104話 原始の世界
「原始の世界は血統種族の秘技みたいなもんだ」
エリックは淡々と喋る
頷くグレシャ
「その通り、血統種族ごとの祖先である源流の魔力を体に宿す奥義」
「それは素養、素質、素材、が重ならなければ起こらない「神秘の御業」と言われている程だ」
「それに加え原始の世界は種族で一人しか発現しないと言われている」
………
リリア
「じゃあ……そのフードは王子の力を利用しようとしてるってこと?」
グレシャ
「恐らくだが、海人族の原始の世界である王子を王座に置き海人族の領地を広げようとしていると思われる」
手持ちの地図を広げるジェルダン
「ってことは……海域を広げるってことかな?」
「いや違う」
……?
「奴らは海域だけではなく陸地への進軍も考慮している危険性がある」
!!!
「それって!」
声をあげるリリア
一同は驚く中ピンときていない二人を置き去りに会話は進む
「フードは私をみて「半人」と言っていたことを思うに、真正種族の再興と行った所だな」
アンス
「半人って……どういう意味なんだ?」
「半人というのはいわば蔑称、我々マリアレィス種族は海洋生物より陸人に近い容姿をしているからな」
「一昔……それも淵海街という王都から離れた居住地域で流行った差別用語だ」
「その言葉は王命により禁止とされていたが……まぁヒレもない奴らは海人族じゃなく半端者ってことだな」
「そうだったのか……」
アンスはグレシャの表情から察する
「だがフードはただの蔑称で呼んだ訳ではないと私は思う」
「それはなぜかな?」
「あいつは王室……しかも王の亡骸の前で言い放った」
「それは今までの海人族のあり方を侮辱する行為」
拳を握る
「あいつは王と王妃を手にかけただけではなく…我々が築き上げてきたものを嘲笑ったのだ…」
「これは屈辱の言葉では言い表わすことは出来ない!」
エリック
「それに加えさっきお前が言ったことが本当なら」
「この問題は海人族だけの問題じゃなくなるぞ」
………?
ヒヨルは首を傾げる
「王子がやばい力で世界を滅ぼすからですか?」
「そんな個の力の問題じゃない」
「海人が陸地への進軍を始めたら嫌でも陸人は戦わなければならない、そうすると」
「数百年の不可侵条約が破られ海人と陸人の」
種族間戦争に発展する
「種族間戦争!!」
「それってやばいじゃないですか!!」
驚くヒヨル
ジェルダン
「どうしたものか……しかもなんで今になって不可侵を破ろうなんて」
「原始の世界なら過去にもいただろう」
「魔王だな」
「魔王?どういうことだエリック」
「ジェルダンが言うように過去にも原始の世界がいた」
「だが進軍は起こらなかった、しかも過去数百年の陸人は今よりも魔術の質という点では劣っている」
「なら陸人以外で陸への侵攻を躊躇する外的要因があったはず…海人からも厄介な陸人以外の危険分子」
リリア
「それって………」
「あぁ過去陸人を支配していた絶対の魔王……それしかいねぇだろ」
「文献だけでも魔王の恐ろしさがわかる、意味わかんねぇほどの力を持っていたらしい原始の世界なんて可愛いく思えるほどのな」
「エリックの言う通りだ、我々海人族では幼少期から習う言葉がある」
空を眼下に海を眺め陸を支配するそれすなわち魔王なり
「これは海人族が陸へ上がらないよう魔王の強大さを謳った言葉だと聞いている」
「真意は定かではないが魔王の支配は陸にあり海は景色として何もするなと忠告しているのだと私は解釈している」
「それに加えあの魔王が自ら初めて陸に力を下した衝撃波は海の底まで振動が伝わったほどだ」
アグバの天害
「だな……」
頷くグレシャ
「それ……私も知ってます」
ヒヨルは悲しそうな表情
エリック
「まぁバカでも知ってる……ていうか知らなきゃ行けない災厄だもんな」
「魔王征伐の5年前のアグバ共和国に起きた地獄の3日間」
…………
一同は顔を伏せる
エリックは話を続ける
「当時世界最強だったアグバ共和国の騎士アルスラーンが率いていた騎士団を滅ぼすために魔王軍主力が一斉に攻め込んだ一連の総称」
1日目、地鳴りが鳴り止まず、大挙した魔獣に包囲され
2日目、空が太陽を隠し、宵闇から魔人が飛来する
3日目、光が落ち闇が包む、アグバが一瞬にして焼土へと果てる
「周辺国家はアグバへの救援要請を断り見捨てた」
「実際は魔王からの勅命「アグバに差し伸べる手は全て虚無へと帰す」の言葉にビビった奴ら……」
「まぁそいつらを責める気にはなれねぇけどな」
ケッ
ディクスは息を吐く
「何回聞いても気持ち悪りぃ話だ」
「3日目で魔王が全て壊すなら1日、2日目は見せしめで痛ぶってたってことだろ」
「まぁそうだろうな」
「しかもアルスラーンは2日目にすでに死んでいたと報告されている」
くそ!
