10話 混乱
「これが闇市場‥‥」
愕然とするリリア
闇市場はメインステージを囲むように半円の座席が置かれている
席は階段式で一番高い所からメインステージまで結構距離がある
二人は座席中腹部の扉から入った
「あんまキョロキョロすんな」
忠告をすると歩き出すエリック
トコトコトコ
後ろの席、比較的全体が見える所に座る
あたりは音もなく人の気配すらない
ガチャ
人が入る
ガチャ
人が入る
開演時間が迫る中、次々と客が集まる
誰も彼も一直線に席へと歩く
エリックはリリアに紙の表面を見せる
「これが今日の商品一覧だ」
それを掴もうとするリリア
フイッ
避けるエリック
「ちょっと見せてよ」
「ダメだ、勇者の手記は3番目だからそこに集中してくれ」
その時!
パッ
メインステージに光が差した
壇上にいるのは赤のハットに赤の目出しマスク、スーツに蝶ネクタイ片手に声を拡声させる魔道具を持っている
「えぇ本日もご来場いただき誠にありがとうございます」
「今回司会、プレゼンターを務めます「ガジュラ」と申します」
一礼しステージの袖に手を伸ばした
「早速ですが、今回の一品目の登場です!」
ガラガラガラ
荷台を引っ張る顔面紙袋で隠され首輪をつけている大男
「ヒィッ」
口から出る驚嘆の声を手で押さえるリリア
運ばれたのは檻に入っている幼子‥‥首輪をつけられ、右手が鉱石になっている
檻の前にプレゼンターが立つ
「さぁ皆様、こちらは血統種族「オルタリゴン」の幼子です」
幼子は辺りを見るが無反応
「そ……そんな、まだ魔力も未発達なはずなのに」
エリックを見つめるリリア
しかしエリックの視線はメインステージから外れない
「……これが現実だ」
饒舌に喋るプレゼンター
リリアには効くに耐えない雑音だった
声高らかに人を人と思っていない口ぶり
プレゼンターはただ物を少しでも高く売りたい一心で喋っている、まるで商人が叩き売りをしているように
「さぁ!紹介は終わりました…皆様準備はいいですか」
「では…………落札開始!」
開始の合図と同時に今まで静かだった空間に響き渡る怒号と呼び声
「100!110!115!はい19番様115!……120!はい!38番様120」
「どうですかぁ他にいませんか……はい落札ぅ!!」
ドォドォォォォォン!
ステージから爆音が響く
耳を塞ぐリリア
(っち、なんて最悪な売買なの)
檻は袖に戻る
「では続いての商品です!」
ガラガラ
ざわざわ
会場がざわつきだす
「えぇ二つ目の商品は……おじさんです」
…………おじさん!
リリアは目線をステージに向けた
鎖に繋がれたおじさんはボロボロの服で前屈みで立っていた
「これ……こちらの商品はある大貴族様から出品された物です……以上」
「はいまぁ一応紹介しましたが……あっそうだ一文忘れていました」
「なんでも『売れなかったら即殺しても良い』ということなので買ってくださる心が広い方はいますかぁ〜」
「まぁよくあるゴミ処理ですね」
プレゼンターは軽口を叩く
おじさんは急に奇声をあげた
「だれかぁ〜助けてくれぇ頼む、わしは死にたくねぇ」
涙ながらの訴えに会場は失笑
ダン!
プレゼンターが痛めつけるように殴った
ドサァ
倒れるおじさん
ドンドンドン!
踏みつけるプレゼンター
「あぁ!ゴミの分際で何喋ってんだよ、ここでしゃべっていいのはプレゼンターの俺だけだろ!」
「うぅ〜助けてくれぇ」
泣くおじさん、笑う会場
リリアはエリックが持っている札を挙げようとしたその瞬間
「20!」
「……………え!」
手を挙げていたのは無表情のエリックだった
確認するプレゼンター
「えっ本当によろしいのですか?」
札を下ろさないエリック
「でっではこの老人は49番様がらっ落札ぅ!!」
ドォォォォン
「どうゆうことなのよ」
小声で聞くリリア
「安心しろ俺の方から出す」
「ちがっそういう意味じゃなくて」
「では気を取り直し、続いては〜本日の目玉、世界の禁忌を体験したい人は張り合って頂きたい…こちら!」
「あの伝説の聖人『勇者の手記』です!」
ステージには手記が入っている透明な箱と女性がいた
箱には鎖が繋がっており、その鎖は隣の女性の首輪とつながっている
拳に力が入るリリア
「…何あの鎖は」
怒りを通り越し淡々と喋る
プレゼンターは女性の横にたち
「えぇこちらは非常に価値があるものとなっておりますので、箱の鍵はこの女がかけた封緘魔術で隠しております」
……封緘魔術!!
