[二部三章]その頃
三章最終話、未希姉視点です。
さてさて今回は幕間のようで本編な未希おねえちゃんです。
さーてと、まず私の現状から解説すると、前に病院に勤めることになったって言ったよね。
まぁその通り、ずっとかわしろ病院ってところにいるんだけどね、なんだか跡継ぎの要くん?が、私の研究内容に興味を持ったとかで研究室丸っと一室貸してくれてね、いろいろと調べてみてるんだぁ。
研究の内容はそうだね、隠しておくものでもないし言ってしまうと、“ドッペルゲンガー”について。
ある種あの時に現れたもう一人の葵ちゃんは、都市伝説で言うドッペルゲンガーに近い現象のようなものだった。
けれども彼女‥‥‥‥葵ちゃんね?葵ちゃんの方が、彼女は彼女でいていい。って痛み分けどころか一部安定するために大事な基盤を渡してしまったわけなのよ。
だから彼女‥‥‥‥‥今度はもう一人の方ね?そっちの方の子が安定することはできたのだけれど、葵ちゃんの方が不安定になっちゃったわけ。
その辺の話はきっと他のみんなの視点やお話から知っているはずよね。
うん。私はその欠けた部分をどうにかできないか研究をしているわけなんだけれど、そうね。
端的に言ってしまえば、無理ね。
うん、無理無理
だってそんなことしたらせっかく葵ちゃんが助けた彼女が欠けてしまうもの。
双子でもない限り共存の道はない。
その結論に至ったわ。
と、言うことは、よ。
“双子に近い存在”として顕現させればいいだけ。
つまり、欠けたものを元通りに戻せないなら新しく作ってしまえばいいだけの事。
うん?意味が分からないって?
ふふ、その言葉のとおりよ。
感情が欠けたなら新しく感情を獲得すればいいだけの事。
けどねぇ、困っちゃった。
それが分かった時点で連絡とろうとしたら丁度入れ違いになったのか彼ら従者たちと連絡が取れなくなっているんだもの。
どこかで葵ちゃん達と会えると伝えられるから楽なんだけれどね。
けれど、今の職業は正直手放しがたいし、また入れ違いになるのも怖いからそのまま勤めているってわけ。
なんか予感がするんだよね。
近いうちにあえるんじゃないか、案外近いところにいるんじゃないか、ってね。
ところで、色んなものを研究しすぎて研究室にだれも入れない程度には正気でいられなくなってしまう代物がゴロゴロしていてちょっとおぞましい研究室になりつつあるのよねぇ。
だから締め切って作業をしているのだけれど、なんだか病院内でこの部屋には幽霊がいるとかいう噂になってしまっているみたいでね。
それはさすがにどうにかしたいけれど、人が近寄らないのはいいことだからなんともしがたいのよね。
さてさて、どうやって連絡を取ろうかな。
若狭はどこにいるか分からない、ネフィウスさんは禁域にいるから近寄れない、葵ちゃんは行方不明、従者は同じく行方不明、孤児院には何も知らない可愛らしいエメラルドグリーンの髪色をした異形の子と、美しい男性の異形の力持ちが一人。けれどその二人はあまり何も知らないみたいだし、だったらこちらの方に巻き込むわけにもいかないしね。
‥‥‥‥‥それにしても、彼らの魔力貯蔵量もそこそこだったなぁ。
今度研究に付き合ってほしいところではあるけれど、流石にそこまで我儘は言えないでしょう。
けれど、そうね。
孤児院には時折往診に行っているから、ひょんなところで会うかもね。
あーあ、早く研究成果を誰かに報告したいけど、流石に難しいか‥‥‥‥あの仲間の中の誰かじゃなくてもいいから、魔力に理解のある相手と語り合ってみたいところ。
その点で言えば不思議なことがあってね。
かわしろ病院の跡取りの要君。彼から魔力を感じるのよね。
多分だけれど、遠い先祖に異形がいたんじゃないかってくらい。
ちょっと好奇心で研究室に呼びそうになったけれど、流石に現状一般人として活動している彼を巻き込むわけにもいかないからね。それはやめておいているところ。
さてさて、そうなると候補はいなくなっちゃうから寂しいところ。
‥‥‥‥‥‥そういえばね、誰にも言ってないけれど、葵ちゃんの影響かな。
あの時大量の魔力にさらされたからかは分からないけれど、一つ、思い出したことがあるの。
それはすごく大事で、重要な事。
‥‥‥‥私たち姉妹にとって、だけど。
私が思い出した‥‥‥‥いや、封印されていた記憶が戻ったのは、“姉の名前”。
彼女の名前は“天音 六花”。
私たち二人を救うために背中を押して自ら犠牲になったと思っていたけれど、どうやら少々違うみたい。
‥‥‥‥‥なんでだろうね。すごく遠いけれど、上じゃないところにいる、そんな感覚があるの。
まさかとは思うけれど、若狭さんのいたところで生活していたりなんて。
ま、そんな偶然が起きていたらきっと素敵だわね。だってそれはきっともうすぐ会えるってことだもの。
それならその出会いを楽しみに待たないとね。
さてさて、今日の患者さんはどんな人だったっけ。
あぁ、ちゃんと仕事もしてるのかって?そりゃ勿論。人間で治せないなんてのはほとんどないから奇跡の手を持つとか言われちゃってるけど、私は治癒専門の力だけを受け継いだ存在だからね。ある意味当たり前のことを何で今更?って感情が大きいわ。
それでも人間からしたら奇跡なんだものね。だから否定はしない。けれど奢りもしない。
これは憎くて、けれど憎み切れない父や母たる神々からもらった力だからね。
ろくな日常じゃなかったし、帰りたいとは一ミリたりとも思わないけれど、それはそれ、彼らがいなかったら私はこうやって知的好奇心を満たさずに、そもそも存在すらしていなかった。
だったら感謝するべきところも一ミリはあっても良いんじゃないかなって。そう思うよ。
他のみんなが何かをしているか、か。きっと、語られる人とそうじゃない人がいるんだろうね。
私は語りつくしたからもう満足かな。
さ、じゃあ次はだれかと出会う時に私が出てくるかもね?ふふ、視点がいつも定まらないのは私が特殊な位置にいるからっていうそれだけだから。
それじゃ、またね。多分だけど近いうちにまたお話しできる気がする。
彼女の力は治癒に特化してますからね、治せないはずの相手が治せちゃう。
病院の評判はうなぎのぼりだろうな、なんて。
さて次話は今日中にあげられたらいいなと思ってます。
ある人視点なので、ちょっと時間かかるかも。
本編はまだちょっとお休みします。
情報まとめたりあとは‥‥‥‥そろそろ確定申告なのでいろいろとリアルが忙しい。
詳しくは活動報告へ。今から書いてきます。