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幕間【お正月】

お正月ネタです。2022文字ぴったりにしてみました。


二礼、二拍手、一礼!


私は除夜の鐘が鳴る寺で、礼式に沿った初詣を行うことになった。


というのも、こういう時に限ってやらかす邪教集団が多いからだ。


なんで一年の最初の煩悩を消し去ってもらった直後にそんな集団が暴れまわるのだと問いただしたいが、連中からしたらこちらの方が邪教徒で煩悩だらけだから‥‥‥‥だとかなんとか。


そんなこと知ったことではないけれど、それに巻き込まれる一般市民はそうもいかない。

そうならないためにも、年明けというものはしっかりと気を張らないといけないはず、なんだけれども。



—————————————



『ふにゅぅ。』


今年はなんだか静かである。


つまりやることがない。


つまり


『こたつでみかん、美味しい。』


のほほんと正月を迎えるしかないじゃないかと私は今こたつという文明の利器にはまっている。


「葵~、おぞーにたべたぁい」


内亜もこたつの中でぬっくぬくしている。暖かい。


「貴様ら年明け早々だらけすぎだ。」


そうやって仁王立ちして私達を見下ろすのは、ネフィウス・アクアサイト。

私の武術の師匠である。


『だって年明け今年平和だし、年明け以外ずっと動いてた。』


私はみかんを口に放り込みながら言う。


「行儀が悪いぞ葵‥‥‥‥全く、何もないからと言って気を抜いていたら何か起きた時に対応できぬぞ。」


「葵~おせちあるよぉ」


内亜がこたつから抜け出し、キッチンから声をかける。


その言葉にネフィウスがピクリと反応する。


『おせち。食べてみたい。』


「だからだらけすぎだと」


チーン。


オーブントースターの音がした。


「葵~お雑煮用のおもち焼かれてる~」


一応説明しておくけれど断じて私じゃない。


内亜でもない。


そしてこの家はネフィーの家。


つまりは


「‥‥‥‥‥‥‥‥‥はぁ。バレては仕方ない。食え、用意しておいたぞ。」


と、作った本人が仰せなのでありがたく頂戴することにする。


驚いたことに栗きんとんも黒豆も全部手作りである。


『ネフィーって家事得意だよね。』


「まぁ、暮らしがままならなくては生きることも難しくなるからな。」


「何歳なんだか分んない年齢不詳の青年はいつまでかは家事ができず苦労したと」


内亜の軽口にネフィーの鉄拳が飛ぶ。


「いったあああああああああああ‼」


本気で痛そう。というか影のはずの内亜に何で攻撃が当てられるんだろうか。


『おせちにお雑煮、いただきます。』


悶える内亜の分もあるあたり、ネフィーは優しい。確か内亜は食事を必要としないはずだから。


「ちゃんと噛んで食えよ。」


ポンポン、と頭を撫でられる。


暫く堪能していると、内亜がいつの間に復活していたのかおせちに舌鼓を打って楽しんでいた。


「ネフィウスこれ美味しいじゃん、いい嫁になりs冗談だってば。」


殴られそうになるのを回避する内亜。なぜ学ばないのだろうか。


そういえばおせちにはいろんな意味が込められていた気がする。


「栗きんとんとかはわかるけどさ~ぁ?ほとんどダジャレだよね」


エビは腰が曲がるまで健康に過ごせるように、黒豆は“マメ”に生きられるように。


『まぁ、俳句なんかも好きな日本人だから、洒落は好きなんじゃないかな。』


そういえば私は国籍で言うとどこなのだろうかと不思議に思う。


名前は日本の名前だけれど、どこの国の言葉も話せるし書ける。


私自身、気にしたこともないので特に問題はないけれど、日本人というには髪なんかの色が明るすぎる。

内亜はというと


「え?俺の名前は自分でつけたよ。ナイアで内亜と、天海、つまり空と海が内に在る、ってね。」


というし。


「天の音を響かせる葵の花。花言葉は“気高く威厳に満ちた美”“高貴”“神聖”“温和、やさしさ”などという。名前を付けたのがどこの誰だかは知らぬが、良い名だと俺は思う。」


ネフィーが唐突に言い出した。


『そんなに大層な事、出来てるかな。』


私は呟く。


まだまだ迷いも多い。力の扱いにもなれず、正直力任せに事件を解決しているのが現状。


そんな私が、と一瞬思うが、とんとん、と肩を叩かれて振り返る。


「大丈夫。支えてるでしょ?」


内亜が笑顔で言う。


たまに真面目なことを悪意なしで言ってくれるのは、うれしいけれどずるいとも思う。


「名前に自信が持てなくなるなら、自信が持てるように努力すればいいさ。」


ネフィーもそう言って私の好きな煮物を取り分けてくれる。


『ん、そうだね。』


椎茸(ちゃんと飾り切りもしてある)をもぐもぐしながら、私は頷いた。


これからは、きっと私の知らない私のことも知ることになると思うけど。


けど、名前の花言葉のように、気高く生きていこう。


なんとなくだけれどそう思えたのは、いつも隣にいる内亜のおかげだと思う。


口に出したら絶対に調子に乗るから口に出さないけど。


いつも頼りにしてる、私の相棒。


まだ飛べない私の翼で、一番の理解者。


『ねぇ、内亜?』


「んむ?」


お雑煮のお餅をほおばりながら振り返る姿につい笑ってしまう。


『今までありがとう。これからも、どうかよろしくね。』


「‥‥‥‥勿論。こっちこそよろしくね、葵。」




年明けの章(4章になりますかね)は、予定ではお正月の夜には書き始めちゃうかもしれません。

でもおやすみするかも?

お仕事皆様沢山なさったり学業にいそしんだり。

正月太りだけには気を付けてくださいね。

年内滑り込み始まりの『異形だらけの神話TRPG世界のただ中で。』ですが、2022年もよろしくお願いします。

もし見かけたりしたら高評価などつけていただけるとありがたいです。

それでは、また次章。

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