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25.俺たちの仕事はここからだよ

※前回の続きです



「まぁ、説教はこのぐらいにして、これからの事でも決めようか」


 紅茶のカップを置いたアベルは視線を周囲に向け、説教組を見守っていた一同にも参加を促した。


「ヴァイオレットはクリフトフと婚約破棄になった。これで妹の名は傷付いたのと同じだね」

「幸いだったのは、シリル様が懸念していた、パーティーでの婚約破棄宣言が回避出来た事でしょうか……」

「どうしても破棄じゃないと駄目だったのかい?」

「ジェラルドが決めたからね。伴侶にするのに生易しくは出来なかったんでしょ」

「相変わらずジェラルド兄上は固いな」

「昼間はすっ飛んで来たくせに……緩いのか固いのかわからないわ」


 好き勝手言い始めた周囲に、マティアスが「話はそこじゃないでしょう」と話を戻した。


「周囲の視線が変わるヴァイオレット嬢のサポートと、もだもだしているジェラルドに発破をかける事……ですよね?」


 叱られて落ち込んでいたユリシーズが、気を持ち直してそう切り出すと、アベルは一つ、頷いた。


「あくまで、俺らは二人のサポート役。過度の干渉は不要だよ……いらない」

「まぁ、そこまで手を出さないと一緒になれないのであれば、いずれ駄目になっているしね」


 既婚者二人の話を、弟妹たちは黙って聞いていた。

 アベルとマティアスの言った通り、過度の干渉は何の救いにもならないのは、自分たちが相手と関係を育む中で感じた事でもあった。

 ヴァイオレットが間に入って関係を築く手伝いをしていたものの、思い返せば、ヴァイオレットも積極的に手伝っていた訳ではなかった。


「勘違いしていると困るから言うけど、今回の君たちはただ騒いでただけだからね。功労賞はシリルとマティアスだよ」


 指摘された説教組は再び項垂れた。ヴァイオレット流血事件は本人たちが自覚する程失態だった。

 またしてもお通夜状態になった説教組に苦笑しながら、マティアスは彼らにフォローを出した。


「今回の事で皆学んだんだから、それを活かせば良いんだよ」

「立太子まで別棟にて軟禁されるボンネット嬢の暴走の早期対処とかね」


 アベルが説明した例に、皆「成る程」と納得した……が、それでは今回と同じなのでは? という考えも同時に浮上した。


「それって今回と変わりないですわ?」


 口に出す勇気はシンシアにしかない。

 小首を傾げて疑問をぶつけるシンシアに、アベルはにっこりと微笑んで答えた。


「シリルが他者の目撃を回避したのと、他は暴行を直接止めたけど騒ぎにした……ヴァイオレットのためにはどちらが良いか、明白でしょ?」

「俺を比較対照にするの止めてくれない?」

「つまり、ヴァイオレット嬢の見える範囲で手は出さず、見えないところでサポートすれば良いんだよ」

「シリルみたいにね」

「人の話し聞いてる?」

「辛そうな時にお茶に誘ったりするのは駄目ですの?」

「本人が良ければ良いんじゃない?」


 パンパンッ! と、アベルの手を叩いた音に皆喋るのを止め、音の発生源である彼に視線を向けた。


「まぁ、そういう感じで今後は取り組もう。二人に対して過度の干渉は厳禁。あくまでサポートだよ」


 年長者のまとめに、皆しっかりと頷き、各々の今後の動きを決めていった。


 しかし、上手く行くとばかり思っている彼らはまだ知らない。


 別棟の最上階にて、怒りに身を震わせている令嬢の決意など、仲間たちは知る由もなかった。



読んで下さりありがとうございます。

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