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[五章]彼方よりの来訪者【Ⅶ話】

七話目、話がだいぶ動きます。


同日、夜。


空中から見下ろすアーカムの街は、活気があってつい細部を見て回りたくなる、そんな街並みをしていた。


「んん、葵ー、やぁっぱりちょっと目立つからその翼消せなぁい?綺麗なんだけどさぁ」


隣を飛ぶ内亜に言われて、自分の翼を確認する。

プリズムでできた妖精のような翼。確かに月明かりに照らされて微かにキラキラと輝いているようにも見えないこともない、けれど。


『まだこれでも制御難しいしなぁ‥‥‥内亜、一緒に飛んだ方がいいかな。』


そう聞いてみると、内亜はどこか残念そうにしながらも頷き、私の影の中へと消えた。


「まだ相手の手の内が分からないうちに目立つわけにもいかないからねぇ。残念だけど。」


そう言いつつ、影の翼を展開させてくれる内亜。なんだろう、久々な気がする。


『んで、表通りの方は異常なし、特に誰か攫われたりなんかはしてないね。』


私は街の煌びやかな明かりの上を飛び回りながら見回ってみる。


「ないねぇ。路地裏の方は‥‥‥見る限り今日は特に何も‥‥‥、葵!」


内亜の鋭い警告の声が飛ぶ。瞬間的に私は空中で身をひるがえして周囲を見回す。

すると、北の方角に眩い緑色の炎の柱が立っているのが見えた。


『トゥールスチャ?!魔力感じなかったのに、何で‼』


焦って私がその方角に向かおうとすると、内亜から声が響く。


「葵待って、飛んでたら逆にこちらの魔力を感知されるかも。マントつくるから走ろう。」


そう言いながらもすぐに翼をしまって近くの建物の屋根の上に着地し、影のマントを身にまとわせてくれる。


『了解、全速力で行くよ。ジェミニ出して。』


そう小声で答えながらジェミニを懐に忍ばせ、炎の柱の上がっている場所へと、いくつかの建物の屋根を飛び越えながら向かう。


『‥‥‥‥内亜、変じゃない?』


私は走りながらしばらくして、内亜に声をかける。


「んぇ、何が?」


『魔力は、こう、少量感じるんだけど、私だけなのかな。“命を吸われる感覚がない”。』


トゥールスチャは本来、周囲の生命体の生命力を一気に吸収する特性がある。

なのにあの柱からは神性の魔力を少し感じるものの、周囲の生命体への影響が感じられない。

本来ならこの街一体の人間が一瞬にして干からびてもおかしくないのに、だ。


「‥‥‥ほんとだ。でもあれ、ニャルラトホテプとしての感覚が言ってる。“本物”だって。」


一体何が起きているのだろうか、そう不思議に思いつつ、私は走る。

炎の柱の元が見える辺りにまで近づいた時、視界に興味掛けたマント姿の人物たちが映る。

どうやら、炎の柱を中心として円状に並び、何かを唱えているようだった。


『‥‥‥‥‥、信仰者たち、だよね。どうする?内亜。』


私は小声で内亜に聞いてみる。

暫くした後、影の中からにょっきり内亜が顔を出した。


「んー、制圧するのに何秒かかる?」


『‥‥‥‥5、6秒ってとこ?それがどうしたの?』


「んじゃ、ちょっと制圧してきて、“なんか大丈夫な気がする”。勘だけど。」


私は一瞬目を瞬かせる。

今日私にアーティファクトの危険性を説いたのはどこの内亜だったか。


「あのアーティファクトの気配は感じる、けど、俺の勘が当たってるなら“今は”脅威にならない。」


いつもより多少歯切れの悪い回答を返す内亜。

けれど、大抵内亜の勘は当たる。つまり、迷うことは無い。


『じゃ、いくよ』


そう言った直後、私はジェミニを構えて呪文を唱えるのに夢中になっている信者たちを制圧する。

1、2、3‥‥‥8人ほどだっただろうか。念のため気絶用の弾を撃ち込んでおく。

すると、中央の炎の柱に変化が起きた。


詳しく言うとややこしいので簡潔に結論だけ述べるとするなら。


“炎のあった場所に、一人の少女が倒れている”。


倒れている少女はもがき苦しみながら地面をのたうち回る。綺麗なエメラルドグリーンの髪が乱れ、地面の小石に擦れた頬からは血が滲む。


「んしょ、っと。葵、その子がきっと“器”だ、多分体の中の魔力が暴走しかけてる。貸して。」


言われるまでもなく、いつの間にか影の中から現れていた内亜にその少女を託す。

すると、内亜はいつの間に持っていたのか、首輪のようなものを少女につけた。

すると少女は急に大人しくなる。いまだ呼吸は乱れてはいるが、すぐに安定するだろう。


『んんん、色々聞きたいけど後。どうする?』


私はいくつもの疑問を抑え込んで内亜に問う。


「ずらかりたいけど、葵、今日連れ去られた人たち、助けたいんでしょ。」


私は即座に頷く。すると内亜はニヤリと嫌な予感のする笑みを浮かべて言った。


「それじゃ、悪だくみをしよう、葵。」


一体全体何をやらかす気でいるんだコイツはと問いたくなったが一生懸命にその問いを抑え込んで頷いた。

すると、内亜は倒れた信者たちの中から小柄な人物を選ぶとローブをはぎ取り、こちらに投げてよこした。


『え』


「ほぉら早く着て着て、そろそろ目を覚ます頃合いだ、早くしないとバレちゃうよ?」


にっこり微笑みつつ、内亜はローブをはぎ取った信者を影の中へと収納(?)する。


なんだか非常に嫌な予感がするのは気のせいであってほしい‥‥‥‥‼



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獅噛水紫@sikami_suishi

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