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[五章]彼方よりの来訪者【終章】

エピローグです。


「と、言うわけで僕が増えたわけですね、マスター。」


ノワールに先の会話の内容を伝えると、そう言われた。


『いや、そんなものじゃないから、それに、スゥはクローネのところで働くことになったよ。人手が増えたってクローネ喜んでたし。』


そう言うと、バーから階上へ繋がる階段から、スゥが降りてきた。

どうやらきちんと食事もとれているみたいで、瘦せすぎに見えた体も、今では少しだけ女の子らしい体つきになっている。

服はクローネが作ったらしい淡い緑のワンピースを身に纏っている。可愛い。

しかしやはり老化は止まってしまうようで、もう元の路地には戻れないと私達のところに来ることになったのだ。


「そうなのです。僕なんかじゃなくて葵とはその、今後は協力者として何かできたらというだけなのです。」


僕扱いされたことが不満なのかノワールをジトリと睨みつけながらスゥが言う。


『うん。トゥールスチャは外なる神だからいざって時はクローネたちを守ってくれるしね。』


「なぁんか増えていくんだよなぁ‥‥‥クトゥルフ神話の神格やら悪魔やらが。」


また隅っこの方でフレアの練習(と言うにはあまりにも高度な技ばかり披露しているが)をしながら内亜が言う。

たしかに、内亜はネフィーと離れた直後に出会ったけれど、それからずっと二人だったのが、今では悪魔の王に、シュブ=ニグラス、トゥールスチャと、なんだか拠点もできて今までの旅とは違った楽しさがある。


『というか内亜、フレア手癖になってきてない?なんで?』


「いやぁ、美味なお酒も飲めるし、たまに来る人間の女の子たちが僕好みのお話きかせてくれたりするしぃ?店のためだよ店の為」


「というには飲む量が異常に多いですこの穀潰し。」


すぐに喧嘩に発展するなぁこの二人。仲良くしてくれないかなと思ったのはこれで何度目だろうか。

まぁもう風物詩になってきたし慣れた気がする。


「‥‥‥えっと、葵。」


二人の口論をぼーっと眺めていると、遠慮がちにスゥが声をかけてきた。


『んぅ?』


スゥの方を見ると、少し言いづらそうにもじもじしている。

何かを伝えようとして伝えられない、なんというか、金魚みたいに口をパクパクさせたり俯いたりしている。


『聞きたいことがあったら聞いていいよ?あの時はちょっと逼迫した状況だったし、それに、外見年齢そんなに変わらないけどこれでも数百年以上は生きてるから色々知ってるだけ。』


「‥‥‥‥外見年齢が一緒‥‥‥‥‥‥?」


ジーッとスゥに見つめられてつい視線を逸らす。


「葵、身長はいく『そこは聞かないお約束。』‥‥‥スゥは165cmはあるのです、なので‥‥‥‥」


言われなくてもわかっている。えぇ分かっているともさ。30cmも差があるとは思わなかったし、栄養が足りてないだけでこう、女の子としてふんわりするはずの部分がぺったんこ(いや、でも少しは膨らみがあるはず)な私にとってスゥの胸元はこう、目に毒というか何か心の奥底から底知れぬ感情が沸き上がってくるというか。


『あ、でも未希ねぇは一緒だ。』


「どったの葵ちゃん」


いつの間にやら隣でオレンジジュースを飲んでいる未希ねぇに驚く。

まさか胸元の事を考えていたなどとは言うわけにもいかず、何か言い訳を探す。必死に。


「あ、あの‥‥‥ちょっと脱線しちゃったですが、いいですか‥‥‥‥?」


『ちょうどいい言い訳が来‥‥‥‥‥えっと、どうしたの?』


未希ねぇの視線が痛い。が、仕方ない。仕方ないのだこれは。

まぁ確かに胸元ガン見してそんなこと口を滑らせたらそうなるかもしれないけれど。


「‥‥‥‥‥‥よかったですか?あんなに、路地の孤児を受け入れて。」


スゥが、ぽつりとつぶやくように言う。


『クローネも喜んでたでしょ。あそこはもともとそういう予定でできた館だし、ノワールの空間魔術で中は見た目よりもよっぽど広いからまだまだ余裕あるよ。』


そう。あの路地裏にいた住民の中でも、身寄りのなくなってしまった子供たち(例えば祭壇に捧げられかけていた少年など)は、クローネの孤児院の方で預かることにしたのである。

クローネは一気に増えた孤児を見て、一人一人にちゃんと話を聞いたり、してあげたりしていて、まるでカウンセラーのようなことまでやっている。

ここまで有能だとは思わなかったから、そう正直に伝えたら本人には


「私が最初そうだった、考えていたことを教えたり伝えたりしているだけ。特に特別なことはしていないわ。それに、貴女達が助けたり巻き込んだりしてくれなかったらこういうこともできなかったわ。むしろ無力感を感じていた私を救ってくれてありがとうね、葵。」


と、逆にお礼を言われてしまった。

孤児の服は買ってもいいと伝えているのだが、クローネ自身が思いを込めたいとか何とかで手作りで作っているのはすごい。子供たちも即座にクローネに懐いて、年齢が少し上の子なんかは率先してクローネの手伝いをしている。


『それに、スゥが手伝ってくれるからさらに楽だって喜んでたよ。服も作り甲斐あるって。』


「そう、なのですか。‥‥‥‥‥そうですか。」


噛みしめるように、嬉しそうに微笑むスゥを見て、こちらまでつい嬉しくなってしまった。


「私も正直子供好きだし、みんな健康優良児でよかったよ。でも私までお邪魔しちゃってよかった?健康診断くらいしかしてあげられないのに。」


『未希ねぇは、いるだけでも安心する』


そう答えると、未希ねぇにぎゅっと抱きしめられた。


「うん。私も、葵ちゃんが元気だと安心する。」


『‥‥‥‥うん。』


「おぉ、これが俗にいう姉妹愛という物なのですね。髪色も目の色もそっくりですし、二人ともすごく美人さんなのです。」


そう言われて、ふと思った。

なんで、未希ねぇは髪と瞳の色を変えたのだろうか。

最初に見た時は、アルビノだったはずなのに。

目が覚めて、聞いた時にははぐらかされた。

ふ、とある考えが浮かんだ。もしかして、という程度のものだけれど。

もしそうだとしたら、‥‥‥‥‥いや、きっとそうだろう。


『未希ねぇ、ありがとうね。』


「え?どうしたの急に」


『なぁんでもない。』


なんとなく、お礼を言いたい気分だった。

多分、というか、ほぼ確実に、私の事を気にかけて過去を思い出さないようにしてくれたんだと思う。


私は周りの仲間に恵まれたな、なんて思いながら、声をかけてきたスゥと未希ねぇと三人でジュースを飲んで話して笑う。

そんな時間が、いつまでも続けばいいのに。





胸ぺったんこ姉妹(

ちなみにスゥさんは割とある方です。

女性らしい体格なのできっとクローネさんも服の作りがいがあるんでしょうね。


本日幕間更新は3,4時とかになると思うので皆さん是非寝て明日の朝にでもお読みくださいな。

ではではまた次章までの幕間にまた。

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