「落ち着きなさいディクス」
「今感情的になってもいい事はないですよ」
ゴイツは落ち着きながら身震いしている
パン!
ジェルダンは手を叩く
「過去話に想いを馳せるのは結構だが今現状どうやったら種族間戦争を回避できるかを話し合おうじゃないか」
「なぁエリック?」
視線がエリックに集まる
う〜ん
考えるエリック
「なぁグレシャ」
?
「なんだエリック」
「これから言うことは一つの案だと思って聞いてくれるか?」
…………
「あぁ君の案なら口を挟みはしない」
そうか
「なら手っ取り早い話が一つある」
ピシ
エリックは指を立てる
「王子の原始の世界を意図的に使い、逆賊を一人二人殺して……」
「陸人のどこの国でもいいが」
「ラティス王国と国交を開け、もしくは協定を結べ」
!!
「それは……どう言う意味だ」
「簡単な話だ、今海底にいる民衆は閉鎖空間で魔王なき陸は簡単に手に入れられると思ってんだろ?」
頷くグレシャ
「そうなればだ、前王の意向が気に食わないから反発する」
「しかもその王は殺され新たなトップが誕生したらそれこそ国は陸へと上がる」
「その前に王子を覚醒させて、力を見せつけて民衆がバカでもわかるように先頭に立ち陸人の国と友好の証を持って国にぶら下げろ」
「そうすれば民衆の方向は定まる」
……………
黙るグレシャ
「だが不可侵条約はどうする、100年も続いたのだぞ…簡単に改訂できるものなのか?」
知るかそんなもん
??
「知らん……て、今エリック……君が言ったことだぞ」
「だから言ったろ一つの案だって」
「それに原始の世界をものにできればいくらガキでも今回の件は収束できる」
「まぁ……あのお子様がどうするかだがな」
…………
「どうしたグレシャ」
表情が重いグレシャ
「いや………そうだな……」
「エリックの案もわかる……わかるのだが私は」
「王子には渦中にいてほしくない」
…………
ジェルダン
「それはどう言う意味かな?」
「王子は……王子は本当に優しい子で本当に人を傷つけるなんて考えもしない人なんだ」
「それに今回の件を王子が知ったらと思うと…このままどうか王子には平和の中で生きてほしい」
「汚れ仕事は私が全部引きうける…だからどうか王子には戦ってほしくない…」
グレシャは顔を下げる
「その平和ってのは今この状況でも続いてる物なのか?」
「国は滅びかけ、両親は死に、種族の奥義を受け継ぎ戦争の引き金になる可能性がるこの状況だぞ?」
…………
「エリック……」
リリアはエリックを見つめる
エリックは話を続ける
「現実を見ようって話だ…わかるよな?」
頷くグレシャ
「どんな経路を辿ろうと最後に行き着くのは王子が王になって海帝王国を統べるか、戦争の二つだ」
「しかもそのどっちの道でも王子は戦う」
「覚悟を決めろグレシャ」
「あのガキは現実から目を背ける程弱いやつなのか?」
……
「そうだな、すまない」
がた
グレシャは立ち上がる
「王子には王になっていただく他ない」
だが
「私が見た事の顛末は私の口から言わせてほしい」
「これだけは頼む」
グレシャは頭を下げる
ふふ
ジェルダンは微笑む
「頼むよグレシャ」
「私たちが言うには少し荷が重すぎるからね」
「そうだな」
笑うグレシャ
「ではまず、私は明日の魔海域で貢献するとしよう」
「じゃ俺も王子のお守りするかな」
エリックは自信気な表情
「お守られるの間違いじゃないの?」
ニヤつくリリア
「うっせぇ」
ふふふ
「ここら辺でお開きでいいかな?」
「うちのメグリちゃんは少しおねむだ」
「………」
メグリはジェルダンの肩に頭を乗せる
「じゃ、明日」
エリック
「明日の6時にまた談話室に集合な」
「そこで作戦を伝える」
はーい
解散し各々寝室へと向かう
談話室にはエリックとグレシャ
…………
「よく俺のアイコンタクトが伝わったなグレシャ」
「何を言うコンタクトを送っていたのは私の方だ」
「じゃ、俺が感受性豊かだったのか」
「そうだな」
「ではお互い聞きたいことがあると…しかも同じことを聞きたいと思ってもいいか?」
頷くエリック
はぁ
ため息を開くグレシャ
「では……」
両者口を開く
「ソードって誰だ」
「ソード様はどこにいる」




