幕間⑩深紅の竜
久しぶりの六花姉。何してるか書きました。
あれから、暫くの時間が経った。
まぁ、ボクからしたら数か月程度一瞬にすぎないのだけど‥‥‥‥
あれ以降、情報収集をしているうちに面白い情報を入手した。
“アカイム街”この街に、異形がぞろぞろと集まり、目撃情報も多数出ているとか何とか。
そこの街の病院には本物の天使様がいるとか、図書館には本の妖精が出るとか。
‥‥‥‥‥いや、情報多すぎるでしょ。
教員の中には脅威の身体能力を持つ女教師がいるとか、警察署の中には秘密の課があるとか。
(怪しすぎて流石になぁ‥‥‥‥この目で見るのが一番早いんだろうけど、そこまでするにもこんな規模の異形だらけの街があること自体が異常だし。‥‥‥‥‥はぁ、後回しにして他の情報を探そうかな。)
多分だけれど私の勘が告げている。そのアカイム街、おかしな街には妹二人がいるだろうと。
けど、まだ時じゃない。そうも思うのだ。だからこそ別の場所で何が起こっているのかを把握するために色々と文字通り飛び回って情報収集に徹する。
『‥‥‥‥‥ん。紛争地帯‥‥‥情勢の悪化による紛争が始まったと‥‥‥んで?支援者がいてその支援物資が届けられるのがもうすぐ‥‥‥‥ふむ。ちょっと気になるな、これ。特にその支援者。普通じゃないだろうし。』
色々な国を巡っているうちに見つけた新聞の情報。だけれど、時系列を見る限り情勢の悪化から紛争に至るまでの速度がちょっとばかし早すぎる。
(これは‥‥‥‥どっかのお国の上層部がなんかやらかしてるな。)
そう思って、ボクはその支援者の元を訪ねようとして支援者を探す。が。いない。
『んーーーー?あんまりにも情報なさすぎやしないか?この情報‥‥‥まるで支援者として名乗ってる人と別に本当の支援者がいるみたいじゃんか。』
そう思って、情報を集める。
色々な国の色々な場所、情報の集まる場所を巡りにめぐってようやく得た情報は‥‥‥‥‥
『おんみょうじ?なぁにそれ。』
その人物の名前は分からなかった。けれど、職業は“おんみょうじ”とかいう物だと名乗っているらしい。
ちょっと気になって調べてみると、その職業はずーっと昔、日本で言う平安時代とかいう時代に主に活躍したとされる、いわゆる西洋で言う魔術師のようなものだと分かった。
(うーん。当人の動き的に、悪い存在じゃなさそう、どころかいい人なんだろうなぁ。‥‥‥‥‥ちょっと接触してみようとは思うんだけど‥‥‥‥如何せん情報の制限が厳しいや。そんなに他人から信頼されているんならもっと前線に出てきても良いものを‥‥‥‥いや、それとも。)
ふと、頭をよぎったのはあのちょっとむかつくホログラムの顔。
(“あの人”みたいに、自分は出しゃばらないタイプの性格‥‥‥‥実力はあってもそれを誇示することのない、謙虚と言えば聞こえはいいけれど、実際はただ自分の居場所を知られたくない人物が何人かいる人。って感じかな。あとはまぁ、面倒ごとに“巻き込まれる”のを嫌うタイプか。)
色々と考えてみたけれど、答えは出ない。
そりゃそうだ。ここまで情報が出てこない人物が、そう簡単に人物像まで出させてくれるわけがないんだから。
『んー。正直ボクもあんまり前線に出たくはないんだけど‥‥‥‥ちょっとアプローチ位はしてみようか。』
そう思い至った瞬間から、活動を始める。
色々と接触してきた情報屋にそれとなーく、自分が同じ情報を集めているらしい、という曖昧な情報を流しておく。
(これで簡単に釣り出せれば上々だけど。‥‥‥‥‥まー、やり口から見るに慎重な人物みたいだしどっかで“もう会ってる”なんてこともあり得るなぁ。あーあ、ちょっと面倒くさいけどちゃんとやらないと。)
内心では文句たらたらだけれど、仕方がない。
普通の外見としても“アルビノ”と呼ばれる珍しい外見なのに、もしも万が一人前で本性である“ドラゴン”としての姿が露出してしまえば大問題どころの騒ぎじゃない。
(今でも一応ドラゴン狩りする人間はいるみたいだしなぁ。‥‥‥‥‥流石にちょっと、ボク自身が人前に出るのはもうちょっと後にしよっと。)
それに、自分の情報を先に出すのは相手に対しての礼儀としては正しいのかもしれないけれど、ボクとしてのリスクは少ない方が好みだ。
だから、敢えて“私もあんまり表に出たくないんですけどー”ってな感じで情報を撒いておく。
ま、そう簡単に釣れる存在じゃなさそうなのはこの際置いといて。
『さてさて?鬼が出るか蛇が出るか。いっちょ博打といきますか。』
そう呟きながら、一人静かに新聞を読みながら西洋のとある喫茶店でくつろぐ。
ん?さっき人前にあんまり出ないって言った?
‥‥‥‥‥だって。
「こちらご注文いただきました、フルーツたっぷりパフェDXです。」
こんな夢みたいな甘味が人間の住む地上に存在するなんて知らなかったし。
仕方ないじゃん。甘味という名の嗜好品は方船ではちょっとしか食べたことなかったし、あっちはどっちかって言うとちゃんと自分の活動に問題がないように活動できるようにするための栄養食を摂ってたから。
(とりあえずこの最高の甘味を堪能してから情報撒こうっと。)
そうして私は大きなパフェの最初の一口を口へと運び、その甘露に酔いしれる。
完全に俗世に嵌ったドラゴンってどうなんでしょうか。まぁ当人(?)が幸せそうなのでいいかなと思ってます。