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[五章]彼方よりの来訪者【Ⅲ話】

三話目。葵さん視点です。


ノワールが繋いだ扉の先は、昼時にも関わらず薄暗い雰囲気の漂う路地裏だった。

かつて店だったと思しい建物の扉を静かに閉める。


辺りはあまり見通しが良くないが、あちこちの物陰にゴミやそれと見分けのつかないような人間が転がっているのが知覚できる。


(路地裏っていうよりスラムだなぁ、多分。)


都市の人間が法律に従う様に、スラムには彼らのルールがある。干渉することが相手にとって幸福をもたらすとは限らないし、良識が自分の身を護るとも限らない。内亜と一緒にこういう場所の探索をしたときに言われた。


激辛ワインでダウンしている相棒の教えを思い浮かべながら、“住民”の様子を見て回る。太陽の出ている今の時間、今日の糧を求めに出ているのか“住居”に比べて人の数が少ないように感じる。

衰弱しているのか転がっている人間もいるけど、話を聞けそうな様子ではない。


(下手に手出しをして彼らのルールを乱すのもやめといた方が良いか‥‥‥‥)


仕方ない、と人目のつかない位置の扉からバーに戻り、別の目撃情報があった場所へ向かう。


『ん。』


また、スラムである。さっきとは別の場所だが、薄暗い荒んだ空気が似通っている。

ある程度辺りを探索してみるが、やはりここも先程と同じく住人達独自の生活が営まれている場所だった。


(二か所目までは偶然かとも思うけど。)


そう思いつつまた別の地点へと出てみる。

あまり良い予感ではなかったので外れてほしかったのだが、やはりというかこの地点もまたスラム街であった。


(‥‥‥‥‥‥)


黙って拠点に戻り地図を広げる。

そして、先程訪れた場所へはチェックをつけ、他の地点を詳しく見てみる。


「マスター、大体見て回ったかと存じますが、何か気付くことはございましたか?」


カウンター越しにノワールがそう問いかけてくる。


『ん。まぁね。‥‥‥内亜は?』


そう言って地図から顔を上げると、ノワールはまるで汚物を見るかのような目でカウンターの片隅に目をやる。

つられてそちらを見ると、内亜がバーテンダーの格好をして棚に並べてある酒類の中からいくつかを物色して何種類かのカクテルを作っている(さま)が目に入った。


『なにあれ』


ついそう口に出すと、ノワールはため息をついた。


「私から受け取るドリンクがお気に召さないからと今度は自分で好き放題カクテルづくりをし始めまして。あれを片付けるのがいったいどれほど面倒か、そして目障りか。」


瞳をキラキラ輝かせて、たまに見かける酒のボトルをジャグリングのように投げてキャッチしたりと、フレアバーテンダーの真似事(というには技術が高すぎるが。)をしていた。


『何で内亜遊んでるの‥‥‥‥‥‥』


私は現地探索の為にそれなりに気を使って本来連れていきたかった内亜も置いて行ったのに。

回復したどころかなんかやってるし。

完全に集中している様子に、私もため息をつかざるを得ない。

するとこちらに気が付いた内亜が駆け寄ってきた。


「あ、葵おかえりぃ~、なんかね、人間が面白いことやってたから真似してみた!ねぇこんなのどう??」


なんて言いながらボトルを駆使して華麗な技を見せつけてくる内亜。

確かに綺麗だしすごいと思う、けど


『うん、今はちょっと真面目な話したいんだけど?』


こちらが真面目に散策をしていた最中遊んでいたのかと少々呆れつつ、私は内亜が投げたビンを空中でプリズム片に乗せて回収し、ノワールへと渡す。


『はい、ノワール。ごめんね、後よろしく。』


「あ~‥‥‥‥もう、イイトコだったのに。んでなぁに、真面目な話って。」


よっぽど先のフレアが楽しかったのか、それとも酔っていたのか、名残惜しそうにしながらもこちらを見ていつもの表情に戻る内亜。


「んで、なぁに。」


『えっとね、今回の事件なんだけど‥‥‥』


そう言いつつ出た場所全てがスラム街であったと話をすると、内亜は数秒考えた後


「まぁ、戸籍のない人間攫ってなんかやらかしてる集団がいるって話じゃないの?

後、俺呼んだってことはどうせ残りもスラムだろうから一緒に来いってことでしょ。その辺はさすがにまだ葵苦手だもんねぇ。」


そう言って私の影の中へと溶け込んだ。


『‥‥‥‥‥まぁ、そうなんだけど片付け位したら?ノワールがいい加減怒って何かしても私関与しないよ。』


そう言うと、私の影が勝手に伸びて一瞬で散らかっていたビンたちを元の場所へ戻す。

余程今日の唐辛子ワインが効いたと見える。


「では、行ってらっしゃいませ、マスター。」


先よりもとても爽快な笑顔で私を見送るノワール。


(そのうち何とか仲良くしてほしいとこだけど‥‥‥‥‥しばらくかかるなこりゃ。)


私は内心そう思いつつ、次の地点へ繋げられた扉を開いた。


案の定そこはスラム街で、私は内亜を連れてきてよかったと心底思った。

スラムに溶け込むには、私の外見は大分異質だと内亜が昔から言っていたから。


「ん、葵。」


唐突に足元から声がかけられ、姿を隠すための影のマントを渡される。


『え、あ、うん。』


説明を求める余裕はなさそうで、、私は素直にマントを羽織った。

すると、奥の通りの方からローブの集団がぞろぞろと現れて、周辺にいた住民たちを見境なく攫い始めた。


『え、ちょ、』


思わず飛び出そうととするが、体が動かない。

内亜に止められていた。


『内亜‥‥‥?』


影から痛いくらいにピリピリとした内亜の感情が伝わってくる。

私はそれ以上何も言えず、マントの集団が住民を攫い、どこかへと去っていくのをただ見る事しかできなかった。





いつもと違う内亜の様子。

ちょっと気圧差やら病み上がりで多少悪寒が残っているやらで今日は一話だけの更新にとどめておきます。

本当はもっと書きたいんですけどね‥‥‥

皆様もお体には本当にお気をつけください。水紫と獅噛は作業中の体制の悪さというかなんというかでサ□ンパスにいつもお世話になってます‥‥‥‥

ちょっと真面目にマッサージ器が欲しいくらいですね。


そういえば二点ほどご報告があります。

まずは作品自体について。

水紫は結構キャラクターの感情にそのまま乗っかって執筆をするので、誤字脱字や読みづらいところが多いかと思います。ですので、一話目‥‥‥‥いえ、一章目ですかね、初めの方から知人に協力してもらって細部の表現の変更を行っております。

もし見返していただける方がいらっしゃれば、今日までに一章、疑惑の教科書編は遂行が終わっておりますので是非読み返してみてください。だいぶ読みやすくなっているかと思います。

そして二点目。水紫と獅噛は気圧差に非常に弱く、唐突に執筆のできない日などがあるかと思いますので公式()Twitterをつくろうと思います。

また出来次第告知させていただきますのでフォロー等していただけると非常に嬉しいです。

ちなみにそちらの方からは獅噛のアカウントも連携していく予定です。獅噛へのイラストの依頼などができるように準備を進めておりますので、よろしくお願いいたします。

では今日はこの辺で。また次回お会いしましょう。

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