106話 海人の活躍
グレシャ先生の魔海域講座では海獣は多種にわたりそれぞれの進化を遂げていることや天候や海も変化しやすく荒れやすい事や船底には海獣たちが嫌がる魔石を敷き詰めれば沈没は防げると言った基礎情報を生徒に叩き込んだ
先生は「先生はよくここまでこれましたね」という生徒からの言葉で「いやいや海人では当たり前だ、君たちでもやればできるさ」と返答した
その言葉を聞いて生徒の一人であるアンス君は疑心を浮かべ「いやいやあんたが強いだけだろ」と心の中でツッコンだ
船は帆をたたみ風を切る
「いいねぇ風の匂いが強くなってきたぁ」
髪をなびかせ前を見る
「あんま前行くなよ」
甲板で座るアンスとイルマ
トン
トン
シュタ
ジェルダンは甲板へ飛び移る
「まぁそんな堅いことは言うなよ、命を預ける仲だろ?」
のそ
後ろから大男グレシャ
「君たちの魔術を聞いてもいいかな?」
……
アンスはトンカチを出す
「俺は…叩いた素材を広げたり硬くしたりできる」
ほぉ
「それはすごいな」
「で君は?」
バチィ!
雷が走る
「………驚いたな」
大きくなったイルマを目の前に驚きを隠せないグレシャ
「僕は電気だ、水に流すと感電するから性質を抑えないといけないからフルパワーは出せないがな」
「まぁそれでも戦力にはなるから安心しろ」
「なるほど、それでか……」
ジェルダンは一人で納得する
アンスはイルマを見る
「お前……髪切ったのか?」
イルマは変身に伴い伸びていた髪は変身前との差が無くなっていた
「あぁ……」
「まぁ戦う時に邪魔だから調節した」
「調節ってお前な…」
グレシャは一礼をする
「よろしく頼む」
「で、ジェルダンの魔術は聞いてもいいか?」
不服そうなジェルダン
「まぁ私は非力な魔術だよ」
ゴソゴソ
ジェルダンはポケットから黒い粉を出す
パサァ
ギュィィン!
宙に舞った粉はジェルダンの手の平で塊になる
「私の魔術は{圧縮}」
「無機物なら際限なく圧縮できるが強度と硬度で使う魔力量が異なる」
「それに私の限界魔力を超える物質はむり、例えば最硬度の「シグナリア」とかな」
「利点は魔石を粉末状で持ち運べば銃弾にするより持ち運びやすく量も多くできる」
「密度は込めた魔力に依存するから普通の弾丸より硬度は高い」
はぁ……
「すごいじゃないかジェルダン」
グレシャは褒める
「そうは思わないか?アンス、イルマ!」
「あぁ!すごいと思うぜ船長!」
便乗するアンス
あはは
「すごいね」
流れに乗るイルマ
………
「そうかなぁ」
まんざらでもないジェルダン
ビュゥ
生ぬるい風が吹く
「さぁて……じゃあ褒めてもらったお礼に開戦の一発を見せようかな」
ゴゴゴゴ
雲が深まり辺りの視界が悪くなる
「もっと魔石を軽量化して船全体に置ければ早いんだけどね」
「何を言う」
「海獣が嫌がる魔石は一定の出力を超えると人間にも危害が及ぶと言っただろう」
「重さがどうこうの話ではない」
「知ってるよそのくらい、ただ言ってみただけさ」
「それに船体にはカイナイの樹液を塗ってるから海獣による船体への攻撃もなくせる」
ジュゥ
ジェルダンの右手には光る弾
「じゃ始めようか」
バシャァァァ!
海上に姿を現す単眼の海獣
ジュゥゥ
煙をあげながら魔銃に圧縮弾を装填する
「すごい魔力だな」
隣のグレシャがジェルダンを中心に集まる風になびく
バザァン!
水飛沫を上げながら船に襲いかかる海獣
「でかいなあれ」
見上げるアンスとイルマ
ビィ
魔銃が光を発する
「少しうるさいけど我慢してね」
バァァァァァァァァァァァァァァァァアアアン!
!!!
ジュパァァァン!
轟音と共に射出された閃光は海獣の脳天を貫き空へと舞い上がる
海獣は海へと消える
バシャァァ!
