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1-4 上手くいった後は大体油断する

「失礼するわ」


 ノックの後に返事を待たずに入ってきたのは、ローゼリア様その人だった。月光のような銀髪に、ルビー色の瞳。続いて入ってきたアーサー王太子殿下とお似合いの、目が覚めるような美女だ。


 これは意外と嬉しい。ノベライズもコミカライズもしなさそうだったのでどんな容姿か想像しながら楽しんでいたが、想像以上の麗しさに思った以上に舞い上がってしまった。恐るべし悪役令嬢。


 上級生二人の訪問に慌ててベッドから降りようとすると、ローゼリア様が駆け寄ってきて私の手を握る。


「そのままで。まだ痛むでしょう。目が覚めて良かったわ」


 安堵したように優しく微笑まれた。まるで聖母のようで思わず息をのむ。


「助けられなくてごめんなさい。怒ってくれていいのよ」


 憂いを帯びた目を伏せて、銀色の長い睫毛に縁取られた瞳が揺れる。


 イベントが、始まってしまった!


「とんでもございません。ローゼリア様。このような形でのご挨拶をお許し下さい」


 イベント通りだと目眩がしながらもこれ以外言葉の選びようが無い。


「ごめんなさい。私ったら自己紹介もせずに。ローゼリアよ。仲の良い友人はローズと呼ぶわ。貴方もぜひローズと呼んで」


「そんな、恐れ多い。私は、リーチェと申します。階段から落ちたのは私の自業自得ですもの。ローゼリア様のお手を煩わせて恐縮です」


 やっと自分の言葉で伝えられた。私ドジだから、なんてとても言えない。私は天真爛漫天然リーチェではないのだ。


「そう、だけど。怖かったでしょう。痛かっただろうし。まだ入学間もない貴方にそんな思いをさせてしまったことが申し訳ないの。私にお詫びできないかしら」


「ローズ、君がお詫びしなければならないなら、生徒会長たる僕こそが彼女にお詫びするべきではないか」


 王太子アーサー殿下は、眉間に皺を寄せて心配そうにローゼリア様を見つめていらっしゃる。

 やっぱり現時点で既にローゼリア様に攻略されているようだ。二人でさっさと幸せになってほしい。端的に言えばどうか私を巻き込まないでほしい。


「いいえ、殿下。女性同士の話に口を挟むものではないわ」


 口元に人差し指をあてて殿下を黙らせてから、もう一度私の手を握る。


「リーチェ、これから生徒会として一緒に働く仲間として何かできることはないかしら」


 うっ。


 ルビー色のアーモンドアイが瞳を潤ませながら上目遣いでこちらを見ている。わかってる。ローズお姉様の下りをすれば円満に仲良くなれることは。


 でも!やっぱり無理!ローズお姉様は無理!口からスムーズに出る気がしなくて、怪しまれる可能性が非常に高い。


「何でも、よろしいのでしょうか」


「ええ、私にできることなら」


「あの、無理にとは言わないのですが」


「なぁに。何でも言って頂戴」


「明日のランチをご一緒したいです」


 要するに、貴方と仲良くしたいです!が伝わればいいのだ。前世大学生の私が、「飲みに行きましょう!」や「じゃあ奢ってください」ではなくランチというチョイスが咄嗟にできただけで個人的には100点満点だ。


 キョトンと目を丸くしているローゼリア様に、慌てて続ける。


「下級生がお誘いするなんて、図々しかったでしょうか。憧れのローゼリア様とご一緒できたらと、思わず口をついて出てしまいました」


 こちらの常識にはまだ不安が残る。前世の記憶と今世の記憶が未だ混乱しているのだ。

不安になってチラ、とローゼリア様を見つめると神妙な顔で考え込んでいる。


「あの、やっぱり」


気にしないで下さい。

と私が告げるのと、


「もちろんよ!嬉しいわ!」


 とローゼリア様が手を叩くのは一緒だった。


「兄と弟もご一緒して良いかしら。いつも一緒に食べているの」


「ご兄弟水入らずにご迷惑で無ければ」


 不敬ではなかったと安堵に微笑めば、


「それと、ローゼリアではなくローズと呼んで頂戴。リーチェは私の可愛い後輩なのですから」


私の唇に人差し指を当てて悪戯っぽく微笑んだ。


「ええ、ローズ様。ありがとうございます」


お姉様イベントの回避に心の中で万歳三唱を唱える。

仲良くなりつつも今後のローズ様呼びが固定できた。

ミッションクリアだ。


「それでは今日はもう寮に帰ってゆっくりお休みなさい。明日教室まで迎えに行くわね」


はい!と満面の笑みで答えてお二人を見送った。


あーよかったよかった。

ベッドに後ろから倒れ込む。

......何かを忘れている気がする。


「ローズ様の兄って......」


 本来の乙女ゲームにおける、私の攻略対象だ!

 つまり、あのローズ様の難しい顔は私が兄弟を攻略しようとしている、もしくは出会いイベントに繋がることを危惧していた表情だったということ?


 難しい。難しすぎる。


 もしかして、イベント回避すると不穏な方に進んでしまう?


「いえ、まだわからないわ。明日、明日頑張りましょう。」


 とりあえず寮に帰って2人について思い出し書き留めることにしよう。ローズ様との関係は一旦保留で。




ーーー私は後に、前世の有名な名言「明日やろうは馬鹿野郎」を思い出すことになる。


読んで頂きありがとうございました!

来週も大体日曜日の夜ぐらいに更新致します。

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