天使を追従し場を壊していく
「ほう……これは」
速度が上がる刀は天使の回避を凌駕する
カキカキカキン!
天使は刀を手で弾いていく
天使は笑う
「惜しいなお前……自分の血にもう少し誇りを持たんか」
ドッ
「ぐ…………」
ヒヨルの腹に足が抉り込む
ガタン
その場で倒れ込む
バァァァァアアアン!
「私の船で何するんだい?」
甲板で銃を構えるデ・エトラーデ船団 船長 ジェルダン・サーカス
ジュゥゥ
弾丸を受け止めた羽は黒く焦げる
バサ
「何ってここは我々の領地だ……不法侵入には厳正な罰を与えるのは当然だろ?」
カチッ
引き金をひく
「そうかい」
「私はてっきり空が領地で陸地には興味ないと思ったよ」
「その豪華な羽根は空を飛ぶためじゃなくで自慢するためについてたとはね」
「羽根が泣いてるよ?」
バァァァァアアン!
ビュン
「羽は泣かん、ただ私を運ぶだけだ」
銃弾が届く前にジェルダンの懐に移動する天使
グッ
天使は拳を握る
「お前は死ね」
パサァ
ジェルダンのローブから灰色の粉が散布され天使の拳に降りかかる
グッ!
天使の握り拳はその場で固定される
(なんだ……動かない)
ニッ
「仲間に手を出す奴に厳正な罰を与えるのは……」
「当然だよな?」
ジェルダンは銃を手放し拳を握る
ギュゥ
拳の内組織は高密度に圧縮される
ーーー拳鎚ーーー
ブゥン!
ダァァァァァァァァン!
ジェルダンの返す拳が天使を吹き飛ばす
「久々だが……悪くないな」
ジェルダンの拳から煙が舞い上がる
「ディクス!ゴイツ!負傷者は船内に運べ!この羽根は私達で相手する」
「はい!」「了解!」
2人は負傷者を抱え船内へ移動する
バサ
ジェルダンはローブを脱ぐ
「さぁ天使なんて信じてなかったけど」
「真実から目を背けるのは私らしくない……あんたはどう思う?イルマ」
隣に降り立つイルマ
「そんなのは気にすることではない」
「重要なのは敵か否か……敵なら殺すまで」
ふっ
「いいねぇ、私好みの回答だ」
バサァァァァァァァァァ
風圧で散らかった木片が吹き飛ぶ
「殺せるものなら殺してみよ」
「我は空の支配者「天の使徒」なるぞ」
ピカ
瞳は真紅に煌る
ジャキ!
天使の手には十字型の籠手が装備される
「それで刺されたら痛そうだね」
ジェルダンは笑う
ビュン!
風圧と共に消える
バチィ!
「天の使徒なら天にいなよ」
光の籠手を受け止める雷の掌底
「やるな…ならこれはどうだ」
キュィィン
十字の籠手が回転する
ザァン!
「………」
間一髪籠手を避ける
笑う天使
「いいぞ……遅れるなよ」
バババババババババ!!
目にも止まらぬ激しい乱撃
バチバチ!
イルマは電圧を上げ応戦する
ビシャ!
ブチィ!
イルマの体がみるみる千切れる
バァァァァアアアン!
「私も混ぜてよ」
「まぁそう早まるな人間」
逆方向に天使
グッ
(また動かん……だが魔力で中和すれば)
ブン!
天使の籠手がジェルダンへ接近する
バチ
バァァァァアアアン!
ジェルダンと天使の間に籠手を止めるイルマ
バサ!
天使は後方へ距離を取る
「ふ………ふふふ」
笑いながら血が流れる肩を抑える
「ごめんなイルマ」
「首を狙ったつもりだが…しくった」
悔しそうなジェルダン
「ノールックなら上等だ」
両手を握るイルマ
「お前ら今のは狙っていたのか?」
不敵な笑みを浮かべる天使
ジェルダンとイルマは答える
「即興」 「勘」
「いいなお前達は」
羽が揺らぐ
「と」
「いう訳で、私達が敵情視察しに来たんです」
…………
「意味がわからん」
「あばあばあばあばばば!!!!」
医務室で相対する3人
毛布にくるまり怯えまくるウィズラール
呆気に取られるエリック
木製のほうきを片手に持つ謎の女
ーー数分前ーー
ガタガタ
船が大きく揺れる
「何かあったのか……イルマ」
「了解だ」
イルマはエリックの言葉を待たずに部屋を後にする
グー
部屋に轟く腹の音
…………すまん
ウィズラールはボサボサの髪でベッドに座る
「ちょっと待っとけ今イルマに外がどうなってんのか調べさせてる」
「うん……」
「私もお腹すきましたねぇ」
……………
!!!!
医務室の中央にほうきを持った少女
「か………」
驚きすぎて固まる王子
「誰だ………お前は」
目を見開くエリック
ビシ
敬礼する少女
「私達は回帰様直属の護衛部隊「淑天の廻廊」に入ってる」
「ミーマ・エモットと言います」
「どうそよろしくお願いします」
ぺこり
……………
エリック
「今………回帰様って言ったか」
「はい!」
「あなた達は皇国の領地を荒らしすぎています、そのせいで回帰様は少し怒っているのです」
「という訳で、私達が敵情視察しに来たんです」
…………
「意味がわからん」
「あばあばあばあばばば!!!!」
医務室で相対する3人




