[三部四章]アカイム街の裏の顔⑥
抜糸したけど指サックされました絶対水に濡らすなと‥‥‥‥‥
結局打ちにくいじゃないか!!
ふ、と気になっていたことを一つ思い出す。
『そういえば文人のお母さんって』
「死んだよ」
『どこにいる』
「死んだってば」
『嘘つき』
「‥‥‥‥‥‥‥あーやだやだ。何で急に?」
誤魔化そうとした幽鬼の言葉を遮って問いかけると、やれやれといった感じで幽鬼が答えた。
『ん。なんか文人の周りに変な臭いがしたから。』
「変な臭い?」
そう言われて最近の文人の動向を思い出す。
普通に司書としての仕事をしてはいるけれど、どこか黒くて気味の悪いヘドロのような臭いが文人の遠くで香ったのを感じた時にはあまりのおぞましさに少し吐き気がした。
普段から神話生物を見ているからそんなに心配することは無いと思っていたけれど、そうでもないようだ。何よりも人間の感情はおぞましく、時に美しいと最近知った。
『そう。だってそもそも、アカイム街には神話生物が集まりやすいんだろうけれど、それでもあんなに強固な結界を張るだなんて。何かあると言ってるも同然だよ。あれは文人を守るための結界でもあるんじゃないの?』
そう問いかけると、幽鬼は少し疲れたようにため息をつく。
「はーーーー。猫かぶりの女って本当におっそろしいね‥‥‥‥‥正解だよ葵ちゃん。彼女は今でもなお文人の事を狙ってる。気味が悪いことにね。だけど、文人には死んでるって言ってあるからそう思わせておいて。話題自体を出さないようにね。それに、結界の事もそうだよ。彼女に見つからないように。それに、文人に危害が加えられることの無い様。ただの人間でいられるように‥‥‥‥だったけど、最後の理由はもういらないね。だって文人、君って言う特に特異な存在に惚れこんじゃったんだもん。」
『‥‥‥‥‥』
すこし、頬が紅くなるのを感じる。
実は最近れんあいしょうせつなる物を見てはいるのだけれど、書いてあることの半分も理解できていない。好きという感情がどういうものなのか知りたかったのに。
‥‥‥‥‥‥‥けれど、なんだか恥ずかしいことが書いてあるのだけは分かって、文人の見えないところで読んでいたりする。
ふと気になって、幽鬼に問いかける。
『幽鬼。れんあいしょうせつ、って分かる?』
次の瞬間。幽鬼の表情が変わった。面白いものを見つけた時の表情だ。
やらかした、そう思った時には遅かった。
「文人の事好きになっちゃった?」
それは、最近ほのかに感じていて見ないようにしていた感情で。
つい顔が真っ赤に染まる。耳まで真っ赤だと思う。
「ふぅ~ん?へぇ~?」
意地悪な顔をしたまま幽鬼が笑う。
『や、その、本当化は未だ分からないというかなんというかこうぅぅぅ‥‥‥‥‥』
段々俯く私を楽し気に見つめる幽鬼。その視線にどこか温かみを感じるのは嘘じゃないだろう。
「やぁ、文人も幸せ者だね。まぁ大変な道のりではあると思うけれど。」
そう言われて少しだけこころのあたり?が温かくなる。
(消えたくない、理由が増えてく。あの悍ましい声には、負けたくない。)
少しだけ弱気になりながらもしっかりと心を保とうとする。
私は文人が好きかはまだちょっと自信がないけれど。
彼の事を思うと頬に熱が集まるのは本当だから。
昨日の閲覧者が五百人突破しててびっくりです。
皆さんありがとうございます!!!!!