二又の顔をもつ海獣と牙を剥き出しにした海獣
ははは
笑うジェルダン
「さっすが魔海域だね!」
「海中からやばい魔力がビンビン感じるぅぅ!!!」
「今度は任せとけ」
ダダダ
イルマとアンスは前に走り出す
ダッ
ドドン!
船首につくとトンカチで床を叩く
「うまく合わせろよイルマ!」
「あぁ」
ビュン!
船の柵が変形し先が尖った槍になる
タッタタタ
イルマは雷を纏い変形した数本の槍の上を走りわたる
「海獣か……なかなか面白いな」
目の前には口を開け襲いかかる双頭
バチィ!
雷鳴と共に姿を消す
ビュゥゥゥ!!
双頭の周りに枝分かれする木の槍
バチバチバチバチ!!!
槍を足場にイルマの閃光が縦横無尽に頭を乱打
ジュゥゥ
双頭が焼け焦げ海へと落下
海へと降下するイルマ
………
ガバァ!
横から牙を剥き出しにした海獣
フッ
笑うイルマ
「ジャァァアアア!」
海獣の雄叫び唾と共に飛来
ドガ!
海獣の顔が木の棒に当たり吹き飛ばされる
イルマは船から伸びる木の棒に着地
「あんま船を改造しないでくれよ?」
後ろからヤジを飛ばすジェルダン
「心配すんなよ、数分したら勝手に元に戻るから」
海獣と戦う中 ー船内ー
医務室
戦いに参加しない2人が座っている
「おいエリック」
「なんだよ王子様」
ベッドに横たわるエリックと椅子に座るウィズラール
「おいらは……何をすればいいんだ」
………
ウィズラールはうつむく
「どうしたらって……さっき大男に言われたろ」
「生きろって」
「そうじゃなくてだな」
「今だってみんなが戦ってるのにおいらはこうして安全な所で喋ってるだけだ」
「それにこの後だって王国ではない所に行く……王国が危機に陥っているなら王子であるおいらがなすべき事をなさねば例え王国が助かっても戻る顔がない」
「おいらも父様のように己が力で皆を導かなければ……肩書きだけの王などになりたくはない」
よっと
エリックは体を起こす
「じゃあ逆に聞くが」
「お前にとって王のなすべき事ってなんだ?」
え………
「さっきからお前はなすべきだの肩書きだけの王だの言ってるが」
「お前が思う王の形はなんだよ」
「おいらが思う王………それは」
顔を上げる
「民が安心して暮らせる国を守る……」
「それがおいらがなりたい王だ」
ふっ
「わかってんなら結構な事だ」
「じゃあ最後に」
「お前はグレシャ達海兵を信用してるか?」
「もちろんだ!」
エリックの言葉を遮るように即答する
「グレシャ達は父様と共にラティスを守護してきた精鋭」
「あやつらがいなければ今頃国は滅んでいる」
ビシ!
「ならお前がやる事は一つ」
!?
「今はみんなを信頼して出番を待て」
「船団の奴らも俺の連れも信頼に値する奴らだ」
「だから俺らのことも信用して任せてくれ」
「お前が胸はって王になれるよう協力するからよ」
笑うエリック
………
ガバ!
ウィズラールは頭を下げる
「頼む……おいらも全力でお前達を信用する」
「国を助けてくれエリック」
「心配はいらねぇよ」
エリックは窓を覗く
「あいつらはお前が思ってる何倍も強ぇんだ」
ズパァン!
轟音と共に空に舞う獣の首
「最初はテンション上がったのに……まぁ」
「こんなもんかね」
煙が上がる銃を持つジェルダン
船が通った海路には海獣の死骸が浮かび上がる
その数百に迫る勢い
「まだ始まったばかりだろ気を抜くな」
イルマは船首に立ち先を見据える
パカ
アンスは時計を開け時刻を確認する
「開始からざっと3時間………まぁ海人の強さがわかっただけだな」
これまでの戦闘のほとんどがグレシャによる水中からの一撃に終わっていた
ザパァ
水面から勢いよく飛び出す海人
ダダ!
飛沫をあげ甲板に着地するグレシャ
「まだ魔海域序盤だ!気合い入れていこう!」
……………
テンションが釣り合わない
「どうしたジェルダン、先程までは気合い十分だったろ」
…………
「まぁ、頑張ろう」
その後海人の活躍は続いた