それを聞いて困惑するリリア
(封緘魔術って禁術だったはず、命を代償に対象の物体をかけた本人が承諾するまで隠匿する秘術…それをこうも堂々と言うなんて……)
プレゼンターは紹介を続ける
「もちろんこの女には服従の術をかけておりますので、後で購入者様には調教師立ち会いの元鍵をお渡ししますのでご安心を」
「ではこの世界の禁忌が記されている書物…落札開し…………」
バァン!!
響わたる銃声
プレゼンターの頭には穴が空いていた
女性にも血が飛び散っているが無表情
キャぁぁぁ
会場は大騒ぎ
各人逃げようとする者、代表者を守る者、状況を把握する者、三者三様に動いている
コツコツコツ
袖からタキシードにハットを被り杖を持っている男が歩いてくる
その男は女性を見て
「う〜ん、これは洗脳されていますねぇ実に不愉快だ」
パチン
指を鳴らすと女性は倒れた
「おっと倒れては危ない、この子を運びたまえ」
すると現れた黒い服を着た男が抱き抱えその場を去る
リリアは銃声と共に行動しようとしたがエリックに止められていた
「まだ…動くな」
リリアは辺りを見渡すと逃げようとした者は扉から入ってきた巨漢の黒服に皆殺されている
「……いつの間に」
「最初から捨てられてたんだよここは…」
エリックは言葉を漏らす
「えっそれはどういう……」
リリアはメインステージに目を向けると
両手血だらけの少年が立っていた
「……あの時の」
いじめられていた時とは雰囲気、髪型が異なっていたが
一目でリリアは気づいた
リリアと少年の視線が交わる
バッ!
リリアの目の前に少年
「またあえたね、おねいちゃん」
ダァァン!
少年の拳が振り下ろされる
煙の中少年は辺りを見渡す
「へへっやっぱおもしろいなぁ……強い人って」
「でも逃さないよおねえちゃん」
ハッ…ハッ…ハッ
ドッ
ダン
バキィ
会場は戦場になり辺りで殺し合いが始まる
リリアは走りながら黒い大きい人が今回の襲撃者集団だと判断した
その中を潜り抜ける
リリアはエリックを担ぎながら攻撃を交わしている
リリアの背中からエリックの声が聞こえる
「おまっなんで黄金に狙われてんだよ!」
前を見て走るリリア
「しっ知らないわよ、こっちが聞きたい」
ダッダッダッ
階段を降り扉を目指す
「とりあえずあんたを安全な場所に移動させてから手記を奪う……それでいい?」
担がれているエリック
「ふざけんな…この場合目的が一つでも達成されたら潔く帰るんだよ!」
「達成されてないでしょ!」
「されてんだよ!」
扉は目の前、障害物なし、走るリリア
「なんでもいいけどまず安全な場所に行くからね!」
グルン
「ぐふぁ」
投げ飛ばされるエリック
目の前には
剣と拳がぶつかり合っていた
「あんたどこまで追ってくんのよ……」
「僕がおねえちゃんより強いってわかったらやめたげる」
黄金は拳をリリアに向け繰り出す
その速度は目で追える速さを優に超えていた
キンキンキン
負けじと全てを流すリリア
「はぁ!」
隙に剣は黄金の腹に届く
ダァン!
扉の側部に激突する
「ねぇ私のお守りなしで行ける?」
エリックは立ち上がり
「なめんな、戦えなくたって出来る事はごまんとある」
走り出すエリックにリリアが言う
「あとは頼んだよ」
「おう、そっちも頼んだぜ」
「いいねぇ効くよ、その変な攻撃さぁ」
瓦礫の中から光る黄金
あたりは殺し合いが続いているがなぜかリリアを襲う黒服はいない
周囲を見るリリア
「まさかあなたがリーダーなの?」
笑みを浮かべる黄金
「違うよ、僕が君と遊びたいって言ったらみんながいいよって言ったんだ」
「ただそれだけ…………だよ!」
ビュン
一気に距離は縮まる
ダン!
キン!
「いいねぇ…これはどう!」
黄金は右足で飛び、左足で回し蹴り
フンッ
かわし剣をふるう
剣と拳の一進一退の攻防が続く
一方、エリックは頭から血を流し黒服に担がれ会場を後にした




