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[五章]彼方よりの来訪者【序章】

さて、新章です。

『っッ!!!!!!!』


私はベッドから跳ね起きた。


じっとりと嫌な汗で寝間着が濡れている


『—————、』


喉がつっかえて声が出ない。


無理やり咳払いをする


『あ、あー。』


よかった、声が出た。


顔でも洗おうと洗面台の前に立つ。


鏡に私の顔が映る


機械的にヒトを殺していた“悪夢で見た顔”と同じ顔が映る。


違うのは、色だけ


無意識に、自分の髪に手を触れる


両方とも、空を映したような透明感のある水色。


悪夢で見た髪は真っ白だった。そして、同じく水色のはずの瞳は深紅に染まっていた。


あの夢に出てきたのは私だったのかそうではないなら何故私と同じ見た目の存在があんなことをする夢を見たのか私でないなら誰なのか私はいつかにあんなことをしていたのか——————


「‥‥‥‥‥‥大丈夫?」


ぐるぐると廻りだしそうな思考が内亜の声で中断される。


『大、丈夫‥‥‥‥』


そう答えると、するりと勝手に内亜が出てきた。


『?どうし————』


内亜の鼓動が聞こえる。どうやら、抱きしめられているようだ。


それと同時に、平常じゃない自分の心音に気付く。


大丈夫じゃなかったみたいだ。


『あり、がとう』


「どーいたしまして。」


そう言って私の髪を撫でる内亜。


まるで妹のような扱いだ。けれど、今までの旅の中で育まれてきた関係性は確かに兄妹のそれに近い。なら、いいかと私は抵抗せずに大人しく頭を撫でられる。


「んで、どーしたのさ」


内亜が問う。


『えっと、』


思い出そうとして、頭痛がした。うまく思い出せない。


『多分、悪夢‥‥‥‥?』


曖昧な答えを返す。本当に、何も思い出せなかった。さっきまで、あんなにも生々しい感覚があったのに。


「多分?葵がなんか忘れるのって相当だよねぇ。どーする、散歩にでも行く?」


そう言って内亜はぱっと離れてエスコートするように手を差し出してくる。


『ふふ、なにそれ。いいよ、のっとく。』


思わず笑みが零れて内亜の手に自分の手を重ねる。


「そいじゃ、空の旅にれっつらご~」


そう言って窓から連れ出され、全身を浮遊感が襲う。


『わ、ぁ。まだ明け方だったんだ。』


人目に付かないように飛んでねと注意しようとして、空の色を見て言いかけた言葉をひっこめる。


「こんな時間なら多少見られたってねぼすけの勘違いで片付けられるでしょ」


私の言いかけたことは内亜も分かっていたみたいだ。


『それにしても、内亜空飛ぶの上手だよね。』


私は手を繋ぎ、内亜の翼を見ながらぽつりと言う。


「うーん、俺は元々飛ぶ能力はあったからね。逆に飛べないって感覚の方が分かんないやぁ」


まぁ、仕方がない。元から飛べる存在と、後からその能力を獲得しようとする存在とではそれこそ天と地ほどの差がある。

私もいい加減に飛びたいなと思いつつ、ぎゅっと瞳を瞑って背中のあたりに力を籠める。


「お、?」


感嘆したような内亜の声。どうやら形にはなったようだ。一瞬だけ内亜に手を引かれるのとは違う浮遊感があった。

しかし、すぐに集中力が切れてしまう。


『だめ。空を飛ぶという気持ちと翼を生やすという気持ちが両立できない。』


私の言葉を聞いて静かに考える内亜。


そして、ふとこんなことを提案してきた。


「翼があるから飛べるんじゃなくて、飛べるから翼があるんじゃないの?葵、一回目閉じて。で、自分が浮かんでいる姿想像してみて。」


『こ、こう?』


瞳を閉じて、自分が浮かんでいる様子を想像してみる。なんとなく、ふわり、ふわりと風を感じる。


「そのまま、そのまま~。飛んでるとき、葵にはどんな翼が生えてるのかな。」


『私の、翼‥‥‥‥‥』


なんとなく、プリズムでできていて、妖精のような翼が思い浮かんだ。

私の魔力は純粋な魔力、魔力で飛ぶなら、魔力を形にして飛ぶんじゃないかというイメージだろうか。


ふわり。


風の向きが変わった。それを感じる。

流されないように。私はここにいると、そう感じる。


「‥‥‥‥‥ほいさ」


内亜の声がして思わず目を開けると、私の目の前で内亜が両手を振ってニコニコしていた。


『あれ、?』


自分の姿を確認する。


浮いている。


『できた、?』


「ん。できたね。」


内亜が頭をなでる。

なんとなくくすぐったくなってくるりと宙返りして内亜の手から逃れる。


「制御もできるじゃん。成功成功。」


言われて気づく。


『わ、わわ』


意識してしまうとまだ不安定になってしまうらしい。けど。

‥‥‥‥空を一人で飛ぶというのはこんな感じなのか。


「葵~、ゆっくり飛ぶからついてきてみなよ」


そう言って内亜は先に進んでいく。


『あ、ちょっと、待って』


焦りが出たのか、スピードが出すぎた。

内亜を簡単に追い越して、私は空中へ放り出される。


「あ、ちょ、葵?!」


内亜の焦った声が聞こえるが、一瞬強く感じた風が楽しくて、肩の力を抜いてそのまま高みを目指してみる。


澄んだ朝の空気が涼しい。


そのまま風に乗ってくるりるりと踊るように旋回してみたり、宙返りしてみたりする。


『あははっ』


楽しくてつい、笑い声が出た。


「葵ー!!ちょっと、飛びす、ぎ‥‥‥‥わぁお。」


追ってきた内亜が私の様子を見て固まる。


『?』


小首をかしげてからはたと止まる。


『あれ、自由に飛べてる。』


「ほんとに。や、教えるとこなかったなこりゃ」


そう内亜が言うが、内亜が今まで何度も練習に付き合ってくれていなければ、きっと私は飛べなかっただろう。


『ううん。ありがとね、内亜。』


そう言って内亜のところに戻る。


「帰りは自分で?」


『うん、行ってみる。』


戻るまでは、難なく翼の制御ができた。


出てきた窓が視界に入ると、いつも内亜がやってるみたいにすとんと着地してみる。


‥‥‥‥‥嬉しい。


余韻に浸っていると、扉からノックの音が聞こえた。


『はーい?』


そう言って扉を開けると、そこにはノワールがいた。


「マスター、面白い情報が入りましたよ。」


にっこり微笑んでそう言うノワール。


さて、今回はどんな場所に行くことになるのだろうか。



悪夢の存在は何だったのか、これから行く先はどこになるのだろうか。また新しいストーリーが始まります。


2022.01.08

以前から言っていた腱鞘炎は何とか治ったんですが、今度はちょっと調子を崩したのか体の表面が泡立つような、そんな感覚が常時体を蝕んでいる状態になっております。

これから暫くはお休みか、一話だけの更新の日々になるかと思います。楽しみにしてくださっている方々に申し訳ない‥‥‥‥とりあえず、12日水曜日に病院に行ってそれからになりますかね。

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