表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
196/246

[三部一章]眠り人 花鳥風月  

最近処方された薬がまずくって飲めたもんじゃないです。


「風月!お前また寝てただろ!」


あぁ、五月蠅い声がまた聞こえる。


『良いじゃないですか。仕事、もう終わりましたし‥‥‥‥ふわぁ‥‥‥』


自分は確かに警官としてちょっとだけサボり癖があるかもしれない。

けれど、仕方がないじゃないか。活動限界が一日二時間なのだから。


「もう終わったのか!?‥‥‥‥って、そうではなく!我々は国家公務員だぞ!住民たちからの税金で俺たちの給料は賄われている。それに対する対価とでも言うべき仕事をしっかりとこなすべきじゃないか。お前が仕事をしている間は誰よりも活動しているのを知っているが、それが終わった瞬間何をしても起きないというのは公務員としてどうなんだ?」


聞き飽きたセリフを、欠伸をかみ殺しながら聞き流す。一応分かっている。この上司だって、好き好んで俺を怒鳴っているわけではないことくらい。


『でもちゃんとその二時間で誰よりも仕事こなしてるから良いじゃないっすか‥‥‥』


しかし、眠気という物はどうしても俺にとっては抗いがたいものだ。

というか眠ってからじゃないと仕事の一つもろくにできたもんじゃない。


「だからと言ってなぁ‥‥‥‥‥ったく、本来ならもっときちんと色々と言って聞かせるべきなんだろうが‥‥‥‥風月。お前に辞令だ。異形課への異動命令だ。」


欠伸がちょっと止まった。

今なんて?異形課?

確かに都市伝説的な何かとして異形課という物の存在は話に聞いたことはある。

けれどそれは‥‥‥‥‥


『都市伝説じゃなかったんっすね、その異形課ってやつ。』


警官たちの中でも都市伝説時見た存在として扱われている課、それが異形課。

しかも前触れなく、唐突な異動命令ときた。


「まぁ、な。場所は分からないと思うからこの地図通りに行くように。即座に来てほしいとの依頼だからな。失礼なことはするなよ。」


そういえば名乗り遅れたけれど俺の名前は花鳥 風月 (はなどり ふうげつ)。

俺自身の体質からか、起きていられる時間は一日二時間程度。

警官になってから数年が経つが、良くやってられるもんだと自分でも思う。

それに。


『先輩がそんなこと言うなんて、異形課ってそんな偉いんっすか?』


「ん‥‥‥‥まぁな。都市伝説と化しているのは知っているし、それについては俺たち上層部にしか知らされていない。部下に詳細な情報を渡したりするときにはこう言った異動命令を下す時くらいのものだと決められている。‥‥‥‥ま、行ってみれば分かるが、色々と特殊な課だ。頑張れよ。」


警官として仕事を始めてから最初の頃は、この体質のせいで色々と言われて面倒だったが、この上司はそんな俺を自分のチームに入れてくれ、なんだかんだ人前だからと忠告はしつつも俺の事を尊重してくれてはいた。

そんな人と離れるのは少々後ろ髪を引かれる想いがあるが‥‥‥‥まぁ、仕方ない。その異形課とやらに行ってみるしかないか。


『うぃっす。んじゃ、また』


そう言って、自分の荷物(とはいえ、殆ど持ち物は無いし、大きなものは枕位なものだけれど。)を持って、地図の通りに署内を歩き回る。


(‥‥‥‥‥署内、こんな構図だったか?)


俺は一度見た書類やら何やらの事はほとんど忘れない。

署内の地図だって、何度か見たことがあるのでしっかりと覚えているはずだ。‥‥‥なのだけれど。


『やたら、広く書かれている気がするし‥‥‥‥書き手のミスにしては内容が緻密すぎる。‥‥‥まるでその異形課を隠そうとしているみたいだ。』


一人ブツブツと呟きながらも歩き始めて数分。

なんとか異形課と書かれた部屋へと到達する。


『‥‥‥‥‥ここか。』


はぁ、とため息をついて、部屋のドアをノックする。瞬間。


「だーーーーーーーーーーーーー!!!!!お前ら仕事しろ!!」


という男の罵声が聞こえてきた。


『うるさっ‥‥‥‥‥なんなんだ、ここ。』


そう呟きつつ、静かに部屋のドアを開ける。

そこには、真っ青な髪の男が立って女性一人、男性一人に説教をしている真っ最中だった。

女性の机の上にはネイルと思しきグッズが散乱。もう一人の男の机の方にはゲーム機が並べられていた。


(‥‥‥‥‥‥‥‥ここ警察署だよな。)


そう思いながら立って怒鳴っている男の方を見ると、書類の山が積み上げられた机。それと、その隣には、椅子に上着がかけられただけの簡素な机があった。


「全くお前たちは‥‥‥‥‥‥、ん?客人か?どうし‥‥‥‥‥いや、客人ではないのか。」


俺の腕に持った荷物を見て、怒鳴るのを止める青髪の男。


『ちはー。今日からここに配属になったものなんですけど~‥‥‥‥』


そう言って部屋に入ると、三人の視線が一気に俺一人に集まる。‥‥‥‥あまり注目を集めるのは得意ではないのだが。


「お前が葵の言っていた新人か。歓迎する。椅子は‥‥‥‥好きなとこを使うと良い。そこの警官なのに堂々と副業をしているのが羽鳥 黒依。ゲームに塗れた俗物が、公月 白葉。二人とも仕事をするときだけはまともだが普段は相手にするな。毒だ毒。」


『‥‥‥‥‥ういっす。』


さて、自己紹介は得意ではないのだが‥‥‥‥まぁ、このメンバーの中でなら浮くことは無いだろう。





次話は緋炎さん視点になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