幕間⑭うたかたの夢
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ここはどこだろう
何だか荒廃した街のような気がするけれど、こんなところ来たことがない。
『誰か。』
そう言おうとして気が付いた。声が出ない。
ということはここは‥‥‥‥‥
(夢の中‥‥‥‥‥‥?)
辺りを見回してみると苦しそうな誰かの声が聞こえる。
こんな夜中に‥‥‥‥‥?
近寄ってみようとするも足が動かない。
ふむ。ここは傍観者でいろという事か。
苦しそうな声、何だか気持ちの悪い声。それらが聞こえたと思ったら、場面が変わった。
子供の泣き叫ぶ声、妖艶な女性の声。
なんだろう、すごく気持ちが悪い。
『やだなぁ、この夢。』
そう思っているうちに見慣れた天井が目に入ってきた。
「葵様、おはようございます‥‥‥‥‥‥‥どうかされましたか?」
宮叉が入ってきて不思議そうな顔をする。
何だろうと思って頬に触れてみたら濡れていた。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥夢に、感化されたんだろう。
『問題ないよ。欠伸しただけ。でも文人には言わないでね、なんか変な誤解生みそうだから。』
「かしこまりました。」
そう言って差し出された水と紅茶を飲む。
『ん。宮叉秘蔵の紅茶じゃん。どうしたの。』
「昨日のお礼です。‥‥‥‥‥‥主様には内緒ですよ?」
『じゃあ、お互い内緒話って事で。』
そう言って微笑み合う。
けれど。
(あの夢は、何だったんだろうか。)
二人分だろうあの不快な夢。きっと私とかかわりのある存在の過去‥‥‥じゃないかな。
けれど‥‥‥‥‥‥全く見当がつかない。
宮叉が去った後にぽつりと呟く。
『誰の、苦しみだったんだろうか。』