99話 ラティス
初めにラティス王国は海人の国と言われていますが厳密には多種族国家です
1番人口が多い「マリアレィス」を筆頭に「トリガ」「イガワラ」の3種族で構成されています
兵団や評議会では種族間差別を是正するために3種族からそれぞれ同一人数の選出が行われていました
ですが中では王がマリアレィス族という現実が受け入れられない派閥も存在していました
陛下は種族間での争いを最も嫌厭していたので両種族から右大臣と左大臣を選出し国のあらゆる議会で王に意見を出せる立場を設けたのです
それを機に3種族間でのいざこざは収束したに見えたのですが
……………?
話について来れないヒヨルとニネット
「お前らわかってないだろ」
!!
エリックからの指摘に驚く二人
「わかってますよ……多分」
「私もわかってるにゃ………にゃ」
ぺら
カキカキ
エリックは紙を机に広げ関係図を書き出す
「すまない…噛み砕いて話したつもりだがわかりづらかったか」
グレシャはうつむく
「いいよ今ので、この二人がバカなだけだから」
「わからなかったらこっちから質問するからお前は気にせず話してくれ」
あぁ
我ら海帝兵団は3つの組織から構成されている
「メーア」「マール」「ユーラ」とそれぞれ種族から強靭な戦士が兵団長に任命され各兵士は希望する兵団に入る
それぞれ担当海域が異なり、私が率いるメーア兵団は海王城の警邏、マールは居住区、ユーラは外海を守っていた
グレシャはうつむく
「別になんて事のない日だった……」
「私は陛下が起床する時間の1時間前に海王城へ入り夜中警備兵である副兵団長と交代をしようと城に入ると…」
「城内には悲鳴と悪臭で辺りは埋め尽くされていた…」
「私は城内に入るまでその惨劇を感知できなかった……」
ジェルダン
「一ついいかな?」
「夜中の魔術対策はどうなっているのかな?」
「話を聞くと結界魔術で王城の中と外が断絶されているように思えるが」
グレシャは頷く
「夜中に限らず王城内での魔術使用は登録されている魔術以外が発動されると地下1海の魔導兵器が自動展開される手筈となっています……ですがその兵器が起動されたな買ったのです」
エリック
「登録されてる魔術ってのはわかってんのか?」
「はい、日中では陛下と兵団長3人だけですが……夜中では陛下のみの魔術だけが有効です」
エリックは顎に手を置く
「それを知ってる人物はどれくらいいるんだ?」
「登録されている4人だけです、他の兵士達には王城内では全ての魔術が兵器起動対象になり得ると言っております」
「なので王城へ入る人物全てに封魔の腕輪をつけ着脱権限は全て王に帰属しているので誰も魔術は使えないはずでした」
「王城へ入った私は陛下とそのご家族の身柄の確認及び保護を最優先に行動し、王室へ行くと血だらけの同胞とからの部屋が…その次に王子と王妃が寝ている部屋へ行きました」
「そこで立ち尽くしている王子と…………」
「前で倒れる王妃の姿が………あり……私は王子を抱え必死に逃げました」
「敵兵がどこまで手を伸ばしているかがわからなかったので…国を去り魔海域を通りここまで来ました」
「そして、海人と関わりのない陸人の方々へ助力を願い、海を渡っていました」
アンス
「てかあんた…魔海域を一人で…しかも王子抱えて通ったのか?」
「魔海獣はどうしたんだよ」
「向かうものは倒した」
え…
「倒したってあんた…」
?
「別に魔海獣など誰でも倒せると思うのだが?」
アンスは思う
(こいつの平均は狂ってやがる)
「魔海域を通る船ははぐれ者の強者と聞いていたので…私を見て逃げ出さない人たちならこの一件をどうにかしていただけると……浅い考えで…申し訳ない」
グレシャは頭を下げる
「それだけか?」
エリックは問い直す
「話が飛び飛びでイマイチ状況がわからん」
リリア
「ちょっと!言い方」
「グレシャだって色々あって頭が追いつかないんでしょ」
「だからなんだ?」
「だからって……あんたね」
ペラ
エリックは紙を持ち上げる
「いいか海人、そっちが情報を隠すなら俺たちはお前らを海に投げて進む」
「それは!…………」
「俺たちだって今からバカでかい海獣と戦うってところなんだ」
「中途半端な情報で時間と思考を持って行かれるくらいならお前達を捨てる」
「あとは陸まで泳ぐなり死ぬなり勝手にしてくれ」
バン!
リリアは机を叩き立ち上がる
「そんな言い方ないでしょ!あんたには罪悪感ってもんがないの?」
「この人達は命をかけてここまで来たんだよ!私達だって何か少しでも助けになろうって気はないわけ?」
リリアはエリックを睨みつける
「いいのか船長?」
ディクスはジェルダンへ問う
「この旅はあいつらの頼みだからね」
「私たちは要望に応えるだけ……それじゃ不服かな?ディクス」
ふん
「いいや、あんたがいいならそれでいい」
エリック
「じゃあお前はいい案あるのか?この何か隠してる海人を助けつつ、魔海域を突破して皇国に入ってからの算段を立てつつ勇者の情報をどうやったら効率よく聞き出せるかを考えられるのか?」
「あるなら俺はそれに従う……無いなら頼むから黙ってくれ」
…………
リリアは無言になる
バッ!
顔を上げる
「明日までに…絶対に考えるから」
「まだ結論は出さないで…絶対」
ダッダ
ガチャ!!
部屋を後にするリリア
「リリア………」
ヒヨルも立ち上がり出口へ歩き出す
「私はバカですが……」
「エリックさんが正しいのかもしれません……でも正しいだけじゃ何も解決しないと思います」
「あぁ…わかってるよ」
ふふ
ジェルダンは微笑む
「私たちはあんたらの意見を尊重するから私達への配慮はいらないよエリック?」
ガタ
エリックは立ち上がる
「あぁすまねぇな」
おい海人
「さっきも言ったが俺は別にお前を助けない選択肢だってある」
「そのことをよく憶えてから明日また話を聞かせろ」
グレシャは頷く
部屋を後にするエリック
それを追うアンス
…………………………
「やぁ大変なことになったねぇ」
平然と振る舞うジェルダン
「そうだな…俺らの船はどこへ行くのやら」
椅子にもたれるディクス
「全くですな、だがこれも船長の意である以上我らの航路に変わりはない」
肘をつき微笑むゴイツ
「なぁんか難しい話ばかりでお腹減ったにゃ」
机に顔を埋めるニネット
…………
寝ているメグリ
「でもよかったな海人」
グレシャに語りかけるジェルダン
「えぇ………そうですね」
「私らだけだったら海に投げる前に殺してた所だよ」
!!
ガタ
グレシャの体が微動する
「落ち着けよ海人」
ディクスは笑顔で肩に手を置く
「さっきも言ったろ?俺達はあいつらの要望に応えるって…」
「そうビビんなよ大男がよぉ」
うんうん
頷くゴイツ
「先程あなたも言ったでしょう」
「魔海域に挑む船ははぐれ者の強者……我らとて例外ではない」
「安心して身を任せなさい」
パン
ジェルダンは手を叩く
「では寝るとしようか、明日の審議が決するまで」
「グレシャもさっきの王子と一緒に寝るといい」
「あぁ…………感謝する」
「あぁそれと」
「夜の海はどこから襲われるかわからないから」
「間違っても入らない方がいい」
「これは忠告ではなく……警告だからね」
「あぁ……理解した」
月明かりが光る海上
船は進むが航路は分かれる




