[三部四章]アカイム街の裏の顔①
「と、いうわけであの時の宮叉さんの事件が関係しているんじゃないかと思っているんだが。葵の考えを聞かせて欲しい。」
今日は珍しく異形課に呼ばれたので来てみたら、最近のボヤ騒ぎについての話のようだった。
ちらりと部屋を見渡すと、何だか大きな部屋の何割かを占めているベッドが増えているのは気になったけれど、相変わらず彼、緋炎の元…いや。上司の廻月宮叉の席には彼の上着だけが掛けられている。
『私からしても共通点は多いと思うし、何ならあの時降臨したはずのクトゥグアは信者が割と多い方だからね。また残党が残ってて何かしでかそうとしてるって言われたら納得するよ。』
スー、スー、というとても気持ちよさそうな寝息をバックミュージックにして私は様々な可能性について考える。
「やっぱりそうか。……」
黙り込んでしまった緋炎。彼はきっと上着を残して消えた上司の事について考えているに違いない。
……考えすぎるのは良く無いと、そう伝えたのだけれど。
けれど、きっとそれだけ大切な人なのだろう。
昔は、分からなかったけれど。
家族、恋人、友人、知人。
こういった関係性に何か深いものがある事には、最近になって少しずつ気がつく事が出来た。
それはきっと彼のお陰で。
………以前の会話を思い出して少し思考が乱れる。
あの会話、もしかして結構恥ずかしいものだったんじゃないだろうか。
「葵?」
『ん、うん。私の方も仲間が増えたから、仲間に声かけて聞いてみるよ。』
「それにしても、この街はこの手の事件が多いな…」
『……そうだね』
上の空になっていた私に気がついて、緋炎が声をかけてくる。
動揺を表に出さないように反応を返し、少し考え込む。私や、きっと幽鬼の様な人物しか知らないだろう事を、伝えるか否か。
「どうした。紅茶、口に合わなかったか?」
『ううん。いつも通り美味しい。美味しい、けど。ちょっと考え事。』
「らしくないな。いつもならぶっきらぼうでもキリキリ話すお前が口籠るなんて。」