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[二部三章]新しい宿、そして。

今日も頑張るぞーっと、そう言えば今日は雪が降っていましたね。


『‥‥‥‥一方的なヤツ。』


僕はそう呟いてから、とてとてとこちらに歩いてくる彼女へと笑顔を向ける。


『葵さん、何かいい本見つけた?借りていくかい?』


すると彼女は嬉しそうに頷く。確かに、表情はあまり変わらない。けれど彼女はとても分かりやすい。


「うん。けどいいの?大分古くて貴重なものもあるみたいだったけど、‥‥‥‥あれ、」


はた、と立ち止まって、彼女は周囲を見渡す。


『‥‥‥‥どうしたの?』


「‥‥‥‥‥内亜は?それに、手に持ってるのはジェミニとレジーナ‥‥‥」


『あぁ。託してちょっと出かけて修行だってさ。』


彼女は更にきょろきょろと辺りを見回してから、こちらを見上げる。


「でも、じゃあ何でノワールまで?」


‥‥‥‥彼まで行ってしまったのか。けれど、ここは冷静に話をするしかない。


『自分の為で、君のためだって。で、僕に課せられた初任務が絶対君を泣かせないこと。だから今泣かれると、彼との約束を破ることになる。』


彼女は、何かを堪えるかのようにフルフルと震えている。


「かえ、ってくるって、いったよね。」


『うん。言ってた。』


そう頷くと、彼女は僕に向かって突進してきたかと思うと、顔をうずめて必死に涙を堪えているようだった。


「がまん、する、‥‥‥‥‥‥‥それなら、がまん、する。」


泣きそうなのに、泣いてもいいところなのに。彼女は必死で涙を堪える。

僕は、彼女を抱きしめて撫でてあげることしかできなかった。

だから。


『ねぇ、葵さん。僕は君に誓うよ、好きって言葉の真意。絶対傷つけさせないほど、人間だけど、頑張る、って。』


こくりと頷く彼女。

けれど、暫くしてからばっと顔をあげて別の意味で今度は泣きそうな顔をする、


「ノワールまで行ったってことは帰る家無くなったんだけど‥‥‥‥‥‥」


‥‥‥‥‥‥彼らはそこまで考えなかったのだろうかという疑問点はおいておく。


『えーと、じゃあここにいればいいと思うよ。幸いにも空いている部屋はたくさんあるし。』


けれど彼女は困ったような顔をする。


『どうかした?』


そう聞いてみると、意外な回答が返ってきた。


「一人は、ちょっと苦手。」


なら、と浮かんだ言葉を一瞬考えてから、からかい半分に提案してみる。


『じゃあ、僕の部屋使う?』


「うん。」


‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥いいんだ‥‥‥‥‥

一瞬わいたよこしまな考えは捨てて、彼女へ言葉をかける。


『じゃあ、好きにしてくれて構わないよ。』


そう告げると、こくりと頷いてどうやってか本棚の高いところで古本を広げて読み始める彼女。


(あれ、あんな本あったっけ。)


そう思いつつ、司書としてカウンターで一般の人が本を狩りに来るのを待っていると、あることに気が付いた。


みんなして、本棚の上の彼女を見つめている。


(あー‥‥‥‥‥)


