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1-18 悪夢の続きは大体悪夢

破滅回避ルート次で終わりです。

現実に戻ってきます。

「これは、どういうことかな?」


 手紙の内容をアレクにも見せる。


「......!?これは......。」


 アレクが手紙の内容を知らなかったというのは本当のようだ。知っていたらそもそも渡すことを躊躇っていただろう。


「『光の魔術師は偽物です。これから起こる全ての予言が人為的なものですので、よく監視して下さい。黒幕は貴方の近くに。』」


「これは誰から預かったの?」

「......言えません。」


「この国では光の魔術師は王家にも並ぶ権威を持つ。まだ公認では無いとはいえ、もしあの光の魔術師が本物であれば、外交問題になるよ。」


「わかっていて、それでも手紙にされたのだと思います。」


 それがアレクの価値を下げることだとしても、か?


「......アレクの信頼はよくわかったけど、僕からしたら正体不明の怪しい手紙だ。わかるね?」


「......ええ。」


「じゃあ、」

「できません!いくら王子の頼みであっても、裏切ることはできません。」


「どんな手を使っても聞き出す、と言っても?」


「......自分よりも大切な人なんです。」


 アレクが真っ直ぐ目を逸らさないのを見て、手を振った。頭が冷えれば考えを改めることもあるだろう。


「君の頭が冷えることを期待しておくよ。次に城に来た時はどんな手を使っても聞き出す。」


「......失礼致します。」


 アレクが出て行ったことを確認してため息をつく。

 気味の悪い手紙ではあるが、あの光の魔術師に魔術適性が無いことも事実だ。

 これは一部の重臣にしか漏れていないこと。怪しまれる要素はまだ無い。


 黒幕は近くに、と言う言葉も気にかかる。兄上たちでは無く僕にこの手紙が届いた、ということに意味があるのなら、母上か?......流石にそれは無いと信じたいが。無いとは言い切れないことも確かだ。功名心が強い母上がこれまで側妃で甘んじていることが不思議なぐらいだった。この時を待っていたのだとしたら。


「兄上に相談してみるか。」


 こういったことは3番目の兄が一番頼りになる。


「兄上、今いいかな?」


「ああ、どうした?」


 手紙、のことは言わない方がいいだろう。怪しすぎるし、アレクが今すぐ処分をされかねない。


「光の魔術師のことなんだけど。少し怪しいと思っているんだ。」


「......お前もそう思うか。」


 声を潜めて言えば、兄も周囲の気配を確認した後頷いた。


「証拠も、確信も無いんだけど、兄上の諜報員を母上につけてもらえないかな。」


「エルイン妃にか?......そうか、内部に協力者がいれば色々と融通が利きやすい、か。」


 わかった、と頷いて兄上が僕の頭を撫でる。


「母上のこと、言いにくかっただろうが、伝えてくれたこと感謝する。」



 その後、諜報員から母上が、光の魔術師との密会を重ね、僕を王位につけるために暗躍していたと聞いた。


 父上も交えて兄上達と相談したが、光の魔術師と側妃を、諜報員の情報だけで裁くことは出来ないし、巧妙に証拠も隠されていた。


「彼女らの作戦においては、光の魔術師がそう認められることが不可欠だ。国として認めなければ良いのではないか。」


 正義感の強い2番目の兄が、単純なことだろう、と首を捻った。


「光の魔術師は民衆人気が高い。本物なのに、王家に認めてもらえない、と捉えられてしまえば人心が離れていくだろう。」


 1番目の兄が、2番目の兄をたしなめる。


「魔術師適性が無かった、という事実を広めることは意味が無いのですか?」


「光の魔術はわかっていないことが多い。それを理由に、光の魔術師では無い、と結論づけることはできない。」


 僕の質問に3番目の兄が眉間に皺を寄せた。


「先に、エルインを生家に帰そう。このまま王宮にいてはいらぬ火種が残るばかり。内部に協力者がいなければ、今後予言が当たることは無い。そうして徐々に力を削いでいくしかあるまいな。」


 王がふぅ、と息をついて僕の頭を撫でた。


「エドワードには実の母と別れるのは辛いかもしれないが。」


「いえ、寛大なご処置に感謝致します。兄上が正式に即位され、僕が臣下に降りましたら母上に会えます。僕のことはお気になさらないでください。」


 それからはあっという間だった。父と母の間でどのような話がされたかわからないが、母は思ったよりも大人しく生家へと帰り、光の魔術師も、全く予言を行わなくなったこと、全ての光の魔術師が持つという回復魔術を使えなかった点から、徐々に人々の記憶から薄れ、隣国で魔術適性のある光の魔術師が新たに誕生したことで、偽物であることが確定した。


 偽の光の魔術師は、身分を偽り人々を騙した罪で、投獄された。


 あの手紙は、結局誰だったのか。どうして、偽物とわかったのか。

 あのまま進んでいた未来について考える。彼らの作戦通り、僕が王太子になった世界。そして光の魔術師が嘘だとわかる。


 母も僕も、どうなっていたかわからない。

 背筋に怖気が走る。


 手紙の主にお礼をしたいが、あれから姿を現さないアレクを見るに、今後も正体を明かす気は無いのだろう。

 何故怪しいと思ったかだけでも聞けたらと思ったが。


 ふと、閃く。


 隣国の光の魔術師による予言だったのではないか。


 そう考えると辻褄が合う。まだ魔術適性を行っていなかったから、光の魔術師は名乗れないが予知をしてしまったのではないか。それで素性を隠してアレクに託したのだろう。そう考えれば全ての辻褄があう。


 会ってみたい。


 年は同じだと聞いた。来年学園に入学するのだろう。


「父上にお願いしてみよう。」


 第四王子が隣国に留学することに、反対されることは無いだろう。

 恩人であれば良いし、そうでなくても連れ帰ることができれば兄の治世の大きな助けになるだろう。


 来年の入学に思いを馳せて、早くも胸が高鳴った。

 

 

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