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幕間⑤

幕間➃の後編です。


「えぇと、それでは、お嬢‥‥‥いえ、シェリー様と葵様による模擬戦闘を開始いたします‥‥‥」


ヴァイスが困惑半分、好奇心半分くらいの声音で宣言する。


「ルールがあって、俺らの時はそれぞれ異形としての身体強化、およびその他の能力使用不可、武器は葵から借りたジェミニ(ナイフ形)と自身の肉体のみ。勝ち負けはどちらかの攻撃が当たったとき、だったけど、今回は葵は異形としての力はジェミニの変更のみ。ただし殺傷能力は無し。それ以外の力は使っちゃダメ。シェリーの方は、葵にやることなら何でもあり、そして、武器は秘匿。殺傷能力があっても問題ないよ、すぐにどうにかできるしそうなったら俺が止めるからね。で、今回の勝ち負けも相手に自信の攻撃が当たるか、降参させたら勝ち。で、勝った方が負けた方に言うこと聞かせる‥‥‥‥これは一緒だね。さ、ルール確認はオッケー?」


『はい質問』


「なぁに?」


『何で私が巻き込まれてるの』


「すみません、お嬢が貴女とどうしても戦ってみたいと‥‥‥‥‥」


‥‥‥‥‥‥‥チラリと桜を見ると、非常に楽しそうに準備運動中だ。良いことではある。私が巻き込まれてなければ。

まぁ言わずともわかるだろう。今度は桜と私の模擬戦闘が始まることになった。

なんというか、あの戦闘を見た後、桜がやたらとキラキラした瞳でこちらを見てくるからなんだろうと思ってみればまぁこんなことに。


「ほら、葵、早くやろう、ね?」


桜はすでに準備場万端と言った様子で軽くステップなんか踏んでいる。


『えぇ‥‥‥もう、仕方ないなぁ‥‥‥』


心の底から気乗りがしない。なんでって、だって私が楽しい戦闘はこう、レジーナでドーンと一発かますのが楽しいわけであって正面切っての戦闘は


「はーい、戦闘開始するよ、ハイ開始ー!」


満面の笑みで内亜が空中に空砲を撃つ。

その瞬間、桜がカバンの中から注射器を取り出す。まぁそれは分かっていた。事件の時に戦闘になったときに使っていたから。

けれど問題はその数だ。

トランプを何枚か指に挟むかのようにいくつもの注射器を構えて投擲してくる。


『‥‥‥多くない?』


そう呟きつつ、私は自身に当たりそうなものだけを選んでナイフの形状に変形させたジェミニで弾く。

いつもと違って外見通りの力しか持たない私はそれだけでも多少の体力を消費する。


「まだまだいっくよー」


間髪入れずに今度は拳銃での攻撃と織り交ぜて投擲。

念のためジェミニで弾く。流石に衝撃が来るのがきつい。

そう思っていると、投げた投擲物に隠れて桜が突進、私の足元から私の顎めがけて蹴りを入れようとしてくる。


『っと、?!』


驚きつつバレッタに変形させたジェミニで手甲のようにかばいながらその攻撃を受ける。


「すごい、今のも避けられるのね?」


瞳を輝かせて言わないでほしい。そう言いつつも今度は組み付きを試みてくる。

この動きまさかとは思うけれど


『マーシャルアーツ‥‥‥‥‼』


総合格闘技、いわゆる“何でもあり”の戦闘技術。それをかなり高い水準で彼女は繰り出してくる。


「正解、ほら次いくよ!」


そう言いながら今度は足払い、正拳突き、に絡めて注射器やメスの投擲。

正直やる気がなかったけれど、警戒だけはしていてよかった。じゃなかったら簡単にやられているところだった。


『‥‥‥‥やるじゃん』


回し蹴りを回避して、私はジェミニをナイフの形状に変化させる。

懐に入られる可能性のある相手には拳銃は通用しないものと思え。これが師匠の教えだ。

私はジェミニを構えてメスやら注射器やらを回避して桜の目前に迫る。


「やっと本気出してくれた、!?」


しかし、“目の前で跳躍”することで、一気に視界から消える。

驚く桜に背後からジェミニで斬り裂きを試みる、けれど。


タァンッ


発砲音。

嫌な予感がして避けてみれば、そこには拳銃を構える桜。


「今のも避けるんだ。ならこれもいいね。」


心なしか眼が据わっている。

これは、警戒を最大限にしておかないといけない。

だから、また突撃、ジェミニと拳銃で鍔迫り合い、直後にお互いが引く。

一瞬でも引くのが遅れていたら体勢を崩していたであろう駆け引き。

そのまま私はジェミニの弾を数発撃って桜の回避を誘う。

けれど、流石というか、体勢を一瞬で低くすることで、その弾の全てを回避してくる。


『ふぅん。』


面白くなってきた。だからこそ、ジェミニを片方、バレッタの形にして“桜に投げる”。


「えっ」


ついキャッチしてこちらを見るけれど、既に私はそんなところにはいない。


『チェックメイト』


背後へまわって桜の喉元にそっとジェミニのナイフを当てる。


暫くの沈黙の後、拍手が聞こえてきた。


「あっはっはっはっは、葵、さっすがぁ」


拍手の主である内亜は、にっこり微笑んで私を褒める。


『何がそんなに機嫌がいいの?』


そう問いかけると、ヴァイスが桜の体調を確認してから答えた。


「私が先程は少々小賢しいことをしてしまいましたが、葵様も内亜様のように戦われるのですね、ということです。」


‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥


‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥?


「まさか唯一の武器を投げておとりにするなんて思わなかったからびっくりしちゃった。」


『あっ、』


あれは以前に内亜がとあるごろつき相手にしていた時に見せた技で‥‥‥‥


『つまり、確かに似ているってことね‥‥‥‥‥無意識だったからちょっと複雑。』


この影響がいいものかどうかわからないけれど、確かに私は内亜に戦い方が似てきているような気がしなくもない。


「それでそれで?葵は何を私にお願いするの?」


そこも忘れていた。特に希望することや物なんて‥‥‥と、ふと思いついたことがある。


『じゃあ、桜おすすめのケーキ屋さんに行きたい。連れて行って?』


そう言うと、桜は一瞬きょとんとした後にふふっと微笑んだ。


「えぇ、分かった。日付はそっちに合わせるね。」


よし、どんなスイーツが待ち受けているのか楽しみになってきた。

何だか思考が毒されてきているような気もしなくもないけれど、仕方がない。


『楽しみにしてるからね。』


スイーツはどんな武器よりも、黄金よりも価値あるものだから。



何よりもお菓子の好きな葵さん。いつの間にか手が出ちゃうことってありますよね。(執筆しながらお菓子食べている人の図

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