外からの明かりを浴びて本を読む姿は、彼女をまるで妖精のように魅せていて。


『‥‥‥‥葵さん、取れない本あったら脚立持ってくるから、こっちで読まない?』


「飛べるから、いい。」


んーーーーーーー良くないんだよなぁ、とも言いづらく。

言葉を選んで、彼女に声をかける。


『えっと、普通の人もいるから、できればこっちで読んでほしいな、って。それに、その本は?僕、初めて見るんだけど。』


「ここからじゃないと見つからない仕掛けがいくつかある。この本はその仕掛けの一つで見つけた。‥‥‥‥多分、お父さん?の仕掛けたものじゃないかな。」


『父さんの?‥‥‥父さんは普通の人なんだけどなぁ‥‥‥‥』


言いつつ、手元のメモを見る。

イギリスの、とある番地が書かれている。

ここに、父がいるのだろうか。


「ちょっと待ってて、降りるから。」


そう言って、他の人には見えないように降りてくれる葵さん。

そして、手元の本を広げてみせてくる。

見たことのない文字のはずだけど、何故か読める。‥‥‥どういった仕掛けなんだろう。


内容としては、様々な神話の事、そのキメラについての研究内容らしい内容が書いてある。


「‥‥‥‥寿文人、君のお父さん、何者?」


そう問われても、困る。父さんは普通の人のはずだ。海外を飛びいまわっていること以外、何も分からないけれど。


『‥‥‥‥なんでこんなものが‥‥‥普通の父さんとしか聞いてないから、正直分からないんだよね。‥‥‥‥今はイギリスにいるみたいだけど‥‥‥‥』


すると彼女は何かを考えるような表情をしてから言った。


「‥‥‥‥‥私みたいなのについて調べてたってところ、じゃないかな。イギリス、行ってみる?」


そう問いかけられて迷う。けれど、自分についても、彼女についても、情報が得られるなら知っておきたい。

それに、それを抜いても、久しぶりに父さんに会ってみたい。

だから僕は頷いた。

すると、彼女は小首をかしげてとんでもないことを聞いてきた。


「飛行機と、飛んでいくの、どっちがいい?」


『‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥飛行機、カナ‥‥‥‥』


なんだろう、まるでイギリスまで飛んでいこうとでもしていたというのだろうか。

彼女のことだからありそうで困る。

すると彼女はスマホを取り出して、英語で何かを話した後、こちらに声をかけてきた。


「いつがいい?って。早ければ今からでもいけるよって」


‥‥‥‥‥‥誰に連絡を取っていたんだろうか、うん、知らないことにしておこう。


『今からでもいいよ、すぐ支度してくるから。』


そう言ってから、ふと思い至ったことを聞いてみる。


『あぁ、君の武器とか、君からもらった刀はどうしようか。』


「‥‥‥それくらいなら顔パスで通してくれると思う。そもそもジェミニの方は引っかからないし‥‥‥‥‥‥って、刀、持っていくの?」


『え?うん。せっかく君がくれたものだし、何が起きるか分からないし。』


「‥‥‥‥‥そう、じゃあ、私待ってる間暇だから、他の仕掛けがないか確認してくる。準備終わったら、声かけて。」


そう言って彼女はとてとてと図書館内を歩き回る。

僕が急いで簡易的にハンドバックに荷物を詰め込んで戻ってくると、彼女は更に二冊ほどの本を持っていた。恐らく、その仕掛けとやらで見つけた物だろう。


「じゃあ、行こう。」


そう言った彼女の先導で空港へと向かう。しれっとファーストクラスに案内された。


『え??まさかの?ね、ねぇ、手違いじゃなくって?』


「?いつも飛行機使う時はここだよ。」


‥‥‥何回も乗ってるのかぁ‥‥‥ちょっとうらやましいような、けれど気が引けるような。

でもどうしてそうなるに至ったかには興味がある。


『ねぇ、どうしていつもここなの?それに、なんか航空会社の人と知り合いみたいな感じだったし。』


そう問いかけると、平然と彼女は答えてくれた。


「前に、飛行機にとりついた異形を倒したことがあって。それからずっと感謝され続けて、こんな扱い。‥‥‥面白いか分からないけど、暇つぶしに聞いてみる?」


そう問いかけられて頷く。

正直、彼女の事なら何でも知りたい。


「‥‥‥‥‥その異形がエンジン部に取りついちゃって、あわや墜落しそうだったんだ。いつもの攻撃方法じゃあエンジンに危害加えちゃいそうだったから、ジェミニでざくっと退治したんだけど。‥‥‥‥‥あ!」


急に彼女が瞳を輝かせて立ち上がろうとするから、思わず驚いて彼女を止める。


『ど、どうしたの?』


彼女の視線の向こうを見てみると、満面の笑みを浮かべたCAさんが、トレーにたくさんのケーキ類を乗せてやってきたところだった。‥‥‥‥まさか、それに釣られて?と思い、彼女の方を見てみると、まさかのまさかだったようで、スイーツから彼女の視線が外れない。


「サービスです。お好きなものをどうぞ?」


そう言われて、考えてから答える。


『ん~僕は遠慮しておくよ、彼女にその分あげてほしいな。』


「全部。」


『ん?』


「全部食べたい。」


「ふふ、お連れの方も、御遠慮なさらず。お好きなものを追加でお持ちいたしますから。」


そう言われてしまうと、流石に断りづらい。

少し考えて、僕は答えた。


『‥‥‥‥じゃあ、ミルフィーユで。』


すると、小躍りしながらミルフィーユを取りに向かうCAさん。

何故???と思い、それを口に出す。


『なんであんなに喜んでるの?分かる?葵さん。』


そして彼女の方を見ると、先のスイーツを頬張りながら、答えてくれた。


「遠慮すると、逆にへこんじゃうんだ。なんだかその件の飛行機にVIPが乗ってたみたいで、それで余計に救世主扱い。」


確かに、そうなったらもし事故でも起きようものなら会社自体に大きな損害が出ていただろう。

このめちゃくちゃな好待遇にも納得しつつ、呟く。


『へぇ‥‥‥なんかビッグだなぁ。』


すると彼女は小首をかしげて


「びっぐ‥‥‥‥慣れちゃったから、なんとも。」


『慣れって怖いなぁ‥‥‥‥』


「そうかな、でも普通の方が面白いよ?たまにハイジャック犯とか出るし。‥‥‥そう言えばそういう時、大体何でか私を人質にしようとするんだけど、なんでだろうね。こっちとしては楽だから良いけど。」


‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥


『うー、ん。見た目、じゃないかな?』


そう答えると、彼女は不思議そうな顔をした後に、愕然とした雰囲気で聞いてきた。


「何歳くらいに見えるの‥‥‥‥‥?」


じっとりとした視線を逸らしながら、僕はちょっと盛った年齢を答えてみる。


『う~ん‥‥中学生、くらい?』


すると彼女は目を細めて不機嫌そうに言った。


「これでも数百年は生きてるんだけど、そうは見えないってこと?」


『そりゃあもう。過保護になってる人(?)を見るくらいには。』


あんなに過保護な、人間じゃあないみたいだけど、そんな人たちがいることは聞いた。

そんな庇護欲をそそるような外見の彼女は、どうあがいても数百歳には見えない。


「過保護」


『ん~、無自覚かぁ。まあいいや、そこは僕からは何も言わない。』


すると彼女は不思議そうな顔をした後に、難しそうな顔をする。


「‥‥‥‥‥よく分からないけど、それは、何も言わずに行っちゃったことに何か関係があるのかな。」


寂しげな彼女を見て、僕は彼からの言葉を伝える。


『悲しませたくないから。だってさ。』


「‥‥‥‥‥じゃあ、悲しんでいる場合じゃないね。そろそろイギリスに着く頃だし。‥‥‥用意はいい?」


彼女の問いかけに、僕は不敵に笑って答える。


『いいよ、いつでも。』




はぁ‥‥‥音げーは6月24に向けて石を溜めないとだし、QPがいるゲームはQカードのサポートPikUpを待たないといけない‥‥‥

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