[二部三章]再会と役目
三章開幕です。
今回もそんなに長くないかも(当社比
『それで、八代はこれから何で路銀を稼ぐつもり?』
ふ、と気になって、八代に問いかけてみる。
「ん、また異形殺しをするわけにもあかんしな。あんたがやってる討伐の手伝いでもして稼ごうかな思てるわ。」
確かに、そのつもりでスカウトをかけたけれど、でもそれでは情報がない時にやることがない。
で、やることがないということはお金が無くなる訳で。
まぁ、宿自体は上の改装を使ってもらうつもりではあるんだけれど。
『ならさ、教師はどうかな。』
そう、私は提案してみる。
実は、以前から学生の周辺での悪性の異形の出現率が異常に多いことが分かったのだ。
恐らく、学生たちが何も考えずに噂話を好んだりするから、それにつられてきてしまう物たちが多いのだろうというのがノワールの見解だ。
「教師ぃ?まぁ、えぇ提案やん。報酬は弾むんやろなぁ?」
私はこくりと頷く。夜間は警備として、昼間は教師として活動できる人材が欲しかったのだ。
丁度、アカイム街というらしいこの辺りの周辺のアカイム学園とかいういかにもまずそうな名前の大学があり、そこで何か起きた場合に備えて買収をもくろんでいたのだけれど。
「葵はできて生徒じゃない?教師って年齢にはどうあがいても見えないよ。」
そう内亜に言われてしまい、体育教師の枠が余って丁度困っていたところだ。
私は表では生徒と、それから理事長として活動するつもりだ。
『で、空いているのがちょうど体育なんだけれど、お願いできないかな。』
「体育ぅ?うち国語の方が得意やねんけどなぁ。まぁ、ええよ。‥‥‥‥というか、ま、人に教えること自体が苦手やねんけどな。」
まぁ、異形に何で恨みを持つようになったのかを先程聞いたので、感覚派の八代が他人に体育を教えるのは難しいだろう。けれど、その辺りは学習してもらうことにして。
『でね、その報告というか、朝礼が今度あって—————————』
そのことについて話している間、悪魔二人がいがみ合っていたのでまりにも五月蠅いから二人まとめて若狭にとっちめてもらった。
何だか全力で魔術だの姑息な手段だの講じていたみたいだけれど、若狭はなんて言うか、こう。
見たまま言うと、素手で術式ごと破壊する存在なんか見たことない。である。
そうして契約悪魔たちが静かになったところで、数日後。
—————————
その日はやけに騒がしかった。
学校に到着してみると、いつもよりみんなうるさくて、ざわざわと何かを話している。
なんなんだろう。
そう思って、僕は手近にいた友人に声をかけてみる。
『なんか今日騒がしいね?なんなんだろう。知らない?』
「んと、なんか新しく先生が来るとか。そんな話を小耳に挟んだけど。」
ふぅん。確かに体育教師をしていた先生はそろそろ年がどうのとか言ってたっけか。
『どんな人なんだろうね?』
「なんかすっごい美人だってさ。お前興味ない?」
今までであれば、きっとどんな人なんだろうか、勝手な想像を膨らませていただろう。けれど今の僕は違う。
『ん~、あんまりかな。僕心に決めた人いるし。』
そう答えると、友人は驚愕に目を見開いて言った。
「え゛、あのお前が?どんだけ美人に告白されても、そういうの分かんないから~なんて断り文句でずっと断ってきて色恋沙汰とは無縁に等しいお前が?どんな人だよ。」
『すごく可憐で綺麗で美麗な人だよ。あ~もう、筆舌に尽くしがたいね、あれはもう運命だよ。』
「‥‥‥どんな人かめっちゃくちゃ気になるんだけどそれ。同じ学校?」
そう聞かれて、首をかしげる。そもそも彼女は学校へ通っているのだろうか。
『分かんないな。少し年下に見えたけど、それくらいしか分かんないや。』
「へぇ、年下好きとは知らなかった。今度紹介してよ。」
『やだね。』
食い気味に答える。
例え誰であっても、彼女を紹介するなんて絶対にしない、したくない、ありえない。
そんな話をしていると、集会が始まり、新たな体育教師として女性が紹介される。
確かにきつめの性格ではありそうだけど、美人ではあると思う。
「ち言うわけで、よろしゅう。」
方便から、関西の方の人なのかなぁなんて思いながら生徒に交じって拍手をする。
これで終わりかと思った集会はまだ終わらない。
どうやら、壇上の方で何かが起きているようだ。
他の教師が台座を持ってくる。
そんなに小さな子が壇上に登るなんて何かあったのだろうかと、ひょっこり見えた顔を見て、僕は固まった。
あの少女だ。
『次に、転入生兼理事になる方のご紹介です。』
そんなアナウンスも耳に入らなかった。
彼女の方もこちらに気が付いたのか、大きく瞳を真ん丸に見開く。
けれど凛とした姿勢を崩さず、マイクに向かって話す。
「‥‥‥‥理事なのは、親戚から継いだお飾りです。気にしないでください。それでは、よろしくおねが、わぁ、」
くらりと彼女の身体が傾く。
台座から足を踏み外したのだろうか。
そんなことを考えている間に、僕の身体は勝手に走り出して壇上の彼女を支えに向かっていた。
辺りがざわつくがそんな雑音どうでもいい。今、ここに彼女がいる事だけが大切だ。
「な、集会中、さっさと席に、って‥‥‥‥同じクラス、?」
彼女の可憐な声を聞いて、つい心が浮つく。
僕は周囲のざわめきもそのまま知らぬ顔をして、葵さんの小さな手を引き、その場から逃げ出す。
「ちょ、っと。」
彼女に制止を求められるが、そんなのに答える余裕はない。
『二人で話そうよ、また会えてうれしいんだ。』
あぁ、きっと今の僕の表情は緩み切っているんだろうな、なんて思いながら。
彼女を抱きしめたい気持ちを抑えて、僕は彼女を屋上へと連れ出した。
さて、RP中も確認しましたけどやらかしてるなぁと。
これからどうなっていくのか、また次回。