[三部五章]好き①
書きたかったんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
そして指使いづらいいいいいいいいいいいいいいいいいい
『さて、と。』
図書館に戻って来たはいいものの、魔術書を読もうか感情の本を読もうか迷う。
そうして迷っていると、今一番困る相手に会った。
「あれ、葵おかえり。どうしたの?また何か探してる本でもあるの?」
『別に。』
咄嗟に返した声はちょっとぶっきらぼうで、チラッと文人の方を見るとちょっと困惑した顔でこちらを見ていた。
『や、えっと、大丈夫、何でもないの。』
慌てて訂正すると、つい耳が赤くなる。それを見た文人が、にっこりと笑う。
「赤くなっちゃってかーわいい。何があったの?」
『別に‥‥‥‥‥』
「最近葵をいつもの場所で見かけないから何の本読んでるのかなーって探してみてたんだー。
何の本読んでるの?」
『ふぇあっ!?』
つい変な声が出ると同時に顔に熱が集まるのを感じる。
『いや、別に変な本は読んでないから!!!!!』
「ん?んん??別に図書館に葵が読んじゃいけない本なんかないと思うけど‥‥‥‥」
『う、うん。だから考えなくっていいよ、うん。』
ことり。
影から一冊の本が吐き出される。
「『あ』」
声が被る。その本の表紙はなんだかすごくキラキラしてて、一目でジャンルの分かる物だった。
『‥‥‥‥‥‥‥』
(内亜あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!)
「葵、これって‥‥‥‥‥恋愛小説?」
内亜に対して本を大切にしてよねなんて呟きながら吐き出された本を拾い上げる文人。
そのまま私の方を見て、ちょっとびっくりした顔をすると、にっこり微笑んで文人は言った。
「葵、好きな人できたの?だぁれ?」
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥無言で文人を殴った。
「痛、くないけど何で??????」
『だっ、』
だって、好き(かもしれない)人にそんな事聞かれたら困る。というか内亜はバラす気なのだろうか。こんな中途半端な状態で???
「ね、教えて?」
‥‥‥‥‥そんな寂しそう?な顔をされても困る。というかもしかして困ってるの分かっててその顔をしているんだろうか。
『‥‥‥‥‥‥分かってるくせに。』
そう呟く。文人は幽鬼に似て小狡いところがある。だからきっと分かっているはずだ。
分かっていて私に言わせたいから聞いているだけだと今なら分かる。
これはきっと本で読んだ、“好きな子には意地悪をしたくなる”というやつだと思う。
私が文人に好かれていることを自覚するみたいでなんだか小恥ずかしいけれど、文人は嘘もつくけれど基本的に頭が良いから大体の事象は分かって動いているはずだ。だから。
(ぜーったい言ってやらない)
だってかもしれない、なのだ。かもしれないなのに確定事項みたいに言うのはすっごおおおおおおおおおく癪である。
だから絶対に言ってやらないのだ。
「も~葵ってば~‥‥‥‥‥‥僕の事?」
降参しましたとばかりに苦笑する文人。だから一応、一応そうかもしれないから頷いてあげた。
「わぁ、本当に??嬉しいなぁ~」
なんて本気で嬉しそうな文人に、少しだけこころ、のあたりがポカポカする。
だから少しだけ自分も素直になることにした。
とてとてと文人に歩み寄って、クローネが言っていた挨拶、ハグをしてみる。
文人の心臓が跳ねたのを感じて、少し優越感に浸る。