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勇者が死んだ罪と罰  作者: 吉
3章 勇者の宛名
108/116

107話 苦しむにはまだ早い

ガチャ

「やっと戦えるにゃ!!」

船上の扉が開き勢いよくニネットが飛び出す

「じゃよろしくな」

入れ違いで船内に入るアンス

その足で待機室へと移動する

ガチャ

「お疲れ様」

そこにはこれからの戦闘に待機する面々

ヒヨル

「どうでした?魔海域は」

あぁ……

「どうしたの?」

パッとしない表情のアンス

「まぁジェルダン曰く、魔海域は海人がいればどうってこともないらしい」

??

その場で訳を説明する

グレシャがいれば海流にながされて進路を見失うことも海中からの死角がなくなり危険要素がゼロになる

この数時間でグレシャが舵をとり海獣を撃破していた

「とまぁ………魔海域とは陸人だけだったら渡航は難しいってだけだとよ」

ふーん

ディクス

「船長のテンションがた落ちだったろ?」

頷くアンス

はっはっは

「そうだろ、船長は面白く無くなった途端露骨に下がるからな」

ヒヨル

「でもでも、なんでグレシャは航海術にたけてるんですか?」

「海中に住んでたんですよね?」

リリア

「確かに」

「海中なら航海なんてしないでしょ」

アンス

「あぁ…グレシャ曰く海人族には生まれながらに皮膚に特殊な膜が張ってあって」

「それが水中と大気中の人体に必要な元素を取り込むらしい」

「その過程で水の流れと風の流れを正確に捉えられるって言ってたけど……本当かは知らん」

ガチャ

!!!

待機室の扉が開く

「………何してんだよお前」

アンスの目の前に今にも泣きそうな海人が一人

うぅ……

「ジェルダンにもう戻れと言われてしまった……」

「私が何か気に触ることをしたのだろうか……」

…………

ディクスは立ち上がりグレシャの肩にそっと手をそえる

「まぁ座れよ……すまねぇな船長のわがままだから許してくれ」

ガタンガタン!

!!!

船が揺れる

「おぉ!なんだ」

アンスは壁にもたれる

「なんか揺れが強くなってきましたね」

ヒヨルは一緒に揺れる

「多分…船長が楽しんでるんだろ」


「いやっほぉぉ!」

バンバン!

笑いながら船を走りながら銃を乱射するジェルダン

船の周りには5体の海獣がひしめき合う

「ニネット!素材くれ!」

ジェルダンの掛け声とともにニネットはしゃがむ

「まっかせる〜〜」

にゃ!

ビュン!

全身を使いトップスピードで海獣へと突進する

ニネットの前には8本の触手が生えた海獣

ビュビュン!!

触手はニネット目掛けて速度を上げる

「そんなんじゃ捕まってあげないにゃ」

ジャキジャキ!

触手は先端から刻まれていく

ニネットの手には鉄製の鉤爪かぎづめ

「船長!」

ジェルダンは落ちてくる触手に手を掲げる

「いいね……海獣の弾はどんなものか」

ジュゥゥゥゥ

手に集まる触手は塊になり熱を帯びる

「これは……いささか奇妙だね」

ジェルダンの手にはグニョグニョした弾丸

「まぁいいか、郷にいれば郷に従えって小さい頃習ったし」

「未知も吉として捉えよう」

ゴォォォォオオオ!

触手海獣は血飛沫ををあげながら海中へと消えていく

海獣の血飛沫の中で笑うニネット

その背後から新たな海獣


バァァァン!

銃声と共に弾丸が発射される

ヒュゥゥゥグパァ!!

弾丸は海獣の前で変形し触手が展開する

「ほぅ……これがあの海獣の魔因子か」

触手は海獣に巻きつき呼吸器官を塞ぐ

「船長!」

ニネットは甲板に着地する

「ありがとうねニネット」

「しかしまぁ……こっちにも容赦を知らない奴がいるね」

二人は反対側の海上を見る

バチバチ!

ジュゥ

海獣が焼け焦げる

「あの海人がいないなら、出し惜しみは無しだな」

浮遊魔術に加え雷で圧倒するイルマ

右手を前に突き出す

ビリ

右手に纏う雷電

暗雲立ちこめる海を照らす一つの光

見上げるジェルダンとニネット

「あいつ船を壊す気……なのかにゃ」

イルマに集まる膨大な魔力を感じるニネット

ふふふ

「大丈夫だろ」

「あの子は誰よりも気遣い上手だからね」

ピカ

景色が変わる


ーーーー界雷かいらいーーーー


ドッゴォォォォォォオオオオオ!!!

イルマの手から放たれた5つの雷は船を囲むように海獣へ飛来する

周囲の海獣は沈黙し水の中へと消え失せる

「グレシャはまだ休んでいても大丈夫だな」

平然と船に帰還する

「まぁ…そろそろ君も休んでもいい時間だよイルマ?」

僕?

「何を言っているジェルダン」

「僕はまだまだ本気じゃない」

「にゃ!」

「何をする」

イルマを叩く

「私たちの分まで倒しちゃダメにゃ!」

「船長がせっかく乗ってきたににゃ」

イルマはジェルダンの方へ向く

「そうだったのか?」

「いやいや」

「君の魔術が見れて嬉しい限りだよ」

………

「だそうだ」

……

「ならいいにゃ」

何か不満げなニネット

バザァァ

船から覗く海獣達の巨顔きょがん

「日暮まであと5時間、気合い入れようか!」

「はいにゃ!」「あぁ」


ぐーぐー

医務室で寝息を立てるエリック

その横で不安そうな顔をしているウィズラール

「よく眠れるなこの状況で……」

「うるせぇ」

!!

「起きてたのか……」

「寝息がうるさかったから寝てたと思ったぞ」

エリックは天井を見つめる

「寝ようとしたけど陰険な王子のせいで悪夢を見そうでな」

ウィズラール

「悪かったな」

………

ドゴォ

船外では音が鳴り止まない

「エリックは大変そうだな」

「まぁお子様にもわかりやすいくらいには大変だな」

エリックは澄ました口調で話す

「おいらが言ってるのは何かをするってことじゃない」

……?

「ただみんなが戦ってるのをただ茫然ぼうぜんと待つのも苦しいだろうなって思っただけだ」

「エリックだって好きで戦わない訳じゃないんだろ?」

エリックは少し沈黙する

「子供のくせに変なとこに気づくな」

ウィズラールは膝を抱える

「おいらだって今……苦しいから」

「ウィズラール……」

わしゃわしゃ

「何すんだエリック」

エリックはウィズラールの頭をぐしゃぐしゃにする

「バカ言ってんじゃねぇ」

「お前にはまだ戦う力が残ってんだろ」

「まだあんだろ戦える未来がよ」

「今はその助走に過ぎない、だから苦しむにはまだ早い」

………エリック



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