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[五章]彼方よりの来訪者【Ⅺ話】

11話にして来客登場、まだまだ続きます


ノワール曰く、その客人とやらは私の知り合いだと名乗っているらしい。

件の少女を保護していた部屋にずかずか入り込んでは即座に少女を回復させ、もう大丈夫だと伝えてからはバーのカウンターに居座り始めたとのこと。


「真偽も定かではありませんので、一応最低限もてなさせていただいてはおりますが、どうにも‥‥‥」


ノワールの表情が硬い。そんなに怪しい人物なのだろうかと首をかしげていると、内亜が急にニヤニヤし始めた。


「はっははぁん、ノワール、もしかしてキミ、“コミュニケーション苦手”でしょ。」


ノワールの方が一瞬跳ねた。図星のようだ。


「ってぇことは、その御客人がコミュニケーション能力に長けていて話を振ってくるのが止まらないのが困っちゃっていてもたってもいられなくて外で待ってたとかぁ?」

「いいえ決してそのようなことはございませんともマスターの帰りが待ち遠しくてこちらについ出てきてしまっただけですとも。」


『なんていうかその‥‥‥‥ノワールって、分かりやすいね。』


「‥‥‥‥‥‥‥とり、とりあえず、中へどうぞ。」


無表情を貫けるのはすごいと思うけれどなんだろう、ノワールって動揺するんだなぁ。

そう思いつつ、扉を開けた瞬間全身に衝撃を感じ、そのまま突っ込んできたもの(どうやら人)に床に押し倒された。


「葵?!」

「マスター?!」


それぞれが同時に声を上げる。

幸い怪我はどこにもないようで、文句の一つでも言ってやろうかと突撃してきた人物に目を向ける。



真っ白な髪の少女と女性の中間のような人だった。

何故か、脳が警鐘を鳴らした。咄嗟に押し倒された体勢から相手を突き飛ばし、距離を取って影からジェミニを取り出して構える。

けれど、内亜とノワールは警戒、というより驚きの目でその人物を見ていた。


「もー、急に突き飛ばすのはさすがに痛いなぁ、あ、けど流石だね、怪我しないように考慮してくれたんだ。」


よいしょ、とその人物が立ち上がる。


「“久しぶり”、葵ちゃん。元気だった?」


その人物の瞳は、血に濡れたような深紅の色をしていた。

二人が驚くのも無理はない、と思った。

純白の髪、深紅の瞳。それを除けば、まるで


まるで、“私”が成長した姿だろうと容易に想像できる顔立ちをしていたから。


『‥‥‥‥‥‥‥‥。』


知らない人物だった。そう、知らない人物の“筈”だった。


『未希、ねぇ、‥‥‥‥‥‥‥‥?』


口をついて出た名前はどこか懐かしさを感じて。

けれど


けれど私は“この人を覚えていない”。


知らない、じゃない。


「うん、未希ねぇだよ、葵ちゃん。葵ちゃんに会いたかったのよっぽど隠密に長けた同行者がいたのか、ぜんっぜん見つからなくって“数世紀”もかかっちゃった。」


頭が痛い。


頭痛が鳴りやまない。

何かを思い出そうとしているかのようで、けれど脳がそれを拒否しているようで。

頭が、痛い。


『や、だ、』


私は思わず後ずさる。


「葵ちゃん?どうしたの?」


その人物が声をかけてくる。


たしか、“もうひとり”いたはずだ。


そんな記憶が、光景が、浮かんでは消える。


優しくて暖かな時間


“生み出されたとき”から一緒で


とても、安心できる人物だと、そう脳が判定している。


けれど


頭が、痛い。



【様々な異形の姿】【“試練”の日々】【“実験”の日々】【与えられた使命】【痛い記憶】【植え付けられた恐怖】【植え付けられた忠誠心】【植え付けられた畏怖】【怖い、痛い、嫌】【祀られる祭壇の数々】【祀られる創成者達】【何物でもあり、何者でもない自分】【怖い実験】【失ってゆく感情】【奪われていくこころ】【暖かかったはずの場所】【壊れかけた自分】【壊れかけた□□□】【私たちを助けた□□□】【真っ白な自分】【深紅の瞳】【幼い自分】【創られた自分】【創られた□□】【失敗作と言われた□□□】【成功だと言われた私】【創られた生命】【頭が痛い】【怖い、思い出したくない】【私はだれ】【私はなに】【私は——————】


「葵‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼」


ぐらり、と歪んでゆく視界

あ、倒れるな、そう思いつつも手放される意識

最後に見えたのは、心配そうで、泣き出しそうな内亜の顔。


『‥‥‥‥‥ぅ、ぁ』


内亜に、大丈夫だよって言いたかったのに

言葉にならないまま、私は瞳を閉じた。



—————————



『どういうことだ、お前』


来客というから見てみたら、色違いの葵とそっくりの少女。

しかも、葵は“姉”と。確かに、そう言った。


「ごめん、説明してあげたいけど葵ちゃん診せて、お願い」


未希と言ったその少女は俺に向かって言った。

倒れた葵の小さな身体をしっかりと抱きしめる。


『知らないやつに預けたくない。帰れ』


そう言って冷たく突き放す。

しかし、少女はその言葉を無視して近寄ってきた。


「大丈夫、傷つけない、絶対」


『信用できない!』


そう言って影を相手の喉元に突き付ける。

ノワールはどう動こうか測りかねているようだった。


「約束する。傷つけない。今何もしなかったら後悔する。」


そう言って影の刃を気にせず進んでくる。

刃が軽く皮膚を裂き、血が零れる。

けれど、彼女はそのまま進んでくる。


『止まれって!』


「止まってらんない。特に、君みたいに葵ちゃんをちゃんと見てくれる子がいるなら尚更今引けない。」


更に刃が深く突き刺さる。それでも彼女は真っすぐこちらの瞳を見て近づいてくる。


『、っ葵を、助けられるんだよな』


「助ける。絶対。」


もう一歩進めば頸動脈を斬り裂くだろう。それでも彼女は歩を進めようとしてきた。


『何かあったら、即座に殺す』


そう言って、俺は影を元に戻した。


「それでいいよ。」


彼女はそう言って葵を見て言った。首筋から血が垂れるのを気にも留めず。


「とりあえず、安静にしてあげられる部屋が欲しいかな」




今日は次まで更新予定です。けれど待たずにできれば寝てください(アクセス時間を見ながら

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