何も感じぬ者
何もない。
魔力で象った三角錐で人間を貫く
一、十、百、指示された回数だけその行動を繰り返す
これが正解だと■たちが言う
ならきっとそうなんだろう
この行動は“壊す”“殺す”というらしい
遠ざかってゆくものにそれを施す
それが救いだと■が言うから
そうするべきだと■が言うから
おおきな人間がちいさな人間に覆いかぶさる
それに意味はあるのだろうか
考えても分からない
分からないまま両方に救いを施す
黒い筒や銀色の棒を使って“攻撃”してくる人間もいる
無色の結晶壁に阻まれて自分には届かない
寄り集まって“攻撃”してくるそれらにも救いを施す
平等に
何かを叫んでいるようだ。
あくま、そう聞こえた
その単語の意味は分からない
分からなくていいと■は言う
紅い水の溜まった場所がある
それを見ると“自分”が映る
特に何も感じない。
救いを施したものたちと同じ外見をしていた。
その傍の藁束、視覚的に隠された場所でちいさな人間がふるえている
救いを施す
小さなものは紅い水になった
それでいいと■が言う
そうあれと■が言う
だからそれに従う
みつけたものに救いを
けれどなぜだろうか
救いを施すとそれらはわめく。
何かをわめく。
理解できない。
向けられる視線
それは“恐怖”と教えてもらった
救われることに恐怖するのか
理解できない
何故恐怖するのだろう
これは救いなのに
■が施す救いなのに
疑問を■に止められた
意味がないと
であれば考えない。
だって■が正しいから
やがて救うもののいない場所に来た
“森”というらしい場所に出た
中を進む
視覚情報が広がる。
何も救うべき存在がいない場所。
ふと、自分が紅い水で汚れていることに気が付いた
前方に大きな水溜まりがあった。
だから、汚れを落とそうと足を一歩踏み出す。
次の瞬間、浮遊感と共に水溜まりの中に落ちる。
■が、これは水溜まりではなく“湖”だと教えてくれる。
けれど意識が低下していき、■が何を言っているのか分からない
やがて私の意識は閉ざされて、真っ黒に染まった。
意識は失われた。