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”彼女”の話。
全ては魔王、アザトースの夢の中
かつて異形の戦争があった。
クトゥルフ神話における戦争
人間へ加担した旧神と自ら支配者となろうとした旧支配者たち
それを遠くから観察する外なる神
戦争に勝ったのは旧神
旧支配者は地の底、海の底、空の果てへと追いやられた
知性を失った旧支配者
理性を失った旧支配者
役割を終えて眠りにつく旧神
彼らは彼らの役割を眠りの中で待っている
人間、天使、悪魔、魑魅魍魎そして神々
全ての意思持つものを混ぜ合わせ彼女は創られた
彼女が作られた理由は
彼女の役割は。忘却の彼方に去った
彼女は彼女であり彼女ではない
未だ寂莫とした彼女の心
あらゆるものが混是合わされ空っぽの心
混沌から生み出される感情
混沌から生まれる言葉
彼女は知らない
彼女は彼女であり彼女でないことを
彼女は知らない
これから先何が待ち受けているかを
彼らは知らない
彼女がこの先何を起こすかを
彼らは知らない
彼女の在り方を
私達は知らない
彼女の事を
彼らは知らない
彼女の夢の中で育まれるものを
彼女が起きたらどうなるだろう
彼女が目を覚ますのはいつだろう
きっとこれから先
きっと今までも
彼女は目を覚まさない
彼女が目を覚ましてしまえば
世界は
この場所は。
彼らは知らない
彼女は知らない
彼女を創った神々は分かっていない
彼女を形作る存在の事を
異形の全てを
普通の全てを
この世の全てを
夢の全てを
彼女一人に押し付けた
彼女は知らない
自分の役割を
彼女は知らない
自分が何者かを
彼女は知らない
自分が与える影響を
彼女は知らない
自分が何であるかを
彼女は知らない
自分がいつ目覚めるかを
そうして彼女は眠る
自分の夢の中で
何が起きているかを知らぬまま
そうして彼女は眠る
魔王の夢を塗り替える夢を抱えて
