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[二部二章]異形殺し

次のお話になります。さて、今回は“人間相手”です。


「あぁ、マスター!無事だとは信じておりましたが、やはりこう目にすると感動もひとしおですね。さぁ、おやすみになるのであれば、部屋の方はいつでも準備させていただいておりますとも、えぇ!」


久しぶりにノワールとの接触を試みようと思ったら、もう開いた扉はバーに繋がっていた。

なんだかとても懐かしい感じがする。


『久しぶり、ノワール。‥‥‥‥‥あれから、感情はなんだろうね、抑え込まれているような感覚があるけれど、戦闘面はバッチリ成長した、と思う。今なら内亜なしでも普通にノワールに勝てるよ。』


「それはそれは‥‥‥後でお手合わせ願っても?」


『勿論。じゃ、その楽しみができたところで、そっちの情報をもらおうか?勿論、いい情報誌入れてくれているんでしょう?』


「えぇ、いくつかの神格召喚準備に入っている教団の捜索、異形についての目撃情報。それから、えぇ。お耳に入れておきたいことが一つ。」


ノワールの表情が、真面目なものに変わる。

一体なんだろうと思い、次の言葉を待つ。


「異形殺しなる人物が、現れたそうです。」


『異形殺し?‥‥‥‥‥私達みたいなのじゃなくて?』


「えぇ、なんでも、その異形殺しは“人間”だとか。」


私はつい、沈黙する。

人間の寿命で異形を殺す決断をし、異形たちのところまでその情報が届くなんて通常の人間じゃあありえない。

そこまで、異形に強い恨みを持つ人間でも、その寿命が尽きるか異形との戦闘においてすぐに命を散らしてしまうことが多い。

例え、異形殺しを成すことができたとしても、異形の血それ自体が一種の呪いのようなものだ。

どうしても、どうあがいても、異形と化してしまうか、正気を失ってしまうはず。

なのに人間が、人間であるまま、異形殺しになる。

そんなのは通常あり得ない。


『何か、特殊な理由や術式でもないと可能じゃないはず。それに、異形殺しは術式それ自体を嫌う傾向にあるから、そんなものに頼らないで、となると‥‥‥機械?』


「えぇ、流石です。マスター。どうやらなにがしかの機械を使って異形殺しを成し遂げている様子。

‥‥‥あまり曖昧な情報はお渡ししたくはないのですが、機賀、という単語が出てまいりました。

その機械の名称なのか、はたまたそれを成した人物なのかは分かりかねますが。」


‥‥‥‥どうやら、だいぶ厄介な存在みたいだ。

機械相手は正直私も内亜も苦手だ。

何故って、仕組みが分からないから壊すしかないのに、壊したら発動する術式があるとか冗談じゃない。だからなるべく触りたいとは思わない。


『なるほど、ね。被害はどんな感じかな』


私が問いかけると、ノワールは一瞬詰まってから、こう述べた。


「‥‥‥‥‥‥‥‥‥目に入る異形全て、です。善性も、悪性も問わない。」


「ある意味厄災に近いんじゃないのそれ。」


内亜がひょっこり顔を出す。

ノワールはにがい顔をしつつ、頷く。


「貴方もまた健在でしたか、内亜。さっさとくたばればよいものを。」


「あっはっはっはっは面白いこと言うね僕も強くなったよ殺してやろうかこのクソッタレが。」


「えぇ、可能なのであれば?けれどもこの世界の摂理にのっとれば私の勝利など確実なものですから。負け犬の遠吠えを聞いて差し上げるくらいの度量はつきましたよ。」


「へーぇ、吠えるようになったじゃん良いじゃんやってやろうじゃん。」


『二人ともストップ。‥‥‥‥‥ノワール、悪いこともしてない異形も、その被害には含まれているの?』


「‥‥‥‥‥‥えぇ。」


『なら、相手しないといけないね。』


「ですが、マスター‥‥‥」


ノワールの声音から、私のことを心配してくれているのが伝わる。

けれども、これは私のするべきことだ。

今はまだ知り合いには何の影響も与えていないけれど、いつ、どうなるか分かったものじゃない。

異形はいつの時代も存在し、いつの時代でもその能力を振るうだけではなく、しっかりと人間と共存してきた異形だって存在する。

例えば、人間の歴史で言うなら安倍晴明とか、芦屋堂満とか。

あの二人はライバルでもあり、芦屋堂満に至っては晩年にはその身を異形にまで落とし込んだとも言われている。

けれど、その相手たる安倍晴明だって、異形の成り代わりだなんて逸話も存在するくらいだ。

子供向けの絵本の金太郎だってそう。彼は山姥との間に生まれ、鬼と過ごし、悪を退ける存在として絵本や歴史に残されている。

そんな異形たちまでターゲットにされてしまっては、もうそれは人間にとっての通り魔と同じような存在だ。

もし。

もし万が一、遠い、遠い先祖が異形の人間がいたとしたら。

その人間には罪はないのに、異形の血を引くだけで罪だというならば、それは、その行為は許されてはいけない。


私だって、そうだ。


私が異形になりたかったんじゃない。

創った連中がたまたま神様で、たまたまこんな五異形のつぎはぎみたいな存在になってしまっただけだ。

それでどれだけ苦労したことか、どれだけ、苦しんだことか。


『‥‥‥‥‥‥その異形狩りは、今どこに。』


「日本にいる、ということしか。しかし、本当にマスターとそのいかれたポンコツのみで挑むのですか?」


「え?なに今喧嘩売られたんですけど???????????」


『はいそこ喧嘩しない。

‥‥‥‥‥‥そうだね、私達だけで行くよ。最悪の事態も考えて、だけど。大丈夫、伊達に修行してきてないから。』


「そうですか。お出かけはいつ頃?」


『今すぐにでも。』


「承知いたしました、マスター。」


そう言って優雅にお辞儀をして私を見送るノワール。

本当はもっと語り合っていたかったし、もっともっと戦いもしていたかった。

けれど、それじゃきっと間に合わない。

ただの、何の危害も加えようとしていない異形まで巻き込まれる前に、止めないと。


「‥‥‥‥‥‥葵、開幕から全力?」


『まずは話が通じるかどうか。そこからだね。』


「了解。じゃあ俺はしばらく潜むことにするよ。」


『うん、頼んだ、相棒』


「任された、我が契約者サマ?」


目で合図を交わし、内亜が私の影の中へと潜む。

‥‥‥‥‥‥思うところがないわけでは、ない。

けれど、止めないといけないところは止めないといけないのだ。


そう勇気を振り絞って、私はバーの扉を開いた。





葵さんの思うところ、内亜の考えるところ。たくさんの思いが絡まり合いはしますがきっとぶれることは無いでしょう。さて、次回またお会いしましょう。


それから、ここからは過去の記録だけではなく実際にRPを挟んだりしながら小説の方を進めていきますので、少々投稿が滞ったりするかもしれませんがご了承ください。

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