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[二部九章]お願い。

前話の続きですー


「それ、どうしてもやらないといけないんですか。」


静かな声。けれど、葵ちゃんの事を今誰よりも心配してて、目の前で起きたことに反応できなくって悔しい想いをしているのは彼だ。

だから、私は彼の言葉を尊重したいと思う。


『どうしてもだね。』


「魔術とかで、外から軽く抜けたりとかは‥‥‥‥」


「無理。傷口の奥深くにある違和感、それが多分痕跡、で合ってるよね?未希。」


そう言ってこちらを見るのは内亜くん。

彼の言葉は一件非情にも思えるけれど、決して葵ちゃんの事を軽んじ言っているわけじゃないことは分かってる。


『内亜くんの言う通り。場所が浅ければ。あるいは、もっと軽い痕跡なら上書きするなりなんなりとやれることはあったんだけど、向こうも上手だねぇ‥‥‥‥刺客を制御できていないのは葵ちゃんの傷の具合から分かってはいたけれど、それを加味した上で二重の手を打ってきた。で、それを取り出すのは早ければ早い方がいい。‥‥‥‥‥文人君。』


「‥‥‥‥‥‥‥‥っ、」


心底悔しそうに唇を噛みしめる文人君。

ふと彼のその姿を見て、葵ちゃんは幸せ者だなぁ、って思った。

だって、それだけ彼から、それに、こんなにたくさんの人から想われている。慕われている。

うん。葵ちゃんは幸せになるべきだ。だからこそ、やっぱりやらないといけない。


「ほかに方法があるとすれば、葵自身が自力で取り出すことだけど。怪我の痛みできっと集中できないだろうし、麻酔打って普通に除去してもらった方が苦しまないで済む。‥‥‥‥傷は、増えるけど、消えるからね。葵の身体はそういう存在も組み込まれている。」


「どっちにしろ、葵がこれ以上苦しまないといけないんじゃないか!

なんで、なんでそんな事‥‥‥‥僕が嫌だって言ったら、どうするつもりなんですか。」


「言わないよ。文人なら。」


咄嗟に、その場にいた全員が声のした方を見る。

軽装で、けれど壁によりかかった状態の葵ちゃんが、そこに立っていた。


「葵!何で起きて来ちゃったの!?安静にって手紙で、」


「うん、でも、文人が心配で来ちゃった‥‥‥えへへ‥‥‥」


すごく、苦しいだろう。

アザトースの義足。その術式自体は簡単なものだ。魔王アザトースの触手の一本を召喚するだけなんだから。

でも。でも、魔王アザトースは、燃える存在としても認識されている部分がある。

常に高熱で、表面は泡立ち、常に姿を変えながら眠る魔王。

そんな存在として認識されている術式をもろに食らったんだ。

‥‥‥‥‥傷口をどれだけ綺麗にしても、その痛みはじわじわと葵ちゃんの体力を削ることだろう。

なのに、彼女はここまで一人で歩いてきた。

どうしてって、簡単じゃないけど、単純な話。


“文人君が、心配だったから”。


葵ちゃんの表情を見ればわかる。

ティナちゃんに感情を、記憶をたくさん譲渡してしまったっていうのに、あんな、無理をしてでも笑顔を浮かべようとする葵ちゃん。

‥‥‥‥‥全く、成長したことが嬉しいやら、ちょっと悲しいやら。


『葵ちゃん。まずは席に座ろう。苦しいでしょ。要君、お水もってきて。』


そう言うと、即座に動いてくれる要君。

葵ちゃんは私が支えると、ふらふらとした足取りで文人君の隣に座った。


「葵‥‥‥‥‥っ、ごめん、僕‥‥‥」


悔しそうに、今にも泣き出しそうな顔をする文人君を撫でる葵ちゃん。


「大丈夫。大丈夫だよ。ごめんね、心配かけさせて。‥‥‥‥‥未希姉、私も、会議参加、いいよね?当事者だもん。」


『‥‥‥‥‥ダメって言って聞くと思う?ねぇ、内亜くん。』


「無理無理。聞くんなら初めから俺が止めてる。な?ノワール。」


「はいはい。私だって分かっておりますよ。」


従者の二人は本当にたくましい。というか、信用されているんだね、葵ちゃんは。

ほんとに、良い人たち‥‥‥‥‥人間じゃないことはもうこの際置いといて。良い人たちに、いい仲間に恵まれたね。


『さーてと。じゃ、会議どっから聞いてた?って聞きたいけどその表情。多分はじめっから聞いてたでしょ、もう。』


「あはは、バレた‥‥‥‥?」


苦笑する葵ちゃんにため息をつく。

逆にバレないと思っていたのだろうか。彼女は。


『で、どうしたい?一番は葵ちゃん自身の意見が優先されるんだけど。』


「‥‥‥‥‥‥‥あはは。‥‥‥‥‥マーキング、この辺にあるのは分かってる。気持ち悪いからね。‥‥‥‥‥自分でやるよ。これ以上未希姉の手を煩わせたくない。」


「葵と言ったか。‥‥‥‥‥医者だぞ。未希は。煩わせるとかそういう問題じゃない。患者がいるならできる手を尽くすのが俺たち医者だ。」


要君に言いたい事言われちゃったんですけど‥‥‥‥‥

まぁ、いいか。うん。

で、どうする?という視線を向けると、葵ちゃんは文人君の手をぎゅっと握って言った。


「だいじょうぶ。‥‥‥‥‥‥痛くても、苦しくても、まだまだ文人から教えてもらってないことはたくさんあるもんね。だから、平気。私自身の事は、私がやるよ。‥‥‥‥‥‥でもちょっと細部が分からないから、内亜手伝って?」


「あいあいさー、ってかそろそろ影戻るよ。これがほんとの痛み分けってね」


そう言って内亜くんはするりと葵ちゃんの影に潜って、一瞬で顔を出した。


「いっっっっった!!!!!!!!!!!はぁ!?葵正気か!?」


「正気。‥‥‥‥できるよね、内亜。」


「あー‥‥‥‥‥‥全く、分かったよ。」


「文人も、ごめんね。我儘言って。」


「‥‥‥‥‥ううん。平気、とは言えないけど。僕にも何か手伝わせてほしい。」


「じゃ、やる時は手握っててほしいなぁ。文人の手、結構暖かくって好きなんだよね。」


おぉ?ちょっといい雰囲気。

なんていうのはさすがに口に出さず、要君と一緒に処置の準備をする。

さてと‥‥‥‥‥できる事なら私も力になりたかったけど。この様子じゃ、いてくれるだけで十分、なんて言われちゃいそうだ。





割と動かすキャラが多い回はごちゃりそうで大変です。が、そんな泣き言も言ってられないので今日も頑張りました。

ではではまた明日~